第157号 2022早春 山陰への旅 その四 | 燃え上がれ!NATTO-TIMES 21st century

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 人は権力の座に長く居ると、全能感に囚はれる。豊臣秀吉を見よ。日本一の天下人になった途端に「ワシャ明の皇帝になる」と狂ったことを言ひ出して朝鮮侵略を始め、日本史上最も恥づべき人物になってしまった。

 

それは、もともと優秀な人間でも無能な人間でも同じだ。2000年5月から大統領を務めてきたプーチンは、抜かりのなさとカリスマ性では他に例を見ない優秀な人物である。

 

 だが22年も権力を握り続けていると、やはり「奢れる者は久しからづ」で、判断を誤る。「ウクライナがNATOに入るのを阻止するために良い案はないか」

「オヤブン、ゼレンスキーは弱腰ですから、ちょっと叩けば引っ込みます」

「我がロシア軍は無敵だからな」

「引っ込んだら、カイライ政権を立てりゃいいんです」

なぁーんて吹き込んだ側近が居たんだらう。

 

 ロシアの兵士もたいへんだ。演習だと聞かされて、国境まで連れていかれたところで、ホンモノの戦争に遭遇するとは、夢にも思っていなかったことだらう。弾薬も食料も充分ではないから士気は上がらない。そもそも大義名分のない戦争だ。自分たちが何のために戦っているのか分からなければ、攻撃目標がデタラメにもなるだらう。病院だらうが劇場だらうが知ったこっちゃない、ってワケだ。

 

 プーチンに比べるのも恥ずかしい小者のシンゾーだって、たかが8年権力の座に居ただけで全能感に陥り、モリトモ・カケとやりたい放題。自分とお友だちのためだけに国民を窮乏させた。

 

 2019年9月に行なった、安倍晋三のスピーチをご紹介しやう。

 

「ウラジーミル、会場の皆さんは、今回の私たちの会談が27回目だったことを、御存じないかもしれません。そこはよく知っていただく必要がありますね」

「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう…ゴールまで、ウラジーミル、二人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか。歴史に対する責任を、互いに果たしてまいりましょう」

 

 安倍晋三よ、今こそ君の出番だ。世界が君を待っている。27回も会ってきた親友ウラジーミルを説得し、「歴史に対する責任を、互いに果たして」世界の未来を開くのだ。もっともロシアでは、相手に愛称で呼びかけることはあっても、ファーストネームで呼び合ふ習慣はないんだが…。

 

 プーチンは出口を探り始めている。それが現れたのが、ロシア国営放送局の「NO WAR」事件だ。4日前、ニュース「生放送」中のアナウンサーの背後に「NO WAR」と書いたプラカードを掲げた女性が現れた。しかし、アナウンサーは何事もないかのやうに、原稿を読み続けている。これは変だ。

 

 実は、ロシアにはニュースの生放送はない。放送は収録の8分後だ。だから、このやうな「ハプニング」は起こりやうもないのだ。とすれば、この事件は何らかの意味で仕組まれたものだと考へられる。

 

 そもそも国内向け放送なのに外国語を書いたプラカードを掲げている時点で、不自然さを感じる。その下には、ロシア語で「戦争をやめろ。プロパガンダを信じるな」と書いてある。これはプーチン政権が意図的に仕組んだものではないか。

 

 ロシアの国営放送で戦争反対の映像が流れれば、これは世界中に報じられるだらう。そのとき、プラカードのタイトルがロシア語だったら、ほとんどの人々は何が書いてあるか分からない。だから英語でなければならない。しかしこれだけでは、本来の視聴者であるロシア国民に、何のことやら伝はらない。だからロシア語の説明が付いているのだと考へられる。

 

 では、プーチンは何のためにこんな演出を仕組んだのか。

 

 プーチン自身が戦争を止めたがっているのだ。止めるには、まづ勝利を願っている国民に静まってもらふ必要がある。その上で、ウクライナと停戦交渉をし、何らかの妥協を探ることになる。狙ふは、ウクライナのフィンランド化だ。

 

