こちらは大宮さんBL物語です。
苦手な方はご注意を///。
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そうだった・・・和は。
船酔いがひどいんだった。
なのに。
俺を探しに来てくれたの?
「大丈夫・・・?」
「っ・・・ぅ・・・ぇ・・・っぇ・・・。」
「ごめん・・・ありがと。」
「・・・ぅ・・・っ・・・えぇ・・・。」
辛そうで。
かわいそうで。
俺はそっと近づきその背をなでた・・・と。
すっと影が俺達を覆う。
見上げるとそこには・・・。
ゴアがいた。
何かを俺に向かってしゃべっているけど。
何を話しているのか・・・まったくわからない。
でも・・・話の途中で「シャーク」って聞こえて。
え・・・まさかって思った。
和にペットボトルの水を渡しながら。
ゴアが和に何かを言い。
和が水を口に含み。
すすいでは吐き出しながら・・・それでもなんとかゴアに返事をしていて。
その返事を聞いてゴアが船を出発させた。
どどど・・・とエンジン音がして動き始める船。
俺は。
和が万が一にでも落ちてはいけない・・・と思い。
その腕を軽く・・・だけどずっと持っていた。
でも。
ゴアの操縦は優しくて。
スピードこそ出ているけど全然荒っぽくなくて。
見かけによらないな・・・なんてそんな事思っていた。
少し落ち着いた和が。
はぁ・・・と大きくため息を吐きながら。
ヘリに寄りかかりグッタリしている。
俺は・・・座ったままその和ににじり寄って聞いた。
「シャークって・・・。」
「・・・いるのよここ・・・サメが。」
「・・・。」
「滅多に人は襲わないけど。」
「・・・。」
「夜は・・・動きが活発になるから。」
「・・・。」
「万が一ってこともあるし・・・あなたが食われちゃうんじゃないかと思って。」
「・・・。」
「心配したの。」
「・・・ごめん。」
怒ったように言う和。
とにかく具合が悪そうだ。
っていうか俺・・・よく無事だったな。
暴れずおとなしくしていたのが。
よかったのか?
「マジで・・・船弱いのに迎えに来てくれて・・・。」
「・・・。」
「ホントありがとう。俺・・・」
「・・・。」
「君が好きだよ。」
もう一度言う。
いや。
何度だって言う。
すいっと・・・顔を上げる和。
その顔が・・・青ざめていて。
こんな時にこんな話。
した自分をちょっと反省する。
言いたいこと・・・聞きたいこといっぱいあるんだけど。
返事もまだ聞いてないし。
でももしかして話なんて・・・できる状況じゃない?
和が・・・か細い声で言う。
「俺・・・。」
「うん。」
「ちょっと・・・まだ気持ち悪い。」
「ぇ・・・大丈夫?どうしたら・・・」
「あっちで・・・横になってくる。」
あっち・・・と言いながら。
操縦しているゴアの方を指さす和。
足元のところに・・・毛布やらなにやら置いてあるところがあった。
そっと和の移動を手伝う俺。
体を支え毛布に横になるまで誘導する。
「遠距離恋愛・・・。」
「・・・。」
「考えてみてくれないか?」
「・・・。」
しつこいかも・・・と思いつつ。
横になった和に・・・大事な事だからもう一度すがるように聞いた。
和は・・気だるげに俺を見つめ。
コクン・・・と一度うなづくと。
毛布をぐいっとひきあげ口元まで持って行き。
それにくるまると見えなくなってしまった。
・・・。
・・・。
一歩前進・・・だと思う。
考えてくれる・・・と。
そう返事してくれたんだから。
前進・・・だよな?
俺は。
和の近くに座り。
じっと・・・その盛り上がった毛布を見つめた。
見つめたまま考える。
遠距離恋愛を考えてくれる・・・と頷いてくれた和。
なのに・・・心のどこかで安心できていない俺がいる。
思いが通じ合ったはずなのに。
どうしてか飛び上がって喜ぶ気にはなれなくて。
だってはっきり答えをもらった訳じゃないし。
それに・・・遠距離恋愛のその先に。
何があるのかわからなかったから。
いずれは一緒に・・・そう思っていても。
でもそのいずれがいつ来るのか。
いずれが来た時・・・どうすることが最善なのかわからなかったから。
でも。
・・・。
・・・。
思いは伝えた。
あとは・・・考えてみると言ってくれた和を信じるだけだ。
そう・・・信じるだけ。
くるまって眠る和を見つめる。
わかりあえたはずなのに。
こんなにも不安だらけなんて・・・と。
そんなこと思いながら俺は船に揺られていた。
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つづく
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