今回は宇宙創成に対して、私の物理的空想を展開しよう。

まずビレンケンの宇宙創成モデルの概要から始める。時空も物質も存在しない無の領域から量子力学的なトンネル効果により微小な4次元時空が誕生してすぐインフレーションに移行し、インフレーション終了時にビッグバンが起こるとされる。

無の領域には時空や物質は存在しないがある種のエネルギーは存在し、量子ゆらぎ等の量子力学的な現象も発生する。

インフレーションとは4次元時空の真空のエネルギーがある有限の値に達していると宇宙項がある場合のド・ジッター計量となり、4次元時空自体が急激な指数関数的な膨張を引き起こすとされている理論で、自発的対称性の破れにより真空のエネルギーがゼロになるまで急激な膨張が続く。真空のエネルギーの自発的対称性の破れは真空の相転移とも表現される。

インフレーション理論はビッグバン直後の宇宙がわずかな量子ゆらぎを除いて非常に平坦で一様な状態になった理由とされている。ビッグバンだけでは平坦で一様な宇宙を作成することは困難で、それは地平線問題とか平坦性問題と呼ばれており、インフレーションがそれらの問題を解決したというのが定説。

上記の説明で明らかなようにインフレーション理論は一般相対性理論の応用であり、4次元時空とある程度大きな真空のエネルギーが存在しないと発生しない。

ただその真空のエネルギーの変化の様子つまり最終的にはゼロになるポテンシャルエネルギーの形にはかなりの制限がつくようで、さらにインフレーションを起こした真空のエネルギーが何なのかは今でも不明。

さてここから、私の物理的空想を始めよう。

勿論、これ以後も必要に応じて様々な予備知識を追加する。これらの予備知識には多くの本や論文を参照する必要があるが、多すぎてとても列挙できない。なお前回のように私の記憶違いもあるかも、元々記憶力が劣る上にもう64歳に近いから。

まず無の領域についてだが、自然数、整数、有理数、無理数、実数、複素数、グラスマン数等の様々な代数が存在可能であり、様々な次元と様々な空間も存在可能だが、特に決まった数学的構造はないとする。構造がないという意味は距離や計量や対称性が定義されていないことを指す。またエネルギーは存在可能だが十分に広い無の領域を考えると全体のエネルギーはゼロであると想定する。

距離が決まっていない状態で、"十分に広い"を定義することは難しいが、ある領域を想定して、その領域内のエネルギーの総和がゼロなら十分に広い、とする論法でいいのかもしれない。絶対値の和をδで抑えて和をとる回数をεで制御するとか。

さらに無の領ではある確率でゆらぎが発生すると仮定する。このゆらぎは量子力学で記述される量子ゆらぎとは異なる可能性が高い。なぜなら無の領域ではディラック定数h~(h~=h/2π、h:プランク定数)を始めとする物理定数がまだ決まっていないから。

このゆらぎによってエネルギーの高い部分と低い部分が発生して、エネルギーの高い部分から低い部分に向けてエネルギーの流れが生じる。距離や計量が定義されていないので、エネルギーの流れに対して速度や時間は定義出来ないが、エネルギーの流れに伴う疑似的な(pseudo)時間は定義可能だと想定し、これを疑時間ベクトル(pseudo time vector)と名付けよう。

無の領域では多数のエネルギー密度の高低と多数の疑時間ベクトルが発生するだろう。そして一部では複数の疑時間ベクトルが組み合わさって、鳴門の渦潮のような渦流が生じるはず。

鳴門の渦潮は海水面だけを眺めることが多いが内部にも渦がある。同様に無の領域の渦流も多次元の空間まで及ぶ複雑な流れ。そして定常状態に達するものも現れる。その内部では回転する定点や穴を含む複雑な構造が現れるだろう。数学的センスのない私には想像することも難しいが、複数の定点間を結ぶ線が交叉する線上の穴の数の比等のトポロジー的な要因が、様々な物理定数、光速c、ディラック定数h~、ニュートンの万有引力定数G(長いので重力定数と表記)等を決める、と仮定しよう。

さらに渦流の内部では、波動関数を表現する複素数空間やフェルミオンを表現するグラスマン数空間、スピンを表現する空間、電磁力や弱い相互作用や強い相互作用の対称性を表現するU(1)、SU(2)、SU(3)等の内部対称性空間も発生すると想定。

