水道事業の民営化でもっとも腹立たしいことは、売却先が仏ヴェオリアや英スエズ、米ベクテルといった外資のグローバル企業であることです。水道事業が公共インフラでなくなり、ごく少数の外国資本に支配されるということは、儲け至上主義による水質の悪化と寡占による水道料金の高騰がもたらされし、しかもコンセッション方式が採用されるためインフラの維持管理は自治体、経営(儲け)は外資という形になります。同じように水道事業民営化を行ったフランスは、その弊害が際立ったため高い違約金を払って再公営化しました。
 また、日本の食料供給を安定化する目的で制定された種子法が少し前に廃止されましたが、実はこれも水道事業民営化と同様に、貿易と投資に関する国際協定である日米FTAや日欧EPAに適応するために為された法改正です。現在農作物の種子は、モンサント(ドイツのバイエルが買収した)が一代目しか発芽しないように遺伝子操作したF1種子が普通になっていますが、最近では特定の殺虫剤(ラウンドアップ)に強い遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え種子と当該の殺虫剤とがセットで販売されています。その組み換え作物の花粉が現地の農地に飛来して交雑すると遺伝子が混ざることになりますが、やがてそこにバイエルの検査技師が現れ作物の遺伝子交雑を認めたら国際紛争裁判所に特許侵害で訴えられ、必ず負けることになります。
 他にも食の安全や医療、保険、流通、雇用、労働、教育、カジノなど、とにかくあらゆる分野でとんでもない事態が進行しています。これらは皆、日欧EPAや日米FTA、TPPなど、貿易や投資の自由化に関する協定における欧米各国からの要求によります。『日本が売られる』(堤未果・幻冬舎新書)は全日本人必読です!
 マスコミでFTAやEPAの話題が出る時は「輸入のワインやチーズが安くなるぞー♪」とか「自動車の関税をどれだけ安くできるか!?」みたいな貿易の関税についてしか語られませんが、本当は「非関税障壁の撤廃」こそが恐ろしいのです。もちろん関税問題も一次産業の衰退に関わっているので大問題ではありますが…。

 

 

 また、安倍政権は移民政策に舵を切りました。この政策の目的は、日本人の給与レベルを、受け入れた外国人のレベルまで落とすことでしょう。つまり「底辺への競争」です。こうした移民を利用した経済界ぐるみの経産省主導の人件費削減への流れも、これから日米FTAや日欧EPAにより国内で活動しやすくなる外資のグローバル企業にとって非常に旨味のある政策のはずです。日本人か外国人かを問わず最底辺の給料で働かせることが出来る制度への移行なのですから。
 また、外国人労働者やその家族(全て移民)への国民皆保険の適用は、保険者(自治体)の負担を増大させ、その結果、日本が誇る皆保険制度が破綻すれば、外資の民間医療保険にとってこれほど美味しい話はありません。最近の安倍自民党の政策は、経済界と外資のための改革しか行っていないという印象です。


 国民の側も勉強しておくべきでしょう。マスコミから流れて来る情報では「輸入のワインやチーズが安くなる♪」だけですが、日本人の確実に未来は外資に叩き売られているのです。せっかくトランプがTPPを抜け、NAFTA再交渉にも前向きだというのに、肝心の日本が貿易協定に向けた改革に前のめりでは全く意味がありません。『日本が売られる』(堤未果・幻冬舎新書)は、これらの日本人が知っておかねばならないことを知るための最優良テキストです。

 

   参考文献

 

・「日本が売られる」(堤未果・幻冬舎新書)・・・https://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8C%E5%A3%B2%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B-%E5%B9%BB%E5%86%AC%E8%88%8E%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%A0%A4-%E6%9C%AA%E6%9E%9C/dp/4344985184