以前このブログでも書きましたが。汐見夏衛氏『あの花が咲く丘でまた君と出会えたら』を読んで号泣して→阿川弘之氏の『雲の墓標』を読み返して→阿川弘之氏の傑作『暗い波濤』を読んで衝撃を受けるという、読書遍歴をしている今年。阿川弘之氏の海軍関係の小説はまだまだあるので、いろいろ読んでいるところ。現在は『井上成美』を読んでいるところです。この『井上成美」も、なかなかすごい内容ですわ・・・。

 

海軍に興味を持った私は、海軍関連の映画を見てみようと思い、そういえば、田村高廣が好きなのに彼が出ている『トラ、トラ、トラ』を見たことなかったなあと、アマゾンプライムビデオで300円でレンタルできると知り、見てみたのです。

1970年制作の映画ですから、古臭いのだろうなあと思って見たのですが。

今まで見た事のある海軍関係の映画といえば「山本五十六」「連合艦隊」ですが、円谷さんが頑張って特撮しているけれど、やっぱり今見ると、かなりのミニチュア感・・・。

 

『トラ、トラ、トラ』はアメリカ制作映画だけど、1970年だからCGもないし、まあ、やっぱりミニチュアですかねえと思って見たら。

とんでもなかったです・・・。

実際に戦闘機が空母から飛び立ち、ハワイを飛ぶ。

リアルに実写。

さ、さすが、アメリカだ・・・。ド迫力。

 

1941年12月の真珠湾攻撃の前の日米の駆け引きと、真珠湾攻撃をする日本海軍と、油断していたアメリカの在ハワイ海軍。真珠湾攻撃の日米の攻防を描いた映画。「トラ、トラ、トラ」は真珠湾攻撃時、日本の攻撃機が奇襲攻撃成功を伝える電信の暗号略号で「ワレ奇襲二成功セリ」の意味。

 

この映画、原作も監督もアメリカ人なんですよ。私はまずそれにびっくりです。アメリカが制作したのに、日本海軍のことをすごくフェアに描いていて、かつ、結構リスペクト目線で描いている。一方、アメリカ海軍の方は油断しまくっていて、なおかつ、ハワイを日本軍が攻撃したら開戦にアメリカの世論を持って行くことができるという大統領府の策略めいた話も描かれていて、これって、本当にアメリカ側が制作した映画なのか!?とびっくり。1970年ってことは、1945年終戦から25年。戦争の記憶がすごく昔ってわけでもない。それなのに、自国批判、対照的に日本海軍よく頑張りました的なアングルで、よく映画作ったな、20世紀FOX・・・と、私は、まず、アメリカのフェアプレー精神にびっくりしました。

 

そして、田村高廣が淵田美津雄海軍中佐(赤城飛行隊長)を演じていて、この人が真珠湾攻撃の攻撃隊を率いて飛んだのですよね。田村さん、かっこよかったわ~。

ちなみに山本五十六は山村聡。

 

この映画の何がすごいって、戦闘機のシーンです。CGではない、ナマの迫力。朝焼けの空に空母から次々と真珠湾目指して飛び立つ戦闘機の美しさ。そして、ハワイ上空を本当に飛んでいる戦闘機群。いえ、私は戦争を肯定しているわけではないですが。この迫力の戦闘機シーンは息を呑むものがあります。

ローランド・エメリッヒ監督の2020年映画「ミッドウェイ」も見ましたが、あれはCGすごくて戦闘機の逆落としシーンがド迫力なのだけど。それとは全然違う、実際の戦闘機の迫力が、「トラ、トラ、トラ」にはあります。

見て損なし!

 

最後に真珠湾攻撃に成功した山本五十六が、喜ぶどころか沈痛な面持ちになり「アメリカという獅子を起こしてしまった・・・」とつぶやくのですが。このエンディングはいろいろ考えさせられる深みのあるものだったと思います。

 

しかし、どう見ても、日本海軍リスペクト的な内容で、なぜ20世紀FOXは、リチャード・フライシャー監督は、この映画を撮ったのだろう?アメリカ人なのに。

案の定、アメリカでは公開当時大問題になり、議会でもただで空母を撮影に使ったとかでいちゃもんつけられたそうです。アメリカでは興行的にも失敗。そりゃそうだろう~と思いますよ~。当時映画を見たアメリカ人はなんだこれ?って思ったと思います。

でも、日本ではヒットしたそうです。

1970年のアカデミー視覚効果賞獲得。

 

ちなみに、日本海軍の歴史を多少知っている人なら、「南雲め~」と恨めしく思う南雲忠一海軍中将は水戸黄門さま、いえ、東野英治郎が演じています。

 

私は、別に、右寄りではないし、戦争賛美者でもありません。

ただ、あの戦争の頃の苦しみや誤りをよーく覚えておかないといけない、大昔のことだと忘却の彼方に追いやってはいけない、と思うわけです、世界で2つの大きな戦争(ロシア×ウクライナと、イスラエル×ハマス)がリアルタイムで進行している今は。

日本もまかりまちがうと、台湾有事とか、ロシアの侵攻とか、するっと戦争の中に巻き込まれてしまうかもしれない恐怖。

第二世界大戦で、日本の政治家や軍(陸軍も海軍も)がどういうことをしてきたか、どういう風に戦争に国を引っ張っていったか、メディアがいかに戦争高揚の片棒を担いだか、そしてその結果日本人たちがどうなったかということを忘れてはいけないと思うわけです。同じような、誤った思考経路や決断プロセスを絶対にしてはいかんと思うわけです。

 

そういう意味で「トラ、トラ、トラ」は、ただ勝った、負けたではない、非常に考えさせられる、見応えのある映画でした。

これがたった300円でレンタルしておうちで見られるって、テクノロジーの進化に感謝だわ。