そして4日目の朝は。
槍がどこにもいない…。
昨日見ることができたのは、本当にラッキーだった。
本日のお天気は曇り。時間が経つに従って下降気味。
実は、ここでの天気予報は長野県大町市のものも参考になる。
そこにはわたしの父と母がいて、ふるさとがあって。
いくつかの山を隔ててわたしはここにいるのに、里帰りもしていない。
夜半降っていた雨も、出発時間には小雨が時折ぱらつく程度。
レインウエアにレインスパッツ。ザックカバー。
7月に谷川に行った時は山頂で慌てて着たっけ。
小屋で雨装備の準備をしてから行けるのは嬉しい。
本当はこの日が一番展望のきくコースを歩く予定だった。
三俣蓮華と双六の2つのピークを踏み、双六小屋へ、と。
が。この天気。
本日は巻き道ルートを通って双六に行くことが早々に決定。
巻き道とはいえ、そこそこ長い道のり。
それでも、お花畑もあり、今日に限っては展望のきかない通常ルートよりは楽しめるだろう。
幻想的な雰囲気の中で見る花もさぞかし美しいことだろうし。
谷川岳の時、山頂で降られ慌てて降りたのだがほんの数十分で止んでしまった。
幸か不幸か本当に悪天候の時に歩いた経験はない。
実はちょっと天候に関する運には自信があったりして。
この日も万全の装備で歩きだしたものの、雨は最初の数分のみ。
途中からは雨具の上衣も脱ぎ、気温的には歩きやすかった。
風もなく、足元に気をつけていれば問題もない。
ここで巻き道ルートへ。
「あたし雨女なのよね~」
「Yさんのせいだったんですか!」
そんな会話もまた楽しい。
途中。
正規のルートから一段下がったところに初老の男性が。
ん?休憩?と一瞬思ったのだが。
Gちゃん「大丈夫ですか?」
男性「はい、大丈夫です。ご心配なく」
わたしの位置からは見えなかったのだが、頭部に怪我をしていたらしい。
かなりの出血をしており(頭部の怪我は出血がひどいとか)
ひとりで応急処置をしている最中だった。
意識はしっかりしていて、行動もできる。
こういうケースで、他人がどこまで介入するべきかというのは非常に難しいのだそうだ。
もちろん命に関わるような状態であれば迷う余地はないのだろうが
たとえば救助が入ることによって発生する費用。
「なぜ助けを呼んだ」という人も中にはいるのだそうだ。
山に限らずそうだけれど。
色んな人が、いる。
コバイケイソウ。
心配しつつ、まずまず元気そうだったので歩きだした。
途中で双六小屋からの救助の人に出会う。
どうやら先行していた誰かが小屋の人に知らせたらしい。
怪我をして出血はあるけれど意識は明瞭、ということと
男性がいた位置を教えて、あとを託す。良かった。
三俣にもいたが、双六にも大学の医療チームが滞在している。
ボランティアなのだそうだ。すごいな。助かる。
みな心の中では心配しながら歩いていた。
だからここで救助の人に出会えたことで、心が軽くなった。
普通の道。もちろん岩や石があったりはするが。
ほんの一瞬、よそ見をしただけで。ほんの一瞬、注意を怠るだけで。
誰にでも訪れうるアクシデントなのだと、身に沁みる。
それほど普通の道だったから。
ますますムーミン谷ちっく。
無事到着。
で。
わ~おで~ん!!
ここでのお楽しみはビールにおで~ん!
巻き道を通り、早めに出たので着いたのはなんとお昼前。

すみませんおでんくん好きなんです。
ここの小屋はビールがあった!
下から運んできやすい位置にあるからボッカで荷揚げされたのかな。
午後、一瞬。
雲が下の方だけ取れて、僅かに臨む稜線。
ボリューミーな夕食!
もちろん全部いただきましたよ。
ここ双六小屋には談話室があり、色んな方たちと話ができたりする。
天気予報、急に悪い方に変わったのだそうだ。
そうだよな、曇りがちという予報は見たけれどここまで崩れる予報ではなかったはず。
もっとも山のお天気は変わりやすいし、そこまで信じ切ってもいなかったけれども。
翌日槍に登る予定だったという関西から来た男性がいた。
昨年、槍が岳であった落雷の事故。うん、記憶に新しい。覚えてる。
わたし、八方に行ってたし。
ゴンドラが止まるかもしれないからって
確かすごく急いで登って降りて来たんだった。
その、槍の事故で亡くなったのは、山の先輩だったのだそうだ。
あのあたりは落雷の危険がある時は放送があるので
あの日ももちろんそういう放送があったという。
放送があった時にはもう戻れないところにいたのか、
そのあたりはわたしたちにはうかがい知ることはできないけれど。
山頂で雷に打たれたという、その話を聞いて。
線香と酒持って来たんやけどな、という涙であかくなった目を見て。
あの日の山を、想った。
山は優しく、厳しい。









