紙の月【邦画】
2014年作品 松竹
面白かったよ
宮沢りえ主演。11年前の作品。
りえというだけで、見ていませんでした。
決して悪い意味ではなくって、
元気いっぱいのピチピチしていた頃を知っているだけにね。
もっと、早く見ればよかった。
大人になって、いい芝居をするようになっていた。
いい意味で、若いころのイメージを払拭させていた。
もうアイドル女優じゃなくなっていた。
役柄もあるかもだけど、にじみ出る、強さが、際立っていました。
濡れ場があります。
この作品には、必然です。
濡れ場があるからこそ、私は、りえに感情移入して
共感できましたし。
すごくきれいです。
制作陣がすごいと思う。
色・照明・カット割り、すべてがいい。
日本アカデミー賞で最優秀女優賞は、納得でした。
簡単なストーリーと感想
バブル崩壊後の1994年。
不倫は文化だと、肯定されていた時代。
まだ、バブルはじけたばかりで、銀行は再編されていない。
年収1千万円の時代でした。持ち物はブランド品。
女子行員は、花嫁候補か不倫相手、セクハラなんて言葉はない時代。懐かしい。
銀行の外回りをしている梅澤梨花=宮沢りえ。
パートから、契約社員になったばかりで、張り切っていた。
丁寧な仕事ぶりで、得意先からの信頼も厚く、仕事は順調。
だが、夫の梅澤正文=田辺誠一は、自分に無関心で、家庭は平凡であった。
この夫、当時トレンディドラマで流行っていたディンクスを気取っているのか、自分の金は自分の物的な感じでしたね。
得意先の平林孝三=石橋蓮司の家で、孫の平林光太=池松壮亮と出会う。
梅澤梨花=宮沢りえの周りを平林光太=池松壮亮がうろつきだす。自然な流れで一夜を共にする。
時は、平成初期。女だって、浮気くらいするし、不倫は文化の時代。当然の成り行きで、罪悪感もない。
出先で化粧品を買う。当時はやっていたクリニークだ。
あと一万円現金が足りない。
お客から集金した現金を一時的に借りてしまう。
これは転落の始まり。
得意先の平林孝三=石橋蓮司から、平林光太=池松壮亮は、借金まみれで、ろくでもないと聞かされた。
ここから、平林光太=池松壮亮に貢ぎだす。
貢ぎだしてから、二人の関係も、深くなっていく。
貢ぐことで、梅澤梨花=宮沢りえの心は満たされていく。
りえの子供の頃の学校で、貧しい地域の子供に寄付をする様子が出てくる。りえはこの頃から、貧しい子に寄付(貢ぐ)することで、自己満足を得ていたみたい。しかも、親の金をくすねてまで。だから、不倫相手が借金まみれで俄然、やる気が出ちゃった感じ。
その原資は、横領だった。
最初の200万円の定期を着服した際、お局:隅より子=小林聡美に不審がられていた。
以降、形跡を残さないやり方で、額も頻度も大きくなっていく。
本人は持ち前の誠実さで、ノートに記録を残していた。
悪い事、すべてを失うことへの、覚悟だったのかも。
証拠を残していたんだね。
横領の様子は、当時の時代背景からして、見事だった。
出始めのPC(マック)や、コピー機、プリンターが登場。
懐かしい。プリンターの速度が遅い事や、PCの性能が、当時を思わせる、丁寧なシーンだった。
平林光太=池松壮亮との別れは、突然だった。
若い子を二人の住むマンションに連れ込んでいたのだ。
だよな。若い方がいいし。所詮、金ずる。
横領のきっかけとなった、不倫相手である次長の不正を手助けしていた相川恵子=大島優子が寿退社した。
その後、隅より子=小林聡美の調べでりえの横領が発覚する。
いい味だしているんだよ。小林聡美。
真面目一辺倒でやってきて、年齢重ねたからって、窓口から雑用部署への配置転換。
正義を振りかざしても、上司も、銀行じたいが、不正の塊。
りえの横領は、まるでなかったかのように表現されていた。
銀行内の調査の最中、逃亡し、そのまま海外へ。
外国のマーケットの人混みに紛れて歩いていく後ろ姿がラストシーンでした。
海外への逃亡とは、強くなった。
冒頭のりえの、おどおどした演技から、堂々と逃げている様子は、見事でした。
覚書
監督
吉田大八
原作
角田光代
脚本
早船歌江子
梅澤梨花=宮沢りえ
平林光太=池松壮亮
相川恵子=大島優子
梅澤正文=田辺誠一
井上佑司=近藤芳正
平林孝三=石橋蓮司
隅より子=小林聡美
14歳の梨花=平祐奈