大宮さんのBLのお話「wanna be...」の続編です。
苦手な方はご注意を///。
30分おきの更新です。
〜* 〜* 〜* 〜* 〜* 〜* 〜*
数日後。
営業先の方々との接待が終り。
タクシーで見送ってから。
ふと気づく。
ここは・・・あの「潤君」のバーが近い。
行ってみようか。
一人だけど。
和の事も・・・少し聞きたいし。
忙しそうなら・・・一杯だけ飲んですぐに帰ってもいい。
俺は。
そう思って・・・松本君のバーに向かった。
店内はすいていて。
俺はカウンターの席を指定する。
行くとすぐに松本君が気づいてくれて。
男の俺でも惚れ惚れするような笑顔で挨拶をくれた。
この間と同じものを飲む。
何か召し上がりますか・・・と言われ。
少し・・・と言うと。
ナッツを出してくれた。
つまみながら・・・飲む。
松本君に・・・この間見た映画の話を少しする。
久しぶりに映画館で見たよ・・・と言い。
映画はいいですよね・・・と言われる。
磨き上げられたカウンターテーブル。
グラスを置くたびに。
硬質の・・・カタン・・・と心地よい音が鳴る。
暗がりの中・・・カウンターの淡い光に。
浮かび上がる自分の指。
そう言えば・・・暗い映画館の中。
一度だけ・・・和のその手を握った。
ひじかけに乗せられた和の手を上から握る俺の手。
和は・・・嫌がる素振りもなく。
俺にその手を預ける。
少しすると・・・その和の手がくるん・・・と向きをかえ。
ぎゅっと引っ張られ。
指と指を カ ラ ませて。
手を・・・繋がれたことを思い出した。
・・・。
・・・。
この・・・手が。
俺の指が。
あの和の指と・・・ カ ラ んでいた。
嬉しかったけど。
幸せだったけど・・・そう。
俺はもっと。
深いところで・・・和と カ ラ みたいんだ。
「・・・大野さん・・・。」
「・・・ん?」
松本君が。
静かに・・・言い。
俺を現実へと引き戻す。
「付き合ってるんですか?」
「・・・ぇ・・・?」
「・・・和と。」
優しい声だけど。
真剣な瞳。
和の幼馴染だ・・・というこの男性。
俺を・・・どう見ているんだろうか。
しかも・・・会社の上司・・・とだけしか紹介されていないはず。
ずいぶんと思い切った質問をしてくる。
この彼に・・・探りを入れることもできたけど・・・でも。
俺は真正面から答えた。
「付き合ってはいない。」
「・・・。」
「でも・・・好きだ・・・って告白はした。」
「・・・そうなんですか。」
「うん・・・。」
「和の返事は?」
「保留にされてる。」
「保留・・・。」
「そう・・・保留。」
「・・・そうですか。」
そう言いながら。
下を向く松本君。
しばしの沈黙。
俺は。
たまりかねて・・・言った。
「焦ってる訳じゃないんだけど・・・。」
「・・・。」
「返事・・・待つ身はつらいよね。」
「・・・。」
「和の攻略法とか・・・知ってる?」
「攻略法って///。」
小さく笑う松本君。
いい男は。
どんな顔しても・・・いい男だ。
「実はこの間・・・あなたと和が来た時に・・・。」
「うん?」
「聞かれたんです・・・和に。」
「・・・。」
「あなたがトイレに行った時・・・。」
「・・・。」
「『あの人どう思う?』って・・・和に聞かれたんです。」
「・・・。」
「そんな聞き方するから・・・俺もうてっきり二人付き合ってるのかと思って・・・。」
「・・・。」
「優しそうな人だね・・・ってそう・・・言ったんです。」
「・・・。」
「わがままな和にはお似合いだよ・・・って・・・そう言ったんですけど・・・。」
「・・・。」
「それきりで・・・その話が終っちゃって。」
「・・・。」
「だから俺も少し気になってたんです・・・付き合ってるのかなって。」
「・・・。」
松本君に。
優しそうな人・・・と言われた事も。
もちろん嬉しいけど・・・でも。
・・・。
・・・。
あの人どう思う?・・・と。
和が松本君に聞いた心情を思うと。
顔がにやけた。
「ここに・・・。」
「うん?」
「和がこの俺のバーに・・・人を連れてきたのは・・・。」
「・・・。」
「あなたが初めてです。」
「・・・。」
「男性も女性も・・・連れてきた事はありません。」
「・・・。」
「話は・・・いろんな人の話はよく聞いてます。」
「・・・。」
「なんとか部長にネクタイもらった・・・とか。」
「・・・。」
「どこかの課長にミシュランの星を持っているレストランに連れて行ってもらった・・・とか。」
「・・・。」
「宅配業者のお兄さんにランチご馳走になった・・・とか。」
「・・・。」
「営業先の人に告白された・・・とか。」
「・・・。」
「そう言う話は・・・よく聞きますけど。」
「・・・。」
「ここに・・・連れてきたのはあなただけです。」
つづく
.