今回は「光る君へ」に登場する右大臣家ブラザーズの長男、道隆さまのご正室、貴子さまについてちょっとお話してみたいと思います。
板谷由夏さんの貴子さま~
凛としてお美しくて聡明で、道隆さまとのバディ感も含めて最高
そんな貴子さま。
百人一首に和歌が収められています。
わすれじの 行く末まではかたければ 今日をかぎりの命ともがな
(君のことは決して忘れないよ、とあなたはお約束して下さいました。
でも、人の心は変わっていくもの。
だったら、いっそ今この幸福の絶頂で命が尽きてしまえば良いのに……)
↑訳は意訳ですお粗末様です。
激しい恋の歌ですね
作者名は「儀同三司の母」と、されていますが、本名は高階貴子。
清少納言の仕えた主人、一条天皇の皇后定子のお母さんになる女性です。
のちに夫となる中関白・藤原道隆との馴れ初めの頃に詠んだ歌だと言われています。
古典の中の和歌なんていうと難しいイメージがありますが…。
こうしてみると、現在Jポップで歌われているテーマともそんなに変わらないですよね。
大好きなあの人が「ずっと一緒にいようね。ずっと大好きだ」と言ってくれた。
嬉しくて幸せでたまらない
でも、幸せ過ぎて、この幸せが壊れたときのことを思うと怖くなる。
いっそ、両想いでラブラブがピークの今この瞬間、死んじゃえたらいいのに!!
というのは、恋する女の子なら理解出来る心情ではないでしょうか?( ´艸`)
私は平安時代の中でも、特に円融天皇から一条、三条天皇の御世あたりまでが一番面白くて好きなのですが…。
特に、一条天皇の皇后定子と、その一族である中関白家がとても好きで
定子という人は、天皇にとても愛されながら、身内が宮廷での権力争いに敗れたことから後宮での勢力を失い、あとから入内した中宮彰子にその地位をおわれる形で宮中を去り、寂しく生涯を終えた、いわゆる「薄幸の佳人」と言われています。
逆境の中でも持ち前の、優しさと気高さを失わず、朗らかであり続けたとても魅力的な女性です。
清少納言は「枕草子」の中で、定子の美しさ、聡明さ、人柄の懐かしさなどを繰り返し賛美しています
2人は主従の枠を超えた「仲良し」だったのかもしれないですね(*^▽^*)
さて、歌の作者の「貴子さん」にお話を戻しますと。
彼女は深窓の貴族のお姫様ではなく、宮中に女官として仕えるキャリアウーマンでした。
漢学の素養も深い、今でいえば英語ペラペラのバイリンガルのような才女で、彼女の娘たち、定子やその妹の原子が、揃って美貌を称えられているところをみると、容貌も美しい、才色兼備の女性だったのではないでしょうか。
宮中で働くなかで、名門の御曹司・藤原道隆に見初められた彼女は、やがて彼と結ばれると、たくさんの子供にも恵まれてとても幸福な結婚生活を送ります。
まさにシンデレラストーリーです。
夫亡きあと、見る見るうちに没落し、不幸な晩年を送った貴子のことを、人々は指差して、
「賢すぎるオンナの末路なんてあんなものさ」
と嘲笑したそうですが……。
自らの才能と美貌を武器に、誰もが憧れる貴公子・道隆(かなりの美男だったと言われています。私はこの道隆さまも大好き)の心を射止め、幸福な結婚をした彼女は、自分の能力で人生を切り拓いた素敵な女性だったと思います。