この世界に生きる君へ
秒針が回る度に少しずつ、その顔がわからなくなっていった。
君にもらった本も靴下も手紙ももうない。
他にもらったものが何だったのかも
思い出せなくなってしまったよ。
だからせめて覚えていることだけでも
こうやって書き留める。
微睡む5限、黄色のカーテン、風、木漏れ日。
もうそこにいないことはわかっている。
足音が聞こえても、声を忘れてしまっている。
君は立派な大人になるのだろうな。
忘れていくこと、忘れられていくことが怖くて仕方がなかった。
自分の強欲にうんざりした。
君のこれからに僕はいらない。
だから心だけとっておいてそれ以外は全部捨てた。
ここまで来ても欲深い、煤だらけの心が残った。
これでよかった。