大宮さんBL物語です。
苦手な方はご注意を・・・。
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「それ・・・どうしたの?」
「・・・。」
「何か買ってきたの?」
「・・・。」
「起きたらさ。あなたいないんだもん・・・俺どうしたらいいのかわからな・・・」
「誰。」
「・・・?」
「電話の相手。」
「ああ・・・西島さん。知ってるでしょ?今度俺が入る会社の・・・」
「約束してたのかよ今日。」
「ぅん。ランチのね。」
「・・・。」
「それなに・・・?」
「・・・サンドイッチ。」
「・・・え。」
「サンドイッチ。あんだよ近くに・・・おいしいサンドイッチ屋が。」
「・・・。」
「だから並んで買ってきた。」
「それって・・・。」
「・・・ん?」
俺のため?
と。
言いそうになって・・・やめた。
そんな訳はない。
ただただ・・・この人が食べたかったから買ってきただけだろうに。
俺のため・・・なんて。
そんなことあるはずないのに。
一瞬。
・・・。
・・・。
夢を見てしまった。
黒のエコバックから出てきたサンドイッチは。
俺が想像していたような・・・コンビニのとは違って。
もう・・・パンからして全然違う。
持った感じも重くて。
高さが半端なくあって・・・。
って言うかこれ・・・顎外れるんじゃない?
「ぁ・・・。」
「・・・?」
「コーヒー淹れてよ。」
「・・・コーヒー?」
「・・・。」
淹れてよって・・・どういう意味?と思いながら。
でもすっと立ち上がるから。
俺もついていく。
奥のキッチン。
そこに。
コーヒーのセットが置いてあった。
コーヒー豆と・・・それを挽く本格的なミル。
ドリップ容器と紙・・・それからお湯を注ぐ専用のポット。
まだキッチン周りも全然片付いていないのに。
その一角だけはキレイになっていて。
コーヒーマグが二つ。
黒と白の無地のカップが二つ置いてあった。
「淹れて。コーヒー。」
「・・・。」
手に取って見る。
全部新品。
え。
・・・。
・・・。
どういうこと?
「豆・・・お前の好みとかよくわかんなかったから。」
「・・・。」
「店の人のオススメにしておいた。」
「・・・。」
「淹れて。」
「・・・。」
「・・・淹れてよ。」
「これ・・・。」
「・・・ん?」
「いつ買ったの?新品なんだけど・・・全部。」
「昨日。」
「・・・え・・・な・・・んで・・・。」
「お前呼ぼうと思ってたから。家に。」
「・・・。」
「だから淹れてもらおうと思って。」
「・・・。」
「腹減った。早くコーヒー。」
「・・・ぁ・・・ぅん。」
呼ぼうと思ってた・・・って。
それもやっぱり。
最後・・・だからなのかな。
じわっと湧き上がる・・・切ない感情。
でも俺はもう。
今は・・・そういうこと考えたくなくって。
だから俺は。
自分の家と同じようにして。
コーヒーを淹れ始めた。
いつもの手順通りにやっていくと。
少しずつ心が落ち着いていく。
とにかくこの人と一緒にいる今を。
大事にしたい。
「それ・・・豆どんくらいとか決まってんの?」
「・・・目分量よ。大体でしかわかんない。」
「勘か。」
「・・・そう。」
「豆挽くのに力必要?」
「そうでもない・・・けど・・・やってみる?」
「ん。」
「・・・そう・・・引っかかるから気を付けて。」
「・・・ん。あ~砕けてるって感じするわ。」
「面白いでしょ?ゴリゴリいう感じ。」
「ん。面白い。」
「ぁ・・・もうそんくらいで・・・あんま砕けてもダメだから。」
「・・・。」
「うん・・・いい感じ。どう?」
「ん・・・いい香りだな。」
「でしょ?挽きたてならではなのよこの香り。」
「・・・。」
「なんか落ち着くのよね。」
「・・・ん。」
「これを・・・こっちに移して。」
「・・・。」
「お湯・・・ぁ・・・もう少しかな。」
「・・・。」
「いいよ?座ってて。あと少しでできるから。」
「ん。見てる。」
「・・・。」
じっと。
二人。
お湯が沸くのを見てる。
何もしゃべらず・・・なんだけど。
気まずいとか居心地悪い・・・とかなくて。
もうずっと・・・こうしていたような感覚になる。
いつもの二人になる。
この人のこと好きな気持ちが。
穏やかになっていく感じで。
激しく昂るような昨夜の熱とは違って。
一緒にいる空気に穏やかに包まれるような感覚。
肩・・・が軽く触れていること。
この人は気づいているんだろうか。
つづく
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ありがとうございました。
毎日20時更新予定です。
楽しんでいただけたら・・・。
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