 フィンランドは、ソ連との戦争で領土の一部をもぎ取られたが、国家としては独立を保ち、ソ連に吸収もされなかった。ウクライナも、東部ドンパス地方とクリミア半島をロシアに割譲して独立を保つことで停戦に合意する、とプーチンはみているのではないか。これならば、プーチンもロシア国民に勝利を宣言した上で撤退できる。

 

 いや、何でもいいから早く戦争を止めろ。人々に安心できる生活を返してもらひたい。

 

 

 さて前置きが長くなってしまったが、前回の続き。「2022早春、山陰への旅」最終回だ。今回は、青春18切符で鳥取から近畿・東海地方を抜けて横浜へ帰り着く。

 

 3月3日、午前5時、とりあへづ鳥取から滋賀県米原までを検索すると、岡山へ出るのが最も早いらしい。鳥取駅午前5:17発、南に進む。智頭、津山で乗り換へる。いまどこを走っているのか検索したいのだが、Wi-Fiに繋がるワケもないので、地図がなかなか開かない。充電してから丸一日が経過して居るので、バッテリーも少なくなっている。閉じるしかない。スマホは便利…ぢゃない。

 

 とにかく中国山地を越ゑて、9:10岡山に着いた。この先は相生、姫路…え?姫路!姫路城が見られる?このまま進めば米原は13:23着。だいぶ余裕がある。姫路城を検索すると、駅から近い。よし、行かう。

 

 姫路の先は大阪から米原だが、この際、前から見たかった金閣か法隆寺も見たい。検索すると、金閣はJRの駅から遠いが、法隆寺は近い。よし、こっちも行ける。1日で世界遺産を二つ回る豪華な旅になるぞ。

 

 

 岡山9:18発、相生を経て姫路10:44着。滞在時間は40分強しかない。ザックを400円のロッカーにしまひ、急ぎ足で遠くに見ゑる姫路城を目指す。駅前大通りを北へまっすぐ、10分程も歩くと、着いた。カネもヒマもないので入れないが、写真だけ撮っておかう。

 

 

 駅に戻る。姫路11:27発、20分程で明石駅を通過。北側の丘にSEIKOの大きな時計塔がある。日本標準時の街を象徴しているのだらう。検索したいがバッテリーが残り少ない。スマホは…便利ぢゃない。

 

 

 一つ気付いたことがある。電車の窓が閉まっている。こちらの人は換気しないのか。首都圏の電車は、夏も冬もどの窓も上を開けて走っているんだが。

 

 大阪で乗り換へ、法隆寺駅13:22着。1時間ちょっとで戻らねばならない。400円のロッカーにザックを入れ、観光案内所で地図をもらって歩き出す。20分程で着いた。ここでは1500円も取られたが、外から見えないので仕方がない。

 

 

 

 五重塔と金堂の右奥に宝蔵院がある。「東京ドーム…個分の広さがありますから、ゆっくりご覧下さい」って、そんな時間はない。東の夢殿まで遠かった。5分も歩いた

 

 南門まで戻って更に西の藤ノ木古墳を探したが見つからづ、大急ぎで駅へ戻る。と、駅に入る小道を間違へたらしく、駅が見つからない。ピンチ!歩いていた人に道を聞いて、何とか間に合った。

 

 ロッカーからザックを出し、ホームへ下り、まだ1分あったので、自動販売機でアイスクリームを買った。歩き続けて暑かったのだ。電車が来た。え?あっちのホーム!降りたホームは反対だった。重いザックを背負って階段を駆け上がり駆け下りる。間一髪、セーフ。

 

 再び大阪で乗り換へ、米原16:54着。もう大丈夫。午前0時を回る頃、帰宅できる。米原17:00発の豊橋行きに乗り込む。あれ?ポケットが軽い…財布がないのだ!え?え?そんなバカな!でも現実だ。

 

 発車時刻だ。このまま乗っていけば帰れるが、たとへ後で財布が発見されても、ここへ取りに来なければならない。青春18切符で?そりゃ笑へる。って、笑ってる場合ぢゃない。車掌さんが「乗らないんですか」「乗りたいんですが、乗れないんです…」

 

 改札の駅員に相談する。「さっき大阪方面から来た列車の一番後ろの方に乗っていたんですが、財布を落としたやうなんです」「ちょっと待ってて下さい。いま清掃員に連絡しますから」財布の特徴などを伝へ、待つこと数分。「よく似たものが見つかったやうです」

