――――時刻は1時40分。
魔の始まりを告げる鐘が鳴る。
生徒たちの緊張感が高まる中、『ガラッ』という激しい音とともにかの有名の魔術師が入ってきた。
『それじゃ始めるぞー。』
その低く落ち着くような声がきっかけとなり
その魔術師による魔の時間が始まった――。
この学校には声の魔術師という有名な魔術師がいた。
――その魔術師の授業が5時間目にくると死に近い状態を味わうという――
そんな伝説が広まったのはいつ頃だろうか。
いつものように給食が終わり、満腹感とともに昼休みが訪れた。
いつもどおりの昼休み。
いつもどおりの日常。
そう思われたのだが・・・・
それは誰かの声とともに気付く。
『げぇ~5時間目地理かよー』
そして誰もが気付く。
死 の 時 間
Time of deathだ・・・・!!
時刻は1時35分。
あと5分であの魔の授業が始まる。
誰もが絶望感に包まれた。
そう。5時間目。
それは給食後であり、もっとも眠くなる時間。
そんな時間にあの声の魔術師ともなる人の授業。
それはいわゆる‘死’に近い状態である。
声の魔術師の特徴は、その名の通りである。
低く落ち着くような声。
教室に響き渡る髪・・・ゲフンゲフン・・神の如き声。
それは眠気を誘う子守唄でもあるかのように・・・・・・・。
声の魔術師は5時間目ではなくても‘死’に近い感覚を味わうのだ。
眠気を誘うような声。
ノートをほとんど書かないため、気を紛らわすことも出来ない授業・・・。
まさしく‘死’だ――。
――そして1時39分。
誰もが席に着き始め、緊張が走る。
時計が『カチリ』と小さな音が聞こえると、鐘が鳴る。
鐘がなり終わった数秒後に声の魔術師たる人が入ってきた。
―――魔の時間が始まった――
号令が終わり、皆が着席をすると授業が始まった。
そのクラスの1人にナッツという女がいた。
ナッツは気を紛らわすため、折り紙を用意していた。
その他にも策があった。
Time of deathに耐えられるかどうかは、眠気次第。
*
魔術師の声が教室に響き渡る。
低く落ち着く声は、すでに生徒たちを蝕み始めていた。
教室内は程よい暖かさで、満腹感が漂っていた。
そのただでさえ5時間目は眠くなる時間帯なのだ。
それに拍車を加えるように、魔術師の声が響く。
開始10分、教室内にはすでにウトウトする人が数人いた。
ナッツは必死に折り紙で鶴を作り、耐え忍んでいた・・・。
――時刻は1時55分。
ナッツの努力も虚しく、用意していた折り紙が切れてしまった。
それほど集中をしていたのだ。
作った鶴を握りしめ、ナッツは苦しんだ。
何か、何か気を紛らわすものはないのか――!?
ナッツは必死に考えた。
そしてナッツは気を紛らわせるために、羊を数え始めた。
しかし130匹を超えたあたりから意識が朦朧としてきてしまったのだ・・・
最早ここまで――そう思われたのだが、
ここで救いの手が伸びる。
‘作業’だ。
‘作業’とは教科書やプリントに色塗りなどをし、気を紛らわせることのできる一つだ。
その‘作業’にナッツは喜びを感じ、無駄に色塗りをした。
そしたら教科書の後ろにまでインクが映った。
しかしそんな事を気にしている暇はなかった。
――時刻は2時5分。
救いの手の‘作業’も終わり、周りを見渡すと何人か寝ている人が見受けられる。
・・クソッ、もう皆蝕まれてやがる・・・!恐るべし、声の魔術師・・・
ナッツは心でそう呟くと、気を紛らわせられそうなことを考えた。
だが、ナッツの脳では考えることは無理だった。
ナッツの脳でなくても、今は眠気に蝕まれてきているため、
考える、と言うことをするのは難しいことだった。
ただでさえ余計な事しか考えられないナッツにとって辛いことだった。
しかしここで隠していた奥の手にでた。
そう、
シャーペンで手を刺しまくることだ――!
この行為はシャーペンを手の甲に押し付け、刺激を与える。
刺激を与えることによって、脳を目覚めさせるという効果があるのだ。
その行為によって、ナッツは何度も5時間目などの時間を耐えしのいできたのだった。
何度も何度も刺しまくり、押し付け、なんとか目を覚まそうとした・・・・
だが・・・・・・・
声の魔術師の授業、そして5時間目でもあるこの時間・・・
Time of deathでは効き目がなかったのだった――。
何度もぶっ刺すものの、なかなか効果がなくだんだん麻痺してきて
痛みがなくなってきた。
はたから見たらそれはただの自傷行為だったであろう。
だんだんとぶっ刺した部分が赤くはれ上がってきて気持ち悪かったので
ナッツはその行為を虚しく辞めざる追えなかった。
時刻は2時15分。
何人か寝て、本も読んでる人もいて、
そして眠気を覚まそうと無駄にテンションの高くなる男子が居る中
ナッツは絶望を感じていた。
眠たくても寝られない。
寝たらそこで試合終了。
眠たくても寝られない辛さは何度も味わっているはずだ。
・・・だが、声の魔術師は格別な力を持っているのだ。
そして五時間目・・・。
そうか・・・これがTime of death・・・。死の時間なのか・・・。
かつて味わったことのない眠気にナッツは苦しんだ。
魔術師の声はまさに子守唄だった。
子守唄にしか聞こえなくなってきたのだった。
――時刻は2時28分。
あと2分だった。
しかしナッツの眠気はピークに達し寝る寸前であった。
だが、これまでの48分間の思い出、
なんとか耐え抜いたという疾走感。
そしてうちの学校の男子のBL的な妄想を繰り広げながら
2分間は過ぎてゆくのだった。
そしてBL的な妄想は最高だt(ry
色々な思いを秘め、鐘が鳴る。
皆溜息をつき、号令が終ると殆どの人は脱力したようだった。
ナッツもその一人で、死にかけの魚のようにボケーっとしていたら、
うちのクラスにいるゴリラに
『おい、ナッツ大丈夫か?お前顔死んでるぞ』
そう言われた。
周りの皆は笑い、ナッツは驚いた。
・・・そんなに、そんなに顔が死んでいるのか・・・
ナッツは鏡を見てみたい、という思いに包まれたが
辞めた。
そして気付いた。
あぁ、そうか。
ココに居る皆は、Time of deathを乗り越えた仲間たちではないか・・・。
ただの生徒ではなく、仲間なのだ。
皆なんとか死なずに生きている・・・・・・・・・。
そうか。
これが集団心理と言うものなのか。
皆で辛いことを乗り越えると心に芽生える何かに気付いた。
詳しくは分からないけれど、何か温かいもの・・・。
そしてナッツは心で密かに呟いた。
『ゴリラ、お前も死んでたぞ。そして動物園へ帰れ。』
そう思いながら
ナッツは周りの勇敢な戦士――仲間も見据えながら
笑った。
Fin
ゴリラに何度も死んでる死んでる言われた^p^
動物園帰ろうか、ゴリラ?←
そしてつらつら書きあげてナッツは思った。
俺、何書いてんの?←今更
温かい目で見てやってください(´・ω・`)