ひとりで、ふらっと立ち寄った飲食店の話を描く、「リアル孤独のグルメ」シリーズの第3回目です。これまでの記事は、こちら
実にひさしぶりに行ってみたくなった「あおき食堂」。ずいぶん昔からある、多くの川口市民に知られている昭和レトロの食堂だ。
実際に食事したのは、正確な記憶ではないが7~8年前かもしれない。たしか、そのときに食べたのはナスの味噌炒め定食のようなものだった。文句なしにおいしい定食だったという記憶がある。水を持ってきてくれた接客のおねえさんに、「ビールじゃなくていいの?」と声をかけられて失笑してしまったっけ。
実は3年前にもこの店に来たことがある。というのは、この店内が映画『車線変更』のロケで使われ、わたしもエキストラとして厨房内で調理している雰囲気の演技で出演したことがあったからだ。ほぼ後ろ姿という映り方だったが、あとで実際の映画を観ると、我ながらなかなかいい動きじゃないかと満足できた。日常的に料理を作っているという経験がそのまま生きた動きになっていたので娘たちにも自慢してしまった。
さて今回ひさしぶりに入店してみた。店に入るとすぐ右手にある手洗い場で手を洗うように言われ、そのあとにアルコール消毒をするという徹底ぶり。手を洗っていると「お茶にする?水にする?」と聞かれた。今回は「ビールじゃなくていいの?」ではなかった(笑)。
メニューが多い典型的な定食屋さん。揚げ物が多いようだ。
店内は4人がけのテーブルが4つあり、座敷にも4つのテーブルあった。
さて、何を注文しようかと思案。昨夜、残り物で夕飯だったが、コロッケを1品追加しようと思って、近所のスーパーに行ったら見事に売り切れ。そんなせいもあって、コロッケを食べたい舌になっていた。
グルッと見回すと、「メンチカツとコロッケ定食」があるではないか。さらにメンチカツという文字を見ると、見た途端に「食べたい!」という条件反射が起こるという体質になっているわたしなので、今回はこの定食を注文した。
メンチカツは実際に自分でも作るが、街を歩いていて肉屋さんを見つけると、まずメンチカツを1枚買って食べながら歩くという性分になっている。なかなか和牛を使っている肉屋は少ないが、そんな店にめぐり会ったらラッキーだ。
しかし、注文したあとに入口近くにあったホワイトボードに気づいた。その日だけのおすすめメニューが書いてあって、ちょっと待てよ、こっちを注文したほうがよかったかもしれないと思ってしまった。というのは、手仕事がより多く加わっている料理のほうが、その店の良さがわかるはずだと思うからだ。次回来るときは、このメニューから絶対に選ぼうと心に決めた。
そして、絵に描いたような見事な「メンチカツとコロッケ定食」の到着。
しかし、ごはんの量が多い。「ごはんは、普通にする?、大盛りがいい?」と聞かれたので、普通と答えたが、一般的なごはん茶碗に山盛りにして2杯分はある量だ。
味噌汁の具は大根の千切り。自宅の味噌汁のような安心できる味わい。コロッケは、ごく普通のコロッケで、メンチカツもごく普通のメンチカツ。だがしかし、それでいいのだ。いや逆にそれであるから安心できる定食屋という立ち位置で、また何度でも訪問したくなる定食屋になれるのだと思う。
いやしかし、さすがにごはんは多かった。これで大盛りにしたらどんな悲劇が待ち受けていたことか。うしろの夫婦客は、「生卵もらえますか?」と頼んでいた。おそらく、ごはんが余りそうでその対策だったのかもしれない。
ごはんの減り具合とコロッケとメンチの減り具合が同じになるような戦略で、口いっぱいにほおばりながら格闘。ときおり、たくあんを挟んで、味噌汁でひと息つく。途中から、‟ごはん多め口内投入計画” に変更して、最後の最後は、メンチひと口分とごはんひと口分までたどり着いた。そのメンチとごはんをほおばって、最後にほんの少し残しておいた味噌汁をすすって、お椀の底にへばりついていた大根の切れ端1本を箸でつまんで口の中へ。
こうして、「メンチカツとコロッケ定食」に勝利したわたしだった。
わたしは腹いっぱいになって店をあとにした。近いうちにまた来るだろうなと思いながら店を振り返り、写真を1枚撮ったわたしだった。
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