この渦流が前回の記事で取り上げた宇宙でただ一つの余剰次元空間に該当する。

つまり無の領域から宇宙の物理定数と物理法則を決める唯一の空間が発生。

この空間を渦流次元空間(vortex dimensions space)、略してVDS、と名付けよう。

次の段階として宇宙そのものに該当する4次元時空を誕生させる必要があるが、現在、4次元時空を生む理論として様々なものがある。前回取り上げた超弦理論は弦とブレーンの組み合わせで4次元時空を構成できるし、ループ量子重力理論ではスピンネットワークで4次元時空を表現する、また前々回に取り上げた因果力学的単体分割(CDT)では時空三角形で4次元時空を直接構築する。なお超弦理論には様々なモデルがあり、その4次元時空や余剰次元に関する表現もモデルにより異なる。

ただ一つ一貫しているのは、これらの理論が数学的に非常に高度でかつ難解な概念構造をもっており、私のような凡人にはその上っ面しか理解できないこと。本当に優秀な理論、例えばアインシュタインの相対論は、数式は複雑でも文章で表現すると比較的単純な概念で説明可能だ。

だいぶ前の記事で超弦理論とループ量子重力理論とCDTを組み合わせたような0ブレーンと1ブレーンで構成される三角形で空間を造る空想を書いたし、今回その空間に時間を加えることによって時空三角形を構成する方式に改良してみたが、やはり複雑すぎる。

その反省の意味も込めシンプル・イズ・ベストの発想でもっと単純な方法を考えた。

我々の宇宙である4次元時空には距離と時間の最小単位があるらしい。

プランク距離とプランク時間がそれで、光速c、ディラック定数h~、重力定数Gの3つの定数で決まる。

プランク距離lp = (h~G/c^3)^1/2 = √(h~G/c^3) = 1.616x10^-33 cm
プランク時間tp = (h~G/c^5)^1/2 = √(h~G/c^5) = 5.391x10^-44 sec

当然ながら速度x時間=距離なので、光速cxプランク時間tp=プランク距離lp

これより短い距離や時間は定義できないとされ、それ以下は非連続で、一般相対性理論で表現すると時空が泡立った状態だとか。

最小の時間軸1つと最小の空間軸3つで構成される4次元最小領域を考えて、光円錐図のように時間軸に光速cをかけると、結局、4つの次元それぞれにプランク距離の広がりをった4次元最小時空領域が想定できる。

この最小時空領域を、4次元の時空素(space-time element)と呼ぼう。

話を戻して渦流次元空間(VDS)の内部では、光速c、ディラック定数h~、重力定数Gの3つの定数が決まったことによって4次元時空素が生成可能となり、複数の時空素を組み合わせた4次元時空では距離や計量が定義可能、つまり4次元時空が生成可能なところまで来た。

VDSの内部では、渦流が集めたエネルギーを利用して、時空素が数多く生成されただろう。そしてその時空素はVDSの外部へとしみ出すに違いない。外部へとしみ出した時空素は疑時間ベクトルを持っている。磁気モーメントを揃えて結晶化した物質が磁性体であるように、疑時間ベクトルが揃った時空素が結晶化し連続した微小な4次元時空が生まれる。

2つの時空素を結合させる方法は、何かの力つまり相互作用ではなく、その表面の凹凸や泡型フックやフラクタル等の表面構造を利用してくっつく機械的な手法で、だから疑時間ベクトルが比較的揃った時空素の集合が結晶にまで成長する。

そして誕生した微小な4次元時空がインフレーションを起こす。

インフレーションを引き起こすエネルギーはVDS内部のエネルギーであり、その内部エネルギーは時空素として外部に放出されることにより滑らかにゼロに近づく。そしてインフレーションの終了後にはビッグバンが発生。

時空素が結晶化して微小な4次元時空が発生した時点でその時空は既に一様で等方になっていると予想される。勿論すぐインフレーション可能だろうが、VDS内部のエネルギーがどの程度残っているかとか、内部エネルギーがゼロになるまでの時間とか様々な要因があり未知の部分が多い。極端な場合はインフレーションが発生しないとか緩やかなインフレーションが長く続くとかもあり得る。またタイミングの問題もあり、多くの時空素の結晶が生まれても宇宙にまで成長するのはごく少数だろう。

