「ジョンズ・ホプキンスの研究:

 抗寄生虫薬がマウスの膵臓がんの進行を遅らせる

 2021/08/03

 

 

右は、マウスのエサにメベンダゾールを加えた場合

 

 

米国で3番目に致死率の高い癌である 膵臓癌 は、

その最も侵攻性の高い病型では

5年生存率が わずか1%であるため、

その増殖と転移を遅らせたり止めたりする方法を探す研究者の

長いターゲットであった。

 

 

 

今回、ジョンズ・ホプキンス医学の研究チームは、

遺伝子操作したマウスにおいて、

抗寄生虫薬が、膵臓癌の発生、進行、転移を阻止することを発見した。

 

 

 

ジョンズ・ホプキンス大学医学部脳神経外科

および腫瘍学教授のグレゴリー・リギンズ医学博士と その研究チームは、

7月6日付けのOncotarget誌に発表した研究で、

2つの異なるマウスモデルを用いて、

抗寄生虫薬メベンダゾールが、

初期および末期の膵臓癌の増殖と転移を

遅らせたり止めたりできる ことを明らかにした。

 

 

 

「我々は、メベンダゾールが、

 全てのステージで役割を果たす可能性があると考えています」

とリギンズは言う。

 

 

 

 

 

「メベンダゾールは膵臓癌の 2 つのモデルにおける

 間質の線維形成と腫瘍形成を破壊する」(2021)

 

 

メベンダゾールは、

FDAが承認した駆虫薬である

ベンズイミダゾール系 抗がん剤であり、

前臨床試験で、抗がん機序と活性が証明され、

初期段階の臨床試験に進んでいる。

メラノーマ、肺、大腸、脳、髄膜腫、乳癌、甲状腺癌など、

様々な悪性腫瘍動物モデルにおいて生存利益が観察されている。

 

 

 

ベンダゾールが、

チューブリン阻害とキナーゼ阻害の組み合わせによって、

抗がん作用を発揮することを示唆する証拠がある。

 

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現在、膵癌は米国における癌死亡原因の第3位であるが、

2030年には第2位になる可能性がある。

米国では、今後10年以内に、

膵管腺癌症例数が2倍以上に増加すると予測されている。

現在、膵管腺癌患者の10〜20%しか早期診断されておらず、

治癒の可能性のある外科的切除を受けることができない。

しかし、根治的手術によって、

5年生存率が20-25%にしか改善しないことが示されているように、

再発率は高い

 

 

 

現在の従来の細胞毒性療法、多剤併用療法、および標的療法は、

患者の長期生存率の改善には ほとんど成功しておらず、

治療に関連する毒性は大きいものの、わずかな利益しか得られていない。

 

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メベンダゾールは、広く使用されている抗がん剤パクリタキセルや

ビンクリスチンの分子標的であるチューブリンの重合を阻害し、

重篤な副作用を伴わずに

腫瘍細胞に選択的に分裂停止を誘導することが知られている。

 

 

 

メベンダゾールの低毒性プロファイルは、

この試験で使用された用量よりも高用量で長期間の投与であっても、

化学予防や補助療法に長期使用する候補となる。

この場合、考えられる主な副作用である

貧血や肝酵素の上昇をスクリーニングするために、

定期的な血球計算と血清化学検査を行うべきである

メベンダゾールの毒性が低いことは、

メベンダゾールを他の抗癌剤と安全に併用する上で、

さらに有利であり、

場合によっては放射線療法との併用も可能である。

※個人的には、抗がん剤や放射線療法を良しと思っていません。

 

 

 

メベンダゾールは、

手術を受けた15-20%のPDAC患者における

腫瘍の再発を予防するための、

および/または進行した病変を有する

残りの80-85%の患者における標準化学療法に対する

反応の持続性を高めるための補助療法として有用であろう。

 

 

 

さらに、もしメベンダゾール単独または併用が

進行膵管腺癌に対して治療的に有望であれば、

高リスク患者および/または膵頭十二指腸切除術のような、

より複雑な手術に対する手術を省略することによって、

罹患率および死亡率を減少させることができるかどうかを

検討することは有用であろう。