ひとりで、ふらっと立ち寄った飲食店の話を描く、「リアル孤独のグルメ」シリーズの第7回目です。これまでの記事は、こちら下矢印

 

 

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ふと思い立って、東京都中央区の佃島へ行ってみたくなった。

 

高校生のころ、佃例大祭の写真を撮りに行った想い出がある。もう半世紀前。その当時は、あちこちの祭りの写真を撮りまくっていたものだ。重く武骨なアナログの一眼レフと望遠レンズを入れた撮影用のショルダーバッグは肩に食い込む重さだった。あのころの熱意は、今思い出しても輝いていたと信じられる。

 

佃界隈を散策していると、いつのまにか午後になっていた。

「腹が……減った…」唐突に空腹を感じたのだ。よし、店を探そう!

 

 

そんなわたしの前に、文句のつけようがない店構えの食堂が現れてくれた。こんなラッキーなことってあるのだろうか。きっと今日の星占いは第1位だったに違いない。

もう迷うことなく店に入った。

 

 

和洋中とりそろえている街の食堂だった。

 

 

家庭のような雰囲気。かなりの老舗と見た。

 

 

このスイングドアの年季の入りようは、5年や10年の歴史ではないだろう。

間違いのない店を選んだ自分に誇らしくなった。

 

すると、わたしの背後に座った客は、「瓶ビールとハムエッグ」と注文。おっと、おぬしなかなかやるではないか、かなりの常連と見た。

負けてはおれぬ、とわたしはメニュー表の隅々まで目を通した。そして発見したのが、「鍋焼きうどん」。

 

もう数十年という単位で食べていない料理。幼いころ、わたしが風邪をひくと、母が近所の蕎麦屋から鍋焼きうどんの出前をとってくれていたのものだ。風邪をひくとまた注文してくれるのかなと楽しみにしていた。ほかにも、風邪をひくとリンゴのすりおろし、あたたかいカルピスも定番だったことを思い出す。

 

 

ひさしぶりにお目にかかるこの景観。海老天は欠かせない。ナルト、卵、ほうれん草も欠かせない。子どものころに食べた鍋焼きうどんは肉が鶏肉だったような気がしたが、この鍋焼きうどんは豚肉。それもいい。

 

なつかしい、そしておいしそう。

 

さて、どこから攻略するか。まずはつゆを飲んでみる。うん、いい味だ。化学調味料感が少ないのがいい。そして、うどんをすすってみる。ほどよいコシといい感じのやわらかさだ。これはうまい。さて、海老天を食べてみよう。海老天がない鍋焼きうどんなんて、はんぺんのないおでんのようなものだ。くたくたの海老天。これがまたいい。1/3くらい食べて、またうどんを食べる。ほうれん草も追加してみよう。そしてつゆを飲む。シイタケも入っていて、いい脇役になっている。そして、またうどんを食べる。長ネギもシイタケと同じくらい、いやシイタケ以上の名脇役かもしれない。そして、ほうれん草とうどんを同時に食べる。おっと、ナルトも味わわなければ。と、このあたりでようやく薬味のネギを投入する。最初から入れるのは野暮だ。まず鍋焼きうどんの概要を味わってからの味変で薬味を入れるのがわたし流。さて、そろそろ中心の卵に挑もうとするか。白身を食べてから中心の黄身へと進む。その間に、もちろんうどんもつゆも同時に口の中へ放り込む。おやおや、ずいぶんと待たせたな豚肉君。次は君を味わわせてもらおうか。うん、うまいぞ!主役の海老天の残りをうどんといっしょに食べて、残りのほうれん草、長ネギ、シイタケも平らげた。残ったうどんとつゆも完食。満足だ。すばらしい舞台芸術を味わったような満足感だけが残った鍋焼きうどんだった。

 

 

店を出て、もう一度お店ののれんを振り返って見た。今度、こちらのお店に入ることがあったら、「瓶ビールとハムエッグ」と注文してみたいと思った。

 

 

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