「1人にしてごめんね」

母親が俺に遺した最後の言葉。
その後すぐに意識無くなったから俺の返事は聞こえなかっただろうな。

「あんたが居ても、俺はずっと独りだったよ」

星海の両親がデキ婚する前、あいつの父親とたった一度だけの交わり。それでできたのが俺。
別に不倫でも何でもない、浮気にすらならない。父親にとっては火遊び程度だろう。
それでも私のところに妊娠したなら産んであげたい・・・とか、クソみたいなエゴだなと今でも思ってる。

母親が死んですぐ、母親の姉か妹か名乗る奴に俺は着の身着のまま追い出された。
それからしばらくホームレスしてたっけ。まだ10代くらいで蓮と出会った(多分)

俺より明らかに歳下の癖に偉そうで上から目線で、そんなに貧乏人が珍しいか?ってのが第一印象。

「お前、顔いいから拾ったるわ」

耳を疑ったね。顔いいからって何だよ。

「顔が整ってる迷子を集めてんねん。趣味みたいなもんやで。」

まぁここで野良犬に餌やりながら生きるのも飽きたし近所の住人も疎ましく思ってるみたいだし移動しようと思ってた時だったからついて行くことにした。

俺を連れてって大丈夫なのか?お前もガキだろ?

って質問に蓮は

「大丈夫やで。俺ん所ヤクザやし。」

何が大丈夫か解らない。拾うって舎弟ってことか?まぁどうでもいいか。

実際には俺は本家とは別の住処用意してもらって、たまに蓮が色々話に来たり、たまに親父さんの仕事手伝ったり、その頃だったか全身に和彫り入れたのは。何はともあれ命を助けてくれた蓮に尽くそうと思い、入れた。

それから数年経って、蓮のばあちゃん家には他にも捨て子が複数居ると聞いたり、会って話したりもした。それが那津や愛理や弘也だった。後、信も同じように拾われてあまりにも出来がいいから付き人として本家にいることも知った。

そんなこんなでだらだら暮らしてたある日。

「俺日本あちこち放浪しとるねん。今度四国行こう思うねんけど行かへん?」

その言葉に即答した。
行くなら高知に連れて行って欲しい。

「何で高知?」

その時に俺は蓮に話した。父親の事、結婚して普通の家庭を持ってること。その家庭を壊したくはないが、一度だけ妹らしき子は見たことある事。

他はどうでもいいけど妹だけは気になってる事。

「ほな探そか。もう言葉通じる歳やろし。」

その瞬間嫌な予感が襲った。
そんなロリコンとは思ってないが、念の為に忠告した。頼むからその妹だけは手を出すなと。

「まともに育ってても12歳くらいやろ?ないない。そんなガキ相手にするわけないやろ俺が。」

確かに蓮はそう言った。
だから任せたんだ。ずっと蓮は実直で、俺に対して嘘を言ったりしなかったから。

何故その時、星海に会いたかったのか。
解らない。純粋な愛ではなかった。大事に大事に育てられてる姫様を攫いたかったのかもしれない。殺意が全く無かったと言えば嘘になる。
星海の上には兄が2人居て、待ち望んだ女の子が生まれて、俺が味わったような孤独感なんか全く知らずに可愛がって育ててもらってるんだろう。

そう、思ってたんだよ。

色々とぶち壊してやりたかった。俺の母親はずっと苦労してきたんだ。
星海に会いたい気持ちは、俺の復讐心からだったのかもしれない。だけど僅かに良心が残ってたから蓮に忠告したんだ。蓮が付き合ってた女が、蓮に泣かされてるの何度も見てきたから。

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ここから蓮のターンに繋がるか?繋げられる?出来るよな?天才だし()