勿論VDS内部のエネルギーは最終的にゼロに近い値になると思われ、天文学的観測から導かれた宇宙項つまりダークエネルギーの値にほぼ近くなるはず。そうでなければインフレーションが終了しないから必要条件ともいえる。

VDSに外部の無の領域から再びエネルギーが流入する場合も考えられるが、新たな時空素の生成放出によりすぐ消える。従って遠未来のビッグリップの可能性は低い。

VDSには後に素粒子を創り出す鋳型として使用される複素数やグラスマン数、内部対称性を実現する各ユニタリ群等の構造物が残されている。時空素が少し残るだろうが、希薄で疑時間ベクトルもランダムな為に、連続した微小の時空に結晶化することはない。

結局、VDSの内部には、素粒子用の構造物はあるが時空は存在しない。

超弦理論のコンパクト化した余剰次元空間は弦が運動する時空の4次元以上の空間部分を小さく丸めたものだが、VDSは時空が生まれる前に誕生した空間であり4次元時空を生む根源であって、内部には素粒子用の構造物は存在しても時空は存在しない。つまりコンパクト化する必要がなく、その形や大きさや次元数等は不明だが、各次元の広がりはプランク距離より数桁大きい程度だろう。

VDS内部からしみ出した時空素が結晶化しインフレーションをへて4次元時空に成長した後は、VDSと4次元時空の関係は何もないように思えるが、VDS内部の物理定数や物理法則が時空素に直結されている為、AdS/CFT対応のRT量子情報理論と類似した形で、次元の境界を挟んでVDSと4次元時空には量子情報の相関が成り立つだろう。そしてその量子情報の相関が、VDS内部の構造体を素粒子の鋳型として使える機能と、4次元時空の各点にVDSが直結したように見える機能つまり忍者の分身の術を、実現する基礎となるのだ。

VDSの素粒子の鋳型が使用される場合、4次元時空からVDSの鋳型内に直接そのエネルギーが注入される訳ではなく、鋳型の情報が参照されるだけだ。ただ量子テレポーテーションで素粒子が転送される場合には、そのエネルギーもコード化して伝送されるのかもしれないが、その詳細はわからない。

前回の記事でも触れたように、素粒子はVDSとは別の次元に励起したエネルギー体なので、VDSへは時空のエネルギーが流れない。

すべての物理定数と物理法則がVDSの中に定義されているので当然だが、量子情報の瞬時の転送は素粒子のタイ焼き仮説だけでなく、量子もつれや量子力学の非局所性の実現の為にも必要となる。

結局、宇宙を形成する主体は量子情報なのだ。

VDSの内部では、時空素の残りの影響もあって、量子論が成り立つと考えている。

VDSは量子情報の根源で、その内部のエネルギー値は量子情報として4次元時空に伝わり、真空のエネルギーとして処理される。

VDSには、ある意味ではツイスター理論と類似点があるかもしれない。そうなると無の領域のゆらぎにより発生する渦流がツイスターの原形というか生成レシピかも? いやいや違う。ツイスター理論は数学的に厳密な理論モデルだが、こっちはただの物理的空想だから。

4次元時空素の他にも3次元や5次元の時空素さらに高い次元の時空素等も発生する可能性はあるが、それらがVDSの外部に出て結晶化し、混合物を含めて様々な微小な時空を形成したとしても、不安定で大きな時空つまり宇宙には成長しない。

だからVDSから発生する宇宙はそう多くなく、せいぜい数個にとどまるだろう。

VDS内部のエネルギーがゼロになると、すべてのインフレーションが終了するので、永久インフレーションは発生しない。

その後の宇宙の進化を考えると、ビッグバン後に誕生した巨大ブラックホールの内部では、強力な重力とエネルギーにより一般相対性理論の重力場方程式が特異点を生み出すはずだが、特異点に到達する前に4次元時空が時空素に分解されるのではないか、と私は思う。

