わあわあ騒ぎながらも何とか皆が縫い物とそのチェックを終え、それらをしまおうとそれぞれのロッカーの前で作業をし始めた絶妙のタイミングで、中田士長が入ってきた。
「よーし、みんな縫い物終わったね!じゃあ次は整頓要領の説明をするよ!」
つかつかつかとジンのロッカー前まで移動し、両開きの扉を開ける。
向かって右側は制服類を掛けられるようになっていて、左側は縦に小さく仕切ってある。
「はい!コレも写真があるからよく見てね!」
開いた扉にマグネットで紙を貼り付ける。ラミネート加工されたそれには、『ロッカー整頓要領』とタイトルが書いてあり、ロッカーの写真とともに、どこに何をしまうのか細かい指示がなされていた。
「ハンガー掛けの制服や作業服は向かって左側が前に向くように掛けてね。左側の一番上は訓練用品を置くから開けておいて、その下はタオル。その下はジャージやTシャツを畳んで入れて、一番下は入浴用品ね」
中田士長が写真の通りに指示をして、皆のロッカーを見て回る。
「あ!コレ一番大事なんだけど、同じものは同じ要領で畳むこと。で、開けた時に一番整って見えるように、畳んで輪になった部分が前になるように収納してね」
逐次メンバーの間違いを正しながら、中田士長が言う。
「コレ、なんで収納場所が決められてるか分かる?場所さえ覚えてたら、暗闇の中でも必要な物がどこにあるか分かるでしょ?いつどんな時に何が起こっても対応できるように、こうやって決めごとをしておくの」
「暗闇で何かを探さなきゃいけない状況」って結構切羽詰まってるよな…とビビりつつ、指定場所にそれぞれを収納する。
「それからコレも大事な事!自衛隊は何でも『水平・直角・一直線』だからね!タオルもシャツも、全ての角をきれいに並べて、正面から見てまっすぐになるようにしまってよ!」
なるほど、全てを整えて並べてみると、それはなかなか気持ちの良い光景だった。皆のロッカーも同じように整頓されている様子を爽快な気持ちになって眺めていると、中田士長が言った。
「OK!ロッカーは終了!じゃあ次は『ベッド取り』をやろうか!」