高度4万フィートの上空で0歳児を抱っこしながら、うつらうつらと眠っていたほんの10分ほどで、不思議な夢のようなものを見た。
わたしは私を見つめていた。
そして、あの騒がしさと苛立ちは一体なんだろう?と思っていた。
向こう側のわたしは随分と苛立っていた。
またこの場所にきてしまった、と思っているようだった。
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小さい頃から1人の時間が大好きだった。
姉と弟に挟まれた真ん中っ子の私は、三人兄弟の騒がしさを愛していたし、同時に、本当に驚くくらい上手く ひとり になることができた。(特技といってもいい)
周りがどれだけ騒がしかろうが、人がいようが、
すぐに
一瞬で
静寂の真ん中に立つことができた。
お寺で育ったので、仏教のことはまったく知らなかったけれど、定期的にお経と太鼓の音を聞いていた。
小さい頃から繰り返し、くりかえし。
あの時間は
ひとり の中でも特に中心の中心にいた。
宇宙のまんなかのような
自分が宇宙のような。
話が逸れてきた。
私はとにかく
ひとりが好きだった。
子どもを産むことに興味はなかったし、結婚はもっと興味がなかった。
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私が今立っている場所はなんなのだろう、と思う時がある。
時空が歪んでしまったような。
でも私は、決して子ども時代をやり直している訳ではない。
向こう側のわたしは随分と苛立っていた。
また戻ってきてしまった、と。
私は言ったのだ。
「それでも私は楽しむわ。
この騒がしさと、ままならなさを。
戻ってきたわけじゃない。
自分でつくってきたの。
やってみたかったの
チャレンジしてみたかった
私なら、どんなものをつくるのか。
意味はないのよ
意味はないの。」
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そこで目が覚めた。
冷や汗のようなものをかいていた。
隣の子どもたちは相変わらず騒がしくて、すぐに注意したけれど聞く耳を持たない。
周りに客がほとんどいないことに安堵しながら、心臓がばくばくと音を立てていることに気づき、深く深呼吸をした。
沖縄は、あたたかく、湿っていて、少しだけ悲しさもあった。
もうすぐ東京に着く。
旅は終わったのだ。