12月も半ばを過ぎたので、今年一年を振り返ってみようと思いました。

 

まだ年末最後の大仕事COUNTDOWNJAPAN2021への出店も控えているし、年賀状は作ってないし、今年を振り返るにはやり残していることが多過ぎますが、今書かないと多分来年末まで書かないと思ったので、この前代未聞の1年を記録する為にも少し長文になる事をあきらめながら振り返ってみます。

 

今年は私の生きてきた中で最も大きな変化の中を生きた1年でした。

 

当然ながら、経営している餃子専門店夏目家も創業15年の中で初めて遭遇する前代未聞の1年でした。

 

 

2020年1月。

 

昨年末からのCOUNTDOWNJAPAN1920の出店を無事に終え、少し長めの正月休みを取り、

 

新城市長篠に構える「なつめや新城店」の営業を始めました。

 

店内のテレビでは海外の出来事として未知の感染症のニュースが出ていましたが、まさかこの時、これが理由で数か月後にはこの店を閉める事になろうとは思いもしませんでした。

 

1月下旬に国内初の感染者が出ると、程なくしてダイヤモンドプリンセス号での船内感染者が話題となり、国内に上陸させるのかさせないのかと言う議論がワイドショーで連日繰り広げられていました。

 

この頃から日本中に他人ごとではないという空気が漂い始め、私の住む地方でも、

いつ感染者が確認されるのかは時間の問題となりました。

 

そしてこの時、家族に対し一度真剣に今後の事などを話しました。

 

 

3月には更に事態は悪化しており、毎年行われている新城のさくらまつりの開催を危ぶまれる声が出ていました。

 

 

 

 

既にポスターは張り出されており、当店でも掲示していました。

 

春になると、新城や長篠辺りはとてもいい観光名所が沢山あり、お客様も増え始める頃。

しかし、結局このさくらまつりは開催されることはありませんでした。

 

桜まつりは中止になっても桜は満開になりました。

誰にも見てもらえなくても、それはそれは見事な桜が当店の前でも咲き誇りました。

 

 

 

そしてちょうどこの頃、サービス業として飲食店を続けて行けるのかと言う大きな問題が立ちはだかります。

 

世論やワイドショーでは、お酒を提供する店や夜営業する店に対するバッシングが起こっていました。

 

そして、さらに外食そのものが感染拡大の原因とまで言われ始めました。

 

 

商売をやっていて一番の喜びはお客様から頂く「ありがとう」です。

 

いいサービスを元気いっぱい提供すれば沢山のお客様が集まり、沢山「ありがとう」と言って頂ける。

飲食店はそれを目標に商売を続けて行けます。

 

しかし、この頃には「営業するな」「こんな時期にお客が沢山集まる店を開けるなんてけしからん」と言う風潮が大きくなってきます。

ニュースでは店の前に張り紙で嫌がらせをされたり、店を破壊されたりなどという事件も報道されました。

頑張れば頑張るほど批判されるという状態で飲食店を営業するのは何とも言いようのない憤りを感じていました。

 

幸い、なつめや新城店に通ってくれるお客様は地元の常連さんが多く、気をつけながらもいつも通り通ってくださいました。

 

更に、都会や街中は人が多いからと、新城方面へ田舎の綺麗な空気を吸いに来るという観光客も急増し、店はかなり盛況でした。

 

このままコロナが収束して行ってくれれば大きな痛手は無くやり過ごせるかもしれない。

 

まだこの時はそんな風にも感じていました。

 

 

そして4月下旬、愛知県独自の緊急事態宣言が発令されました。

 

その翌日から、それまで多くのお客様で賑わっていた店内からお客様が消えました。

 

県や政府の呼び掛けに従い、殆どの方々が外食を自粛したのです。

 

緊急事態宣言下に於いてランチ営業の自粛は強制ではありませんでしたが、

政府の指示に従ってお客様が消えたわけですから、この状況下で

「頑張って営業しています!皆さん来てください!」とは言えませんでした。

 

 

 

結局、この告知をして休業に入ってから、もう一度店を再開する事はありませんでした。

 

5年間支えてくださった常連さん達にお礼も言えず、最後の一皿を提供する機会も作れませんでした。

 

 

何が正しくて、どうするべきなのか。

どこにも答えは見つからないし、誰も正解をしらない。

ただ一つ感じた事は、

前代未聞の出来事が起きた時は、前代未聞の決断をする必要がある。

という事でした。

 

とは言え、やはり最後に常連さん達にはお礼を言いたい。その気持ちは日に日に大きくなり、

閉店する店で「ガレージセール」を開催しました。

 

 

この1日限りのガレージセールには口コミだけで本当に多くのお客様が来てくれました。

 

この日はスタッフも制服ではなく私服で一日中すべてのお客様に挨拶とお礼を言い、お客様からも沢山の嬉しいお言葉を頂きました。

 

 

こうして1月下旬に日本で初めて確認されたコロナの影響で4月下旬にはあっという間に店が無くなりました。

実にたった3ヶ月の間の出来事でした。

 

 

その後、緊急事態宣言は解除され一時的に飲食店全体に活気が戻ったかに見えましたが、12月下旬に入った今、

周りを見ればあの時より更に厳しい状況が続いているように見えます。

 

そんな中、餃子専門店の夏目家は悪い事ばかりではありませんでした。

 

創業当初から力を入れて来た「お取り寄せ」の需要がコロナ禍に於いて増えて来たのです。

 

世間でも外出自粛の流れから「お取り寄せ」や「宅配」を利用する人たちが急増し、TVでも度々特集されるようになりました。

そして夏目家もありがたいことに人気番組「マツコの知らない世界~お取り寄せ餃子の世界~」に取り上げて頂きました。

 

その後も立て続けにメディアの取材が入り、にわかに「お取り寄せ冷凍餃子」のブームが起こります。

 

外食も会食も控えて核家族で家でご飯を食べる機会が増えた事で、栄養満点、冷凍ストック出来る、焼くだけの手軽さ、家族みんなで楽しめる、全国にバリエーション豊かな沢山の人気餃子がある、と言う諸条件がコロナ禍に於いて、注目されて行きました。

 

実際、夏目家の餃子がメディアで取り上げられる際は沢山の全国の人気餃子店と一緒に取り上げられました。

極めつけは先日発売された雑誌BRUTUSにて餃子の特集が組まれ、全国80店の人気餃子店と共に夏目家の餃子が掲載されました。

 

 

 

この餃子ブームのおかげで、飲食店舗を失い、全てのイベント出店が中止という危機的状況の中、夏目家は何とかやってこれました。

 

都会では、UberEatsが急速に普及し、テイクアウトに対応できた一部の飲食店は新しい活路を見つけ出しています。

仲間の飲食店のみんなもそれぞれ大変な中、何とか頑張っています。

 

失ったものは決して小さくありませんが、それでも生き続ける為、

これまでやってきた事を大切にし、今できること、これからのことを考えて進んで行くしかないと思っています。

 

この記事は10年後読み返した時、あんな事があったな、あの時は大変だったな、と

懐かしむことが出来たらいいなと言う願いを込めて書き記しました。

 

非常に舵取りの難しい1年でしたが、名前を挙げればきりがないほど多くの方々に助けて頂きました。

本当にありがとうございました。

 

来年もどうぞよろしくお願い致します。

 

さて、COUNTDOWNJAPAN2021の準備しなくちゃ!

 

 

#餃子アドベントカレンダー2020