つまりこの時空素仮説では、重力子や量子重力理論自体が不要になる。

ここで一般相対性理論で記述される重力について考察してみよう。

一般相対性理論はある程度以上の大きさを持つ連続した時空つまり計量が正しく定義された時空上でのみ存在する理論。

超弦理論では重力子に該当する閉じた弦の伝搬や分裂合体を表現する世界面が重力の作用を意味するとされ、その世界面を表現するラグランジアンが一般相対性理論の重力場方程式を含むとされるが、弦の世界面は曲がった時空面なので一般相対性理論の連続した時空と類似しており、弦のラグランジアンを変形したものが重力場方程式を含むのも納得できる。またAdS/CFT対応では素粒子の強結合状態を4次元のCFT(共形場)で表現してある種の重力源と捉え、CFTを境界に持つ5次元時空(AdS:反ド・ジッター計量場)の一般相対性理論の弱い重力場を考察することにより、CFTの状態が近似的に計算できるとされるが、これはホログラフィー原理と連続した5次元時空上の一般相対性理論の応用といえる。

ビッグバンやブラックホールの中心のような極端な高エネルギー状態に一般相対性理論を適用すると、非常に強い重力が働いて特異点が発生することが数学的に証明されている。この特異点をそのまま受け取ると時空が破壊されることを意味するが、特異点の発生は一般相対性理論の重力場方程式がその状況で計算能力を失っているからで、量子化されていない重力場方程式を量子化することにより特異点と時空の破壊を避けられる、と多くの物理学者が考えている。

果たしてそうだろうか、本当に重力が時空を左右すると考えるならば、その特異点で時空が破壊される、と考える方が正しいのではないか?

重力は連続した時空上でしか存在できず時空の破壊によって消失するから、重力の量子化は必要ではなく、重力子は存在しない。

リタイヤ生活を送る一般人で、変人かつ人間嫌いの私にはそう思える。

何十年も前から重力の量子化が研究されているが、量子重力理論はいまだ未完成で、超対称性が実験で否定された今では超弦理論も机上の空論。

重力子はタキオンと同じ理論上の素粒子で、実験では確認されてない。

重力波は検出されたが、水面の波と同じ時空の波であって、水面の波を量子化する必要がないのと同様に重力波を量子化する必要はない。

時空素仮説では時空の破壊時、時空素の表面構造の結合がはずれて時空は時空素に分解され時空自体が消える、そしてその時点で幾何学的で古典力学的な相互作用である重力も消失。

巨大ブラックホールの特異点近傍で4次元時空が分解して発生した時空素が、再び結晶化して新たな微小4次元時空を形成する場合も考えられるが、時空素の疑時間ベクトルがランダムな場合が多いので比較的まれなケース。仮に微小な時空が形成された場合には、それらの時空素が持つ巨大ブラックホールの膨大なエネルギーが薄まるまでインフレーションが発生し、新たな宇宙に成長。勿論、新たな宇宙にもVDSとの情報的な繋がりはあるはず。

再結晶化されなかった時空素は時空外の無の領域に戻る。つまり時空に小さな穴が開き時空素が少しこぼれるだけで宇宙への悪影響は全くない。勿論、時空上の素粒子やエネルギーは失われない。時空上の素粒子やエネルギーは時空に縛られているので、時空に穴や端があっても時空から逃れることが出来ない、それがエネルギー保存則。ブラックホールが蒸発して時空の穴が事象の地平面の内部から外へ出ても問題ない。

[3/2追記:時空に穴が開き時空素がこぼれた場合、こぼれた時空素が持つ情報と素粒子とエネルギーはもとの時空から失われる]


時空の亀裂が発生しても時空素の表面構造により自動で修復。時空上の物質が影響を受ける場合もあるが、本来、時空と物質はダイナミックに変化するので当然。

無の領域には複数のVDSが生まれる可能性があるが、そこから安定した4次元時空や安定した物質宇宙が生まれる確率は低い。

つまり総合的には多宇宙だが、巨大ブラックホールから派生する宇宙を含めても、あまり多くの宇宙は発生しないだろう。

宇宙は、物理定数や物理法則を量子情報処理によりそれぞれ独立に徐々に修正しながら、より豊かな多様性を求め進化しているに違いない。

記事の最初の方で取り上げた自発的対称性の破れも、周囲の環境により適した形に変化するという意味で、物理定数や物理法則の進化機能の重要な一部に違いない。疑時間ベクトルが等しい時間素が結合して結晶化し微小な4次元時空を構成する過程も自発的対称性の破れに該当する。

