高度4万フィートの上空で0歳児を抱っこしながら、うつらうつらと眠っていたほんの10分ほどで、不思議な夢のようなものを見た。



わたしは私を見つめていた。


そして、あの騒がしさと苛立ちは一体なんだろう?と思っていた。

向こう側のわたしは随分と苛立っていた。

またこの場所にきてしまった、と思っているようだった。


✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎




小さい頃から1人の時間が大好きだった。



姉と弟に挟まれた真ん中っ子の私は、三人兄弟の騒がしさを愛していたし、同時に、本当に驚くくらい上手く ひとり になることができた。(特技といってもいい)
周りがどれだけ騒がしかろうが、人がいようが、

すぐに

一瞬で

静寂の真ん中に立つことができた。


お寺で育ったので、仏教のことはまったく知らなかったけれど、定期的にお経と太鼓の音を聞いていた。
小さい頃から繰り返し、くりかえし。

あの時間は

ひとり の中でも特に中心の中心にいた。

宇宙のまんなかのような

自分が宇宙のような。






話が逸れてきた。



私はとにかく

ひとりが好きだった。


子どもを産むことに興味はなかったし、結婚はもっと興味がなかった。

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎



私が今立っている場所はなんなのだろう、と思う時がある。

時空が歪んでしまったような。



でも私は、決して子ども時代をやり直している訳ではない。



向こう側のわたしは随分と苛立っていた。

また戻ってきてしまった、と。


私は言ったのだ。




「それでも私は楽しむわ。

この騒がしさと、ままならなさを。

戻ってきたわけじゃない。

自分でつくってきたの。





やってみたかったの

チャレンジしてみたかった




私なら、どんなものをつくるのか。



意味はないのよ



意味はないの。」





✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


そこで目が覚めた。

冷や汗のようなものをかいていた。



隣の子どもたちは相変わらず騒がしくて、すぐに注意したけれど聞く耳を持たない。

周りに客がほとんどいないことに