小さな願い Ⅰ ～樅の木に託して～

小雪がちらつくこの日、人通りは少なく

　　　　　　　　　　羽を休める事のできない鳥たちも早々と家路につく頃・・・。

いつもは、賑わいのある街並みも

　　　　　　　　　　歩く人影さえまばらであり、静寂だけがあたりを支配している。

蒼く輝くイルミネーションも少し寂しそう・・・。

ただ、時間だけが過ぎていく・・・。

そして、小雪はやがて吹雪となって灯を揺らし始めた。

通りに飾られた幾重もの光のアーチは、じっと息をひそめて風に耐えていた。

サンタへの願いを込めた「プレゼント」boxが、静かに揺れじっと寒さに耐えていた。

誰もいない通りに、見る者をただ待つ「灯」。

一人寒さに耐えながらファインダーを覗き込んでいると・・・

イルミネーションたちが、優しく語りかけてきた。

もっと見てよ・・・。

もっともっと輝くから・・・僕たちには時間がないんだ。

そう聞こえた。

彼らは今、ここにいる僕のために懸命に輝いている。

「観てるよ・・・」そう呟いた時、周囲のイルミネーション達も少し楽しそうに輝き始めた。

「始めるよ・・・」そう聞こえた。そして彼らは天空に向かい輝き始めた・・・。