大宮さんのBLのお話「wanna be...」の続々編です。
苦手な方はご注意を///。
毎朝7時の数話更新です。
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それから家に帰った。
鍵をあけ玄関に入ると和の靴がある。
・・・あれ?
今日は確か。
俺が得意先からいつ帰って来られるかわからないから。
智んち行かないね・・・なんて言ってたはずの和。
なんで来ているのか?と思いつつ。
思いがけずに会える恋人の姿を思い。
いそいそと靴を脱いで部屋へと入った。
「ぁ・・・お帰り智♪」
俺に向かって軽くグラスを掲げる和。
最近買った・・・ちょっと高価なウイスキーを。
炭酸で割って飲んでいた。
「来てたんだ・・・。」
「ダメ?」
「ダメな訳ないよ。」
「・・・ンフ///♪」
言いながら。
自分の隣をポンポン叩く和。
ここに座れ・・・と。
そういう意味だ。
急いでスーツを脱ぎ始める俺。
そんな俺を下から見上げる和。
「夕飯は?」
「食べて来た。」
「ぇ・・・誰と。」
「ぇ・・・。」
和の声色が。
たった一言・・・誰と・・・の声色が。
周りが凍るくらい冷たく聞こえる。
ネクタイを緩めようとしたまま固まった俺。
じっと二人見つめあったままだ。
「智の今日の外出は・・・一課の小林さんと二人きりだったよねぇ。」
「・・・。」
「ぁ・・・営業先の人も一緒?」
「・・・。」
そうだよ・・・と。
嘘をつけばいいんだろうけど・・・でも。
この状態で上手く嘘がつけるとは到底思えない。
あんまり女子と仲良くしないで・・・と和から言われた事を思い出す。
でも・・・ここは。
嘘なんてつかない方がいいだろう。
だって俺は。
社会人として上司として当然の事をしたんだから。
「いや・・・小林さんと二人。」
「・・・。」
「今日頑張ってくれたから小林さん俺のためにイロイロと資料とか説明したり用意したりしてくれて。」
「・・・。」
「だからほら上司としてさっさと帰すのはどうかと思って飯でもって誘って。」
「・・・。」
「でもファミレスだし飲んでないしすぐに帰ってきたよ。」
「・・・。」
和の沈黙が怖くて。
まくしたてるようにしゃべる俺。
噛みもしないでよくしゃべれるな・・・と自分で感心するくらいで。
それくらいきっと必死なんだと思った。
やっぱり少し後ろめたいと思っていたんだ・・・と。
うろたえる自分で自分の気持ちを知った。
じっと。
俺を見上げていたけど。
ゆっくりとテレビに向き直る和。
ゆっくりと・・・静かな声で話し始めた。
「女子と二人きりで食事・・・。」
「・・・。」
「僕が嫌がるかもって・・・思ってくれなかったんだね。」
「・・・いや・・・それは・・・。」
「僕の事・・・もうどうでもいいんだ。」
「・・・いいわけない・・・そんなことある訳・・・」
「じゃあなんでそんなことしたの?」
「・・・。」
だから。
がんばってくれた部下に上司としてねぎらいを・・・と。
そう・・・思ったし今そう言ったけど・・・でも。
もう一度それを言う勇気は俺にはなかった。
「ごめん。」
謝る。
「ホント・・・ごめん。」
言いながら。
恐る恐る和の隣に座る。
でも・・・和が。
つつっと俺から離れるから・・・だから。
その仕草にあせってしまって。
俺はまた・・・しゃべり始めた。
「今日のはほら・・・一課の仕事だったし・・・。」
「・・・。」
「女性とはいえ部下だし・・・俺は別にそんな和が思うような変な気持ちは・・・」
「あのね。」
「・・・。」
「仕事とか部下とかもう関係ないの。」
「・・・。」
「そういうことじゃない。」
「・・・。」
「智がその人と二人きりで行ってもいいって思った事がもうヤなの。」
「・・・。」
目を見てはっきりと言われた。
その真剣な瞳が・・・キレイで。
怒られているのに見惚れて目が離せない。
「でもきっと智はこれからもどうせ行くんでしょ?」
「・・・。」
言いながら前を向く。
ほっぺたがプックリと膨らんでいる。
あざとさが見え隠れするその仕草・・・に。
わかっていてもトラワレる。
「仕事だもんね・・・部下だし。」
「・・・。」
「これからも行くんでしょっ!」
「・・・。」
強めに言いながら。
ぷいっと向こうを向いてしまった和。
すねてる。
へそ曲げちゃって。
ご機嫌も斜めになってる。
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つづく
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