 

 係の人がやってきた。その手に握られているのは…まさしく我が財布であった。神様仏様駅員様ぁ、有難う御座いました。

 

 駅員さんたちにお礼を述べ、帰る方法を教ゑてもらふことにした。もはや新幹線に乗るしかないが、新幹線に乗る区間を出来る限り短く、各駅停車にのる区間をなるべく長くして、今日中に東海道線の大船に着ける旅程を、駅員さんが5分も掛からづ割り出してくれた。「これで帰れます。お気を付けて」

 

 丁寧にお礼を申し上げて、新幹線の切符売り場で切符を買った。料金3630円。所持金が殆ど尽きてしまった。米原17:33発、名古屋18:02着のこだま744号に乗り込むと、速い速い!あっといふ間に名古屋に着いた。降りる寸前、スマホの充電ができたことに気付いたが、後の祭りだ。

 

 ここから、さっき米原で乗れなかった列車に乗って予定通り乗り継げば帰れる。名古屋18:10発、豊橋行きに乗った…ハズだった。疲れが出たのか、ウトウトしていると、アナウンスが聞こゑる。「終点の大垣です」ん?大垣…え、ええっ!し、しまったぁ、名古屋で同時刻発の反対行き方向に乗ってしまったんだ。もうちょっと進むと振り出しの米原へ戻ってしまふ、といふ場所。完全に裏目に出た。

 

 覚悟を決めて、すぐにコンビニを探してキャッシュカードでカネを引き出す。手数料が掛かるが已むを得ない。駅へ戻ると切符売り場でさっきと同じお願ひをする。新幹線を出来る限り短く乗る旅程を考へてもらふのだ。スマホはもうバッテリーが切れて死んでいる。カラータイマーが消ゑたウルトラマン状態だ。

 

 駅員さんは若い女の子だったが、コンピュータと時刻表の両方を使ひ、10分程も格闘して割り出してくれた。その紙には大垣19:23発とあったが、一本早い19:08発に乗り、豊橋20:39着。ここには市電が走っていることを思ひ出した。ワシは市電が大好きなのだ。まだ時間がある。見に行かう。

 

 駅前のデッキに出ると、あった、古風な電車が出て行くところだった。写真…が…撮れない。スマホはただの素アホになっている。

 

 駅の食品店街が閉店時刻間際の5割引になっていたので、弁当を買った。壁の時計をふと見ると発車時刻の1分前になっている。絶体絶命だ。お終ひか!改札口に走る。あ、2分前。なぁんだ、あの時計が早かったんだ。時刻を教へてくれるハズのスマホは死んでいる。

 

 豊橋20:57発、浜松21:31着。ここで新幹線に乗り換へる。浜松22:06発、小田原22:52着、ひかり668号。料金6800円。ホームで待っていると、通過して行く列車の轟音が響く。のぞみ号だらうか。ハンパでない速さは、爽やかさよりも恐ろしさを感じるほどだ。

 

 今度はスマホの充電もでき、弁当も食べながらの快適な小一時間、今回の経費を計算した。当初の予算よりも7000円ほども節約できたハズだったんだが、逆に新幹線で1万円以上も遣ってしまった。原因は、スマホに頼り過ぎたことにある。

 

 スマホは電気がなければ動かない。やはり紙ベースの情報源を持っていなければ、いざといふときに困る。知らない場所では地図がないと、何処に居るのか、何処に向かっているのかが分からない。紙ならば、何枚も比較しながら見られるし、赤ペンで印を付けることも出来るが、スマホにはそんなことは出来ない。スマホは紙の代はりにはならないのだ。

 

 もう一つの敗因は、予定をギリギリに詰め込んだことだ。アクシデントがあったとき、変更が効く予定を組んでおくべきであった。

 

 真っ暗で富士山も見られなかったが、小田原で新幹線を降り、東海道線に乗り換へて、後は順調に午前0時過ぎ、無事に帰宅した。なかなかにスリリングな旅であった。

 

 「2022早春 山陰への旅 全四話終了」

 

(2022年3月19日 第157号お終ひ)