今回の記事では以下の仮説を導入した。

・無の領域からの渦流次元空間(VDS)の発生仮説
・4次元時空創生のための4次元時空素仮説
・物理定数と物理法則の進化仮説

前々回の記事から、時間軸方向に広がった波動関数や量子力学の最適化世界解釈、宇宙に唯一の根本的な余剰次元空間(=VDS)、素粒子のタイ焼き仮説、素粒子の保護機能も導入した。

最適化世界や素粒子の保護機能、物理定数と物理法則の進化においては、量子情報処理や時間軸方向特に未来に広がった波動関数等が重要な役割を果たすだろうが、その詳細は不明。特に量子情報の今後の進展には期待したい。

素粒子各種の相互作用や質量等が数値的に非常に広い範囲に及んでいるのは何故か、という階層性問題があるが、私は逆の見方をしている。物理定数と物理法則が進化し素粒子の保護機能が強化された結果として階層性問題と呼ばれる状況が誕生したわけで、この状況は進化の強化の成果。だから階層性問題を解決しようとする試みはそれらに逆行する行為。

電磁力と弱い相互作用が統一可能なのは、まだ分化途中だからかもしれない。なおモノポールが発見されないから、電場と磁場の分離も始まっていることは明らか。

数学や物理法則は人間の頭の中にある、と考える学者もいるようだが、私は違うと思う。数学の要素は無の領域に存在し物理定数と物理法則はVDSに定義されていて、人類がそれらを少しずつ発見しているに過ぎない。そうでないと数学や物理法則を利用して宇宙が誕生し、その後に人類を含む複数の知的生物が生まれた理由が説明できない。もし人類の知性により数学や物理法則が誕生するなら、他の知的生物が異なる数学や物理法則を考えた場合は異なる宇宙になるわけで、宇宙が分裂する。

物理的実体とは何かについても、再度、私見を述べよう。

無の領域では様々な数学的要素が存在するが、特に決まり事はなく構造もメカニズムも定義されていない。その無の領域から渦流をへてVDSと4次元時空が形成されると、その段階で様々な物理定数や複素数空間やグラスマン数の空間、素粒子の内部対称性空間や物理法則の構造とメカニズム、アルゴリズムが決まる。そして4次元時空上ではエネルギー励起体としての素粒子も発生する。

VDSや物理定数や物理法則といった物理的内容を決めるすべての存在も、その測定可否にかかわらず物理的実体と考えている。

つまり宇宙とは、数学をベースにした機械又は生命体というイメージ。

全数学的要素が平等で真の統一が成立している無の領域から、VDSをへて各要素が分離し秩序が形成された物理的世界に変化したきた。この変化は不可逆的だから、物理世界から出発し統一された無の世界に帰着する試みは無意味。

雑誌や論文、専門書、一般向け解説書等を見る限りでは、多くの物理学者が唯一の物理定数や唯一の物理法則、電磁力と弱い相互作用と強い相互作用の対称性を全て含む群や超対称性といった物理理論の統一、点粒子から広がった物体への量子論の拡張、重力の量子化、万物の理論等、理論物理学上の美と理想を追求する方法論をとっているようで、それ自体は十分理解できる。

ただ実際の宇宙つまり自然は、もっと現実的で素朴で泥臭く、巧妙で無駄が少なく、かつ効率的なのではないか。

美や理想を追求する方法論のアンチテーゼとしての現実的な方法論を今回の3回にわたる記事で物理的空想として取り上げた。実験や観測の結果と矛盾せず未解決の問題の多くを回避する空想は、まだ謎が多くこれ以上の解明は無理だが、それなりに興味深いだろう。

また物理学専攻の学生だった頃から現在までの、物理関連の読書から得られた私の宇宙観と世界観の集大成ともいえる。

最後に、

Auguries of Innocence (William Blake, 1757-1827)

To see a World in a Grain of Sand
And a Heaven in a Wild Flower,
Hold Infinity in the palm of your hand
And Eternity in an hour.

無垢の前兆 (私の拙訳)

一粒の砂の中に大地を見
一輪の野の花にも天上を望む
あなたの掌の中に無窮を掴み
ほんの短い時が永劫を内包する

ブレイクの言う無垢とは、人とは関係なく、自然や宇宙の本質なのだろう。