大宮さんBL前提のお話です。
苦手な方はご注意を///。
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Side.N
斜面が終わり。
平らな道を・・・うっそうとした茂みの中を少し歩き。
そこを抜けると・・・竹林に出た。
細いのによくしなる強い竹。
まるで・・・そなたのようだ・・・と。
そう言われて・・・何度抱かれた事か。
私はそんなに強くありません・・・と。
その胸の中で・・・声を殺して二人昇りつめたあの夜が。
もう・・・遥か遠くの事のように思う。
命を終えるならここで。
そう・・・思ってやってきた。
そろそろ・・・横になれそうな場所を探しながら歩く。
死に方も考えてきた。
美しく楽に死ねる死に方。
お医者さんに・・・お願いして。
薬をもらってきた。
眠れない時に眠れる薬らしいけれど。
これを大量に飲むと。
眠るように死ねる・・・と誰かに聞いた。
それならどこも痛まなくていい。
遺書は・・・ない。
あの方への恨みつらみを書くつもりもないし。
ただただ・・・生きていくのに疲れただけだ。
ただただ・・・楽になりたいだけだ。
身内もいない・・・独りぼっちの人間だから。
言い残す言葉もない。
あっさりとしたものだった。
ふ・・・と。
視界が開ける。
まるで竹林を切り取ったかのように。
そこだけぽっかりと。
空間が広がっている。
歩みを進めたとたん。
目に飛び込んでくる炎。
まぶしさに・・・腕で目を隠し。
ゆっくりと・・・腕をずらしていく・・・と。
そこには。
鬼がいた。
小さな木でできた舞台。
四隅には篝火。
大きな水の器が一つ・・・舞台の正面に。
まるで・・・捧げものの用に掲げられている。
その・・・舞台の上を。
真っ白な衣装をまとった鬼が・・・舞っていた。
鬼・・・だと思ったのは。
つけていたお面で。
舞っているのは・・・あきらかに人だった。
その・・・伸ばされたしなやかな手・・・綺麗な指。
舞台を踏みしめるように・・・力強く開かれた足。
たぶん・・・かつら・・・の白髪をたなびかせ。
怒るように・・・なだめるように。
高く飛び・・・低く這う。
音は・・・トン・・・という足音のみ・・・なのに。
なのに・・・何か心地よい調べが聞こえてくるよう。
ひらひらと・・・舞い。
ぴん・・・と伸びる腕。
人・・・なのは確かなのに。
まるで・・・鬼の化身のような。
妖かしのような。
この世の人ではないように見えて。
私は動けなかった。
どれくらいそうしていただろうか。
動きを止めた鬼は。
じっと私を見つめている。
そして・・・ゆっくりと。
その・・・お面を取った。
・・・あ・・・
このお方は・・・知っている。
確か・・・城主お抱えの雅楽団の一人。
名前は知らないけれど。
確か笛を吹いていたはず。
綺麗なお顔立ちをしていて。
町の女の子たちの羨望の的だったから。
このお方を知らない人はいないだろう。
笛だけではなく・・・舞う事もできるのか。
驚いて見ている私に。
すっと・・・手が伸ばされた。
まるで。
こちらへ来い・・・と。
そう言いたげな表情。
じっと・・・私を見ていて。
その視線から目をそらせない。
まるで・・・引き寄せられるかのように。
気づけば・・・そのお方の腕の中にいた。
静かに接 吻を交わす。
それが自然の成り行きのように。
受け入れる自分に・・・とまどう。
そっと・・・髪をな でたその指が。
意思を持って・・・私の襟 元に伸びる。
ぐっと・・・開かれた胸 元。
熱くて・・・やわらかい ク チ ビ ル が下りてきた。
・・・ ぁ ・・・
・・・ は ・・・ ぁ ・・・
呼 吸が乱れ。
つかまっていないと・・・立っていられなくなる。
このお方は・・・どうして。
私にこんな風にして・・・触 れるのか。
仰ぎ見ると・・・おぼろ月。
ちぎれ雲が・・・流れていく。
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つづく