以前、クラニアルオステオパシー(頭蓋仙骨テクニック)について という記事で、このテクニックについては懐疑的だという内容を書きました。

 

しかし、先日この考え方を変える出来事が起こりました。

 

ちょっと長くなりますが、ありのままをお伝えしたいのでよろしければお付き合いください。

 

そもそもこのクラニアルオステオパシーとは、脳や脊髄の周りを流れる脳脊髄液(CSF)の流れが滞ることによって、脳神経や自律神経に影響しそこから体の様々な部分に悪影響を与えるというコンセプトです。

 

故に、脳脊髄液の通り道、すなわち頭蓋骨、仙骨、背骨周りを調節することによって脳神経や自律神経に好影響を与え、それによって体全体の不調を根本から改善できると主張しています。

 

ちなみに、Primary respiratory(一次呼吸)という、肺呼吸とは違う、細胞が酸素を取り入れたり老廃物を排出したりするレベルのリズム(呼吸)によって脳脊髄液は循環していると考えられています。

 

確かにこのコンセプト自体は基本的にアナトミーに基づいているし、神経のつながりを考えるとあながち間違ってはいないと思うのですが、、、それ故に悩むのです。

 

サイモン・シンという医師が世の中の代替医療を科学的見地から評価した著書があります。

 

その「代替医療解剖」の中で、クラニアルオステオパシーを以下のように評しています。

 

ウィリアム・G・サザーランドは、1930年代にオステオパシー医として診療にあたっていた人物だが、人の健康は、頭骨と仙骨の小さな動きに支配されていると確信するようになった。その動きのデリケートなリズムが、体の自然治癒プロセスの基礎だと彼は考えた。クラニオサクラル・セラピーの目標は、そのリズミカルな運動がうまくいかなくなっているのを、元に戻すことである。とくに子どもにみられるさまざまな疾患、すなわち、出産時外傷、脳性麻痺、慢性疼痛、失読症、頭痛、学習障害、副鼻腔炎、三叉神経痛などの治療に役立つと言われている。現在、クラニオサクラル・セラピーは、オステオパシー医、カイロプラクター、ナチュロパス、マッサージ療法士など、いくつもの代替療法セラピストによって行われている。クラニオサクラル・セラピストに診察を受けると、手を使って詳細な診断が行われるため、初診には一時間以上かかる。その後は、セラピストが頭骨と仙骨をそっとマニピュレートするという治療になり、かかる時間は短くなる。典型的な場合で、六回またはそれ以上の通院を要する。一般的には、幼児期のうちに頭骨と仙骨は融合して、強い構造ができることが知られている。たとえ骨と骨のあいだにわずかな動きがあるとしても、そのせいで人の健康が大きく害されるとは考えにくい。つまり、クラニオサクラル・セラピーは、生物学的には考えにくい理論にもとづいている。クラニオサクラル・セラピーはほとんど研究されておらず、ごく少数の調査では、病気に治療効果があるという根拠は示されていない。また、ひとりの患者に対して複数のセラピストが診断を行った場合、異なる結果になりがちなのは、セラピストたちが存在していない現象を見出そうとしているためだろう。子どもをセラピストのもとへ連れていく母親は、治療のおかげで子どもの具合が良くなって驚くことがある。これはセラピストの穏やかな治療と落ち着いた物腰のおかげで、子どもの緊張が解けるためだろう。しかし、そうした効果は長続きしないのが普通だし、治療費は必ずしも安くない。この治療法に危険はなさそうだが、重い病気の子どもが、効果のある治療を受けずにクラニオサクラル・セラピーを受けるようなことがあれば、生命にかかわる。

 

とまあ、この医師の評価基準自体も主観が多すぎてかなり科学的ではない気もしますが、現在の科学ではわからない、すなわちそれは偽物だということなのでしょう。

 

それが偽物であると科学的に証明してくれた方がスッキリするのですが、現在の科学ではそれは無理のようです。

 

 

では本題に入ります。

 

実は、1週間ほど前から妻が右ひざの痛みを訴えており、特にどこかにぶつけたとか、転んだとか、捻ったということではなく自然に発生したということでした。

 

腫れもなく、骨盤のアンバランス、足の長さ、筋肉の拘縮、関節の可動域など一通り調べても目立ったところはなく、膝周りの筋肉に圧痛があるくらいで特にこれといった兆候は見られませんでした。

 

仕方がないので、膝や股関節周りの筋肉にアプローチして、その後テーピングをしたところかなり良くなったというので、それで様子を見ることに。

 

3日ほど経って、「そういえば膝の調子はどお?」と聞いてみたところ

 

妻:「悪くはないけど、まだ違和感が残ってる」とのこと。

 

