渇水【邦画】
2023年作品 配給:KADOKAWA
水道の停水執行を通して、貧困と児童虐待と、親子の絶対的なつながりの物語り
ネタバレあり
渇水とは給水制限を行うほど、ダムが枯渇の恐れがある状態のこと。だそう。
北海道は、冬に雪があり天然のダム状態。
給水制限とか、節水を呼び掛けられることは、経験がないです。
過去30年間に於いて、一度だけだそう。
よく本州の、節水制限の報道を見ますが、あまり実感がわきません。でも、みろるのうちは、古いので、停電になると、水道が止まっちゃうんだよね。過去のブラックアウトの時は、電気以上に、水が出ないことへの、不安と不便を体験。当たり前のライフラインが、そうではないことを実感しました。
この作品。
その大事な、ライフライン、特に、水道料金を払わず滞納した世帯に対し、停水執行という水道を止めてしまう場面から始まる。
主人公の岩切俊作=生田斗真。
本人はわからないようだが、妻と息子は愛想をつかして出て行ってしまう。
同僚に、木田拓次=磯村勇斗。
こちらは、恋人と、一結婚しようか、子供がいたらどうなんだろうと、将来に向けてワクワク状態。
相反する、境遇の二人が、停水執行を行っていく。
磯村勇斗の作業着姿に、キュンです
電気代は払えても、水道代は払わない、人たち。
水はタダでもいいんじゃね。と、言い放つ。
でも、電気は支払っていて、電気は止められていない。
木田拓次=磯村勇斗は、移動中に岩切俊作=生田斗真に言う。
『空気や太陽はただなのに、水だってただでいいじゃないか』と。
(本州で先祖の土地に代々住んでいると、各家に井戸があるんだよね。井戸は、タダだもんね。一理あるかも。
だが、キレイで安心して飲料として使えて、安定して使えるのは、人の手というか行政の手が必要なのだから、仕方がないよね。
停水執行の途中、小さな子供と小学生くらいの姉妹と出会う。
夫がいなくなり、母親は身を売りながら稼いでいた。電気も止められ、水道も止められる寸前だ。母親は、家にほどんと帰っていない。
いつもは滞納者に厳しい岩切俊作=生田斗真は 一度は、猶予を下す。
ますます厳しい給水制限。
母親のスマホは支払い、身なりを着飾る様子に、憤りを感じながら、岩切俊作=生田斗真と木田拓次=磯村勇斗と姉妹と、ありったけの物に水を汲み、だが、停水執行を行う。
4人で、食べるアイス。
このシーンは重要らしい。エンドロールで、『赤城乳業』がありました。色からして、ガリガリ君なのでは?と、見ていた。
更に厳しくなる給水制限
公園の水を汲み、しのいでいた姉妹は、民家の屋外の水道から水を汲むしかなくなる。そして、食べ物もなく、万引きで食いつないでいるようでした。
この辺から、更に、姉妹に対して、辛くなる。今の時代は、姉妹が登場してから、これは虐待。すぐに児相への通報が義務。水道局の人は、外部委託かもしれないけど、多分公務員だとしたら、このまま放置は、マズイ。
だけど、この作品の原作は、昭和の時代。通報の義務や児相すら知らない人が多いのでは?当時としては仕方がない状態。
子供たちを置いて、男の元へ行く、母親。
母親は、学歴もなく、仕事にありつけない、身を売る事と、男性に依存しなければ、生きていけない。
貧困の負の連鎖だ。
おそらく、生活保護も申請できない状態なんだろう。
いや、申請するという最後の砦も浮かばない状態なんだろう。
昭和だし、生活保護の前に、女だよね~と、役所で言われる時代。
姉妹を放置して、男の元に行く姿は、
立派な児童虐待である。
でも時代背景からみると、この議論が行われる以前、昭和の設定なんだろう。
姉妹は、近所の人に、児童相談所に助けてもらうよう、助言を受けるが、母親へのいつも裏切られる信頼と、母への思いが、拒絶させる。
見ていて辛い。
手を差し伸べた大人を、もう信じられなくなっている、姉妹。
だが、終盤。
万引きを目撃した岩切俊作=生田斗真は、子供を置いて出ていく母親を見る。息子に会いに行って、拒絶され、何かが、壊れていった。
姉妹を、公園に連れていき、給水制限で止められている、公園の水道を開放し、水遊びだと、水をまき散らすのだ。喜ぶ姉妹。
だが、水道局の職員が来て、止められてしまう。
起訴はされなかったけど、警察沙汰。
辞職。
姉妹は、児童相談所に保護されて、施設に行くことに。
そしてラストシーンは、岩切俊作=生田斗真が、電話を受ける。息子からだった。『海に行こう』と。厳しかった岩切俊作=生田斗真の目が、少しだけ、緩んだのだった。
軽部さんの解説によると、原作では、この姉妹は、死を選んでしまうらしい。辛すぎる。
このような様々な事例が、後に、大きな波となって、法律が制定され、条例が出来て、こどもたちと、貧困に、一歩も2歩も前進したのではないだろうか。年十年もかかり、その都度、限界まで、改善してきた。今、この作品を、企画した方々は、『まだ足りない』と、願いがあったと、思いたい。そして原作者がこの内容を執筆したことに、大きな意味があったのだと、思うのです。
覚書
監督 高橋正弥
原作 河林満
脚本 及川章太郎
岩切俊作=生田斗真
岩切和美=尾野真千子
木田拓次=磯村勇斗
小出有希=門脇麦
小出恵子=山崎七海
小出久美=子柚穂
伏見宮=藤官九郎
今西=宮世琉弥
竹内=柴田理恵
細川=田中要次
加東刑事=大鶴義丹