私は長野県のとある山岳地方で育ちました。
目の前にはいつも北アルプスの山並みがありました。
水を張った田んぼ、水面に映る山の端。
ピンクの蓮華の花を摘んで歩いた日。
しろつめくさで編んだ花かんむり。
じりじりと暑い日差し、山から吹き下ろす風。
草いきれ。緑の匂い。
寝ころんで見上げた青い空。
轟きわたる雷鳴と真っ黒な空。
晩秋、舞い落ちる白い雪。
しんしんと降り積もる雪。
吐いた息がそのまま凍りつきそうな朝。
朝まだき、きらきらと輝く雪。
そして一番思い出すのは
凍りついた寒さがほんの少しゆるんだ早春のある日
雪の下を流れる水音を聴いて
ちいさくやわらかな芽を出す、ねこやなぎ。
雪の中を一人歩いて
春探しをしていたあの頃。
もういちどあの日のように春を探したい。
あの場所で。