いつも乗っている電車でも、座席によって景色が違って見える。
私自身の気持ちにもよるかもしれないけど。
初めて見る様な景色に驚いたり、懐かしい景色に忘れていた事を思い出したりもする。

ふと、夫の事を思い出す。
以前だったら、そこで必ず涙が出て来た。
最近は、そこで泣いてしまう事はほぼ無い。
そんな事に気付く自分にも、時間は流れたのだなと思ったりする。

夫のおかげで色々な経験をさせて貰った。
特別な事では無い。
当たり前の日常。
そんな日常の中にも、夫とふたりだったから経験出来た事が沢山ある。
私ひとりだったら、きっと経験出来なかっただろう色々な事。
神さまが夫と私に送ってくれた、夫が私に送ってくれた大切な時間だった。

自宅から駅まで歩いても数分なのだが、元気な頃の夫はよく迎えに来てくれた。
改札の向こう側に夫の姿を見つけると、やっぱり嬉しかった。
わんこと一緒の時もあった。
今はもう、お迎えなんて絶対にないものね。

私、ひとりになったんだな。
これからずっと…ひとりで生きて行かなくちゃならないんだな。
時々、全ての事が不安に思えてしまう。
どうしよう?どうしたらいいの?と考え始めると、迷路に迷い込んだ様に出口が見つからずにどんどん不安が広がってしまう。
でも、これ以上どうにもならないよね。
夫と死別したと言う事実、この先何が起ころうとこれ以上辛い事なんてある訳が無い。
一番辛い事を経験してしまったのだから。
不安に思う事なんて何もない。
こうなったら、私は無敵かもしれない。

と…電車の中で夫の事から自分の人生まで考えてしまった。
こんな風に前向き?に終わる時もあれば、ずぅーんと落ちてしまう時もある。
気持ちは揺らぐものね。
この頃は日が長くなって、電車から降りてもまだまだ明るかった。
それだけでも何だか嬉しくなる。
さぁ!早く帰って、わんこに「ただいま〜」って抱きしめてあげなくちゃ。