関節の可動域、筋肉の拘縮、腫れや赤みもない、もしくは腰椎の状態からも末梢神経の圧迫でもなさそう、ということは内臓反射か自律神経系か?などと色々考えてみた結果、思いつきでクラニアルオステオパシーを試してみることにしました。

 

想定としては、脳脊髄液の滞留による自律神経系の不調、それに伴う内臓機能の低下とその臓器の対応筋の機能低下による右ひざ痛。

 

ま〜無理があるw

 

何はともあれ、このような一連の流れと考察を経て妻にクラニアルオステオパシーを試すことになりました。

 

クラニアルオステオパシーも頭にただボーッと手を当ててるわけではなくw、色々とテクニックがあります。

 

今回のMyチョイスは、、、

  1. Occipital decompression
  2. V-spread (occipito-mastoid suture)
  3. Venous sinus drainage

3番目のテクニックは脳内に滞留している静脈血を頭蓋骨内から排出促進して頭蓋骨内圧を正常に戻しつつ、脳脊髄液の流れを回復させるというもので、今回特に念入りにやることにしました。

 

 

夜の10時ごろに施術を開始して正味25分ほどだったと思います。

 

その後、妻は感想を述べる間も無くそのまま寝てしまいました。

 

 

で、翌朝。

 

「どうだった?」と聞くと、、、

 

妻:「久しぶりにこんなにパッと起きれた」「膝の違和感も昨日よりも良くなってる」と。

 

ま〜、ヘッドマッサージのような感じで、リラックスして熟睡できた結果だろうと思いつつ、子供たちを学校に送るために家を出ました。

 

そして、子供をドロップオフして家に帰る途中、妻から電話が、、、

 

妻:「パパ、助けて〜!!洗濯物干そうと思ったらいきなり膝が死ぬほど痛くて動けない!!、、、ガチャ、、、」

 

結婚して今年で15年を迎えたが、今までこんなに切羽詰まった妻の声を聞いたことがない。

 

制限速度マックスでマンションの駐車場に着くと、ダッシュで自宅へ。

 

そこにはうずくまり、この世のものとは思えないうめき声を上げている一人の中年おばさんがいた。

 

え〜本当にそんなに痛いの〜?と半信半疑で話しかけてみたが、どうやら本当のようだ。

 

なんとかできる会話の中で、

 

妻:「ブチっていう音が聞こえたような気がする、、、」と。

 

え?靭帯損傷か?とも脳裏をよぎったが、痛がる妻を施術できる姿勢になんとか移動させ、応急処置的にテーピングをしたところ、なんとかひざを曲げられるようになった。

 

理学的検査をしてみたところどうやら靭帯ではないようだ。

 

ただ、依然として激痛が走っておりまともに話せる状態ではない。

 

で、ふとあるアイデアが頭によぎった。

 

昨日頭蓋骨にだけ施術をしたせいで、頭部の脳脊髄液は解放され、そのしわ寄せが腰痛と仙骨まわりに行ったのでは?と。

 

 

んな訳ね〜よな〜と思いつつ、仙骨と腰椎のリリースをやってみた。

 

正味10分。

 

「こんなんで治ったら医者なんていらないよな〜」と内心呟きながら、妻がやり残した洗濯物を干してふと振り返ると、、、

 

ヤツ、いや、妻がいる!そしてあろうことか両足でしっかりと大地を踏みしめニヤニヤと笑ってるではないか!!!

 

妻:「アンタ何やったの!完全に治った!信じられない!」

 

え?マジで?嘘でしょ?

 

 

みなさん、この一連の流れを読んでどう思われましたか?

 

自分はなんだか新しい世界を少し垣間見た気がしました。

 

もちろんこれがクラニアルオステオパシーを立証する物にならないことはわかっています。

 

が、今回のこの効果は今まで施術した中でも明らかにタイプの違うリアクションでした。

 

ていうか、一回の施術で症状が完全になくなったのは実は今回が初めてです。

 

筋肉や関節に直接アプローチしていく通常のやり方だと、痛みや関節の可動域は劇的には改善するのもの、多少のだるさや違和感は残ります。

 

そして施述後数日かけて、自分の体自身すなわち自然治癒力によって、施術してバランスをとった箇所に合わせてその他の部分も勝手に帳尻を合わせていきます。その結果、体全体の不調が改善します。

 

それがオステオパシーの特徴であり、私のブログタイトルにもなっている「Find it, Fix it, and Leave it alone.」の所以です。

 

まだまだ検証は必要ですが、もし今回経験したような効果がクラニアルオステオパシーによるものであると仮定すると、通常のテクニックと組み合わせることでより即効性と持続性のあるトリートメントプランが立てられるのではと考えています。

 

いやはや、人間の体って奥が深いな〜と改めて感じさせてくれる出来事でした。

 

妻に感謝。