耳に穴を開ける。


 謎だ。


 なぜ、耳に穴を開けて、金属をぶら下げるのか。重たくないのだろうか。耳たぶが可哀想ではないだろうか。





 当然自分ではやらない。


 だけど今日利用者さんが言った。

 「ピアスを付け替えたいの。やってくれない?娘が今日来る予定だったからやってもらおうと思っていたのに来なくなっちゃたから。」


 うん、まあそのくらい良いけどさあ。

 

 どーやるん?


 「えーなにこれ!まわすの?引っこ抜くの?」「引っ張るのよ!」「取れなーい!」


 人の耳元で大騒ぎしながらはじめての「ピアスを外す」というミッションを頑張ってみる。


 「取れたよ!」「下のやつ取った?」「え、上の取った。」「下だけ取るのよ。」


 は?先言えし。上下2つ刺さってるやつ両方取るんかと思ったやんけ。なんだよと思いながら上を差し直す。


 深爪を極めているため細かい部品を取るのが難しい。なんとかピアスを収穫。画鋲みたいに先が尖っていて危険物である。


 耳たぶって痛覚無いんだっけ。痛覚が無いとしても穴なんか開けられたら痛そうである。


 「これ、オーダー品よ。」と言われる。

 へぇー。宝石とか良くわからんが確かに高そうである。






 「かわりにこれを付けて」と言われた別のピアスを取り付ける。長っ細くて先っぽになんだか丸い球が付いていて重たそうである。



 「こんな垂れ下がったやつ付けて耳たぶは無事ですか?」と聞きたくなるのを我慢してピアスを取付ける。「出来ましたよ!」と言う。


 うん、確かに煌びやかになったぞ。利用者さんも喜んでくれたことだし良しとしよう。


 だがしかし、謎である。どうしてわざわざ人は耳たぶに穴なんて開けようと思うのだろうか。イヤリングならなんとかわからなくもないがピアスは流石に良く分からない。


 ピアスの穴というのは放っておくとふさがるらしい。身体が言っているわけである。「こんなところに穴なんて開けるなよー!」


 「あら、どうもありがとう。お茶でも淹れるわね。」


 とかやっているうちに、時間がヤバい!次の家遠いんやで。訪問で色々余計なことをすると後が大変なんや。お茶飲みに来たんじゃないんだわ。しかもおばあちゃんだから危なかっかしいのよ。落としそうな勢いで熱湯の入った急須とか運んでくるじゃん。


 急いで(でも急いでいる素ぶりは見せずに)お茶を飲み、「ありがとうございました!」と言って家を出る。


 次の家まで全力で向かう。しかし、私がどれだけ願おうとも道路状況というのはコントロール出来るものではない。踏切とかいう強敵を突破して、前を法定速度で走る車に「頑張れ!もう少しはやく!はーやーくー!頑張れ!その角で曲がれ!よっしゃ曲がったー!」と叫びながら、次の家に向かう。流れが滞った道で私が出来る努力はおっそい車を全力で応援することだけである。


 ちなみに今書いていて気づいたが、前の車を応援するよりも先にするべきことは、何でもかんでも余計なことをしてあげてしまうお人好しをさっさと辞めることである。


 まあいいや。


 急いでいる時の信号とはとてもイラつくもので。「おい、はやく青にしろー!」と叫んでみたところで何も変わらない。信号はきっと応援してもムダであるが、おっそい車は応援すればもしかしたらもう少しだけでもはやく走ってくれるかも知れない。


 数台前が遅ければ、そのおっそいやつに向かって念を飛ばす。「おい!頑張れよお。頼むから!」




 まったく困ったことに、最近運転が楽しくない。仕事で一日中移動していなくてはいけないのが辛い。運転に飽きた時が今の仕事の辞め時だとは思っていた。あと1ヶ月半だけ頑張れと自分に言い聞かせて、今日もガソリンを消費する。CO2で地球が汚れていく。


 頑張れ地球🌏

 頑張れ人類💂🏼

 頑張れ前の車🚗


 いや、違うな。お前がいちばん頑張れよ!


 どう考えたって、いちばん「頑張れ」と言いたい相手は基本的にやる気が欠如している自分である。


 何かにつけて「頑張れ」とうるさい世の中である。そんなに頑張ったって、たいして結果は変わらない。頑張らなくてもなんとかなる。だけど少々ぼーっと生きすぎて。お人好し過ぎて。困ったことも度々起こる。


 やる気を少しだけで出して、でもそんなには頑張らないで、お人好しをやめて、私はこれからもテキトーに暮らします。


 眠たくなってきたからブログはこれで終わりにしよう。

 

 じゃあねー人類。また明日🌔