あれは夏の終り頃のこと

バスを降り歩いていると
久しぶりに夕焼け空を見た

ちょっと公園に寄っていこう
ここまで来たら家は近い

私は、夕空を写そうと公園に入った
そこで、私の目に飛び込んできたのは

とても美しく可愛らしい・・・

金色の巻き毛の少女が草むらに立っていた
水色のワンピースが夕風に揺らぎ
花束を両手で胸に抱えている
金色の髪をなびかせ微笑んでいる

妖精・・・まさか・・・⁈
私は、自分の目を疑った
うっとりするほど、キレイ・・・
少女も花束も緑色の草花の背景も

小さな女の子が少女に走り寄る
ピンク色のリボンをつけて金色の髪を揺らし
片手でリンゴをかじっている

妖精が増えた
今、私に何が見えているんだろう・・・⁈


そろりそろり、辺りを見回すと・・・
公園の入り口に長身の女性が立っていた
超スレンダー
ライトグレーのロング丈のワンピースが良く似合う
ブロンドのセミロング
鼻筋の通った端整な横顔
くるくるした毛先が風に遊ぶ


金髪の妖精たちはブランコで遊び始めた
長身の女性は「花束」と「かじりかけのリンゴ」を預かる

時々トーンを変えながら
笑ったり首を傾げたりしながら静かに話している
まるで歌うように


何語だろう・・・。

英会話のようだけど
私の耳には、まるで ちんぷんかんぷん

花束は、公園内に咲いている野花だった
「ヒメジョオン」と「タンポポ」
素朴な野花が華麗なブーケに見えた

しばし、その光景に見惚れていたが怪しまれたくはない
私は公園内の花の写真を撮りに
少女たちが居る位置から反対の方向に歩いた

その時はなぜか・・・
夕焼け空のことを、すっかり忘れてしまっていた

茂みの影に白いタチアオイが咲いていた
私はレンズを向ける
レンズを向ける、と言っても
写真もカメラもまったくの素人
奥の花壇には「キバナコスモス」
溢れそうにそよいでいる

後で少女たちに知らせてあげよう

オレンジ色・黄色
かわいいコスモスが
しなるように風に揺らぐ

何枚か写すと私は振り返った

姿がない
少女達がいない
妖精は姿を消してしまった

やっぱり、幻を見たんだ
私はゆっくり公園内を見回した。

うふふ・・・♪
まぼろし
そうよね、妖精がいるなんてあり得ない

私は公園の出入り口に向かって歩いた

ふふふ・・・♪
そうよ、アレはまぼろし

ブランコのそばに近づいたとき
真っ赤なリンゴに気づいた

かじりかけのリンゴがブランコの上にある
少し前まで遊んでいたのか
ブランコは前へ後ろへ
小さく揺れていた

妖精がかじったリンゴ
小さな歯型のついた
真っ赤なリンゴ

ちょっと見入って、リンゴから視線をそらすと
視界の端に柔らかな茜色が見えた

あ、そうだった
夕焼け・・・
私は慌ててシャッターを押す

妖精
いたのかもしれない
家族には内緒だけれど
私には少女達が妖精に見えたのだ
本当に・・・♪