それは、壮大で雄々しくもあり、
母のような包み込む優しさもある。
そこは恰好の子供たちの遊び場
にもなって
無数の葉を青々と茂らせ、
年間を通して緑の葉を落とさない。
それが三宅島特有の
「照葉樹の森」を形成している。
三宅島の森を構成する、スダジイの巨木
しかし、それが三宅島の一部では、こんな姿に変わり果てる。
火山ガスの二酸化硫黄で葉が枯れてしまって、
ガスで木を腐らせる微生物もやられてしまって、
倒れて腐ることも出来ず、
白骨化のまま、立ち尽くしている。
そんなある意味残酷なようにも見えるこの光景。
しかし、これも自然。
その中でまた森はいつの日か蘇る。
その凄まじさとたくましさ。
それを肌で感じられるもの、魅力。
* * *
むかし、自分も木に登っちゃうようなやんちゃっ子だったころ。
トトロの森って呼んでる森があって、
そこには大きな大きな木(クスの木じゃなくて椎の木だけど)があって、穴があって、
呼んだら、トトロが出てきてくれそうな森だった。
木の上に登って見える景色や、感じる風が、
自分を強く思わせてくれるような気がしていたのを覚えている。
ネコバスのように早く走れて、高いとこから飛び降りれるかも、と。
でも、飛び降りたら痛い目にあっただけだった。
トトロに会いたくて、椎の実を一生懸命拾って集めた。
笹の葉も大きめのを取ってきた。
けど、どうしても、“竜のひげ”が見つかんなくて。
ってか、それがどういうものかもわからなくて。
親にせがんだら、釣り糸を渡されたが、それじゃ違うんだ、ダメなんだ、
と、ものすごく悔しい思いをしたのを覚えている。
トトロには会えなかったけど、自分で椎の実を土に埋めて、芽を出して
トトロの森をもっと大きくしようと考えた。
芽が出るように、傘を振り回してみたりして。
そして、ちゃんと芽が出た。
それにもう満足して、そのあとの芽を見守ることはほっぽちゃったけど。
トトロは森を守る森の精なんだって思うことにして。
三宅の森には、ちゃんと実を植えて、芽を出すのを手伝う役割を
担っている生き物がいることも知った。
トトロと生き物たちが森に生きている限り、三宅の森は生き続ける。
今もその椎の木は、島のどこかで、大きく育っているだろうか。
そして、また新たな実が土に埋められ、
芽を出しているんだ。