なかなかショッキングなタイトルで、結婚生活にうんざりした夫がいかにして妻を殺すか考えあぐねるといったサスペンスものかと思いきや、全然そういう物騒な小説ではありません。
ハート・ウォーミングな作品がてんこ盛りの素敵な短編集です。
7つ収録されている一つ目の短編が『妻を殺してもバレない確率』なのですが、政略結婚により好きでもなんでもない女性と結婚させられた男は、空虚な日々を送ります。
そこで、男は毎日のように妻を殺してもバレない確率を調べるようになります。
何をどうやっても高確率でバレるという結果に、ため息まじりの暮らし・・・。
この世界には未来を予測してくれる特殊な装置があり、人々はそれによって未来に起こりうる確率を調べることができます。
とはいえ、トム・クルーズ主演の映画『マイノリティ・リポート』に出てくるような完全な未来予測ではなく、あくまで確率が分かるだけです。
入力する諸条件によっても確率は変わるでしょうし、実際にこうしたものがあれば使い方に迷いそうですが、全編を通してこの装置が小気味よいアイテムになっており、この本を印象深いものにしています。
読み始めた時は、密室殺人やトリック殺人など、趣向を凝らしたサスペンスが展開されるのだとばかり思っていたので、奥さんの言動や男の態度にどことなく掴みどころのなさを覚えていたのですが、一つ目の短編を読み終えて、「あぁ、こういう感じの小説なんだな」って気づきました。
そうして、この本が持つ世界観を理解してからは、残りの6編もとても愉しく読み、読後感も素晴らしくて楽しい時間が過ごせました。
ボーイ・ミーツ・ガールの作品が多いのもポイントの一つです。
若かったあの頃に時を戻してくれます。
『明日、世界が終わる確率』や『空から女の子が降ってくる確率』など、タイトルも目を引くものが並び、最後まで愉しませてくれます。
この作家さんなら、確率を調べる装置がなくても、ハートフルで良質な短編をいくらでも書けそうですが、確率を調べる装置を登場させ、ライトなSFに仕立てているところがこの本の大きな特徴の一つになっていて、どことなく不思議な印象の作品に仕上がっています。
文体の流れも良くて、すごく読みやすいので、気軽に読書の愉しみを味わえる一冊です。
妻を殺したかった男がどうなったのか、空から女の子は降ってくるのか、物語の行く末をぜひ見届けて下さい。

