思ったより早く解放されたものの、普段出さない大声を出したせいで筋肉を使ったのか、肩から首にかけて重いような何とも言えない感覚を背負いつつ、居室に入る。

 

テレビを見ていた皆が一斉にこちらを向いて、口々に話しかけてくる。

 

「シーさん、中田士長から聞いたよ!入隊式であいさつするんでしょ?」

 

「カッコいいじゃん!頑張ってね」

 

「ウチは親が見に来るんだ~。緊張するわぁ」

 

皆がニコニコと楽し気に話しかけてくれることで、のしかかっていた「えもいわれぬ疲労感」が軽減されたような気がする。

 

「うん、今練習してきた…前途多難だよ…」

 

「大丈夫だって!まだ1週間くらいあるじゃん!シーさんなら出来るよ!」


「ありがと…とりあえず今から暗記だけでもしておくわ」

 

と、ベッドのある部屋へと移動する。

 

 

いつの間にかすべてのベッドが延べ床になっている。私のベッドも、だ。

 

「中田士長が延べ床準備してもいいって言うから、早いけどみんなでやっちゃった」

 

後から来たゆうかが言う。

 

 

「シーさんのベッドもやったよ~。私は見てただけだけどね」

 

延べ床の上に寝転がってマンガを読んでいたりーやんが、ケラケラと笑う。

 

「りーやん!ホント、早くベッド取り覚えてよ!」

 

ゆうかが注意するも、本人は笑ったまま。相変わらずのどこ吹く風だ。

 

感情表現が苦手な私は、「ありがとう、助かるよ」とあっさりしたお礼を言うしかできず、ベッドに上がって挨拶文を眺めながら、(もっとちゃんと喜べばよかった…)と、ひとりでどんよりと落ち込んでしまうのであった。