ユニバース25とは、1968年にアメリカの動物行動学者ジョン・B・カルフーンが行ったネズミの社会実験です

 

カルフーンは、ネズミにとって理想的な環境を作り、その中でネズミの個体数と行動の変化を観察しました。この実験は、人間の社会にも当てはまるかもしれない衝撃的な結果を示しました。

 

実験の設定は次のようなものでした。カルフーンは、9フィート(約2.7メートル)四方の金属製の檻を用意しました。

この檻には、256個の巣箱があり、各巣箱には最大15匹のネズミが住めるようになっていました。

巣箱には、垂直と水平に伸びたトンネルがつながっており、ネズミは自由に出入りできました。

檻の中には、餌や水、巣材などが無制限に供給されており、外敵や病気などの危険もありませんでした。つまり、ネズミにとっては楽園のような環境だったのです。

 

この檻には、4組の健康なネズミが移入されました。

カルフーンは、この檻が満員になるまで、ネズミの個体数と行動の変化を記録しました。この檻の収容可能な数は、3840匹とされていました。

 

実験の結果は、次のようなものでした。

 

最初の55日間は、ネズミの個体数は急速に増加しました。

この時期は、ネズミは平和に共存し、繁殖や探検などの活動を行っていました。

しかし、315日目には、ネズミの個体数は620匹に達し、その後は成長率が著しく鈍化しました。

この時期には、ネズミの社会構造と正常な社会行動が崩壊し始めました。具体的には、以下のような現象が起こりました。

  • 子離れの前に子を追い出したり、子の負傷の増加
  • 同性愛行動の増加
  • 支配的な雄が縄張りと雌の防衛を維持できなくなる
  • 雌の攻撃的な行動
  • 防衛されることのない個体間攻撃の増加と非支配的な雄の無抵抗化

カルフーンは、このような異常行動を「ビヘイビア・シンク」と呼びました。

ビヘイビア・シンクとは、過密状態でのストレスや競争が、ネズミの本能や本来の行動を破壊するという意味です。

600日目には、最後の死産ではない出産がありました。

この時点で、ネズミの個体数は2200匹に留まっていました。

この数は、収容可能な数の半分以下でした。この時期には、ネズミの社会崩壊はさらに進み、個体数は絶滅に向けて減少していきました。この時期には、以下のような現象が起こりました。

  • 雌が繁殖をやめる
  • 雄が完全に引きこもり、求愛動作や戦闘を行わなくなる
  • 雄が健康のために必要なタスクだけに従事する(食べる、飲む、寝る、毛づくろいなど)
  • 雄がつやつやとした傷のない健康的な毛並みを持つ(カルフーンはこれを「ビューティフル・ワン」と呼んだ)

カルフーンは、この実験の結論として、以下のように述べました。

「利用可能な空間がすべて取られ、社会的役割が埋まると、各個体に経験される競争とストレスが複雑な社会行動を完全に崩壊させ、最終的に個体数が終焉を迎える」

カルフーンは、ネズミの個体数の運命を人間の潜在的な運命へのメタファーと捉えました。

彼は、人間の社会も同様に過密化や社会的崩壊によって衰退する可能性があると警告しました。

彼の研究は、多くの作家や研究者に影響を与え、人口問題や社会問題に関する議論を呼びました。

しかし、カルフーンの実験には、いくつかの批判や疑問もありました。

 

例えば、以下のようなものです。

  • ネズミの実験は、人間の社会とは異なる点が多く、そのまま比較できない
  • ネズミの実験は、近交弱勢や遺伝的多様性の欠如などの要因も考慮しなければならない
  • ネズミの実験は、ネズミの本来の生態や環境とはかけ離れた人工的なものである
  • ネズミの実験は、ネズミの個体数の増減に影響を与える他の要因(病気、天敵、気候、資源の変動など)を排除している

以上のように、ユニバース25は、ネズミの社会実験としては非常に興味深いものでしたが、人間の社会に直接適用できるとは言えないものでした。

しかし、ユニバース25は、人間の社会における過密化や社会的崩壊の可能性や危険性について、考えるきっかけを与えるものでした。

 

ユニバース25は、人間の社会の未来を示唆したと言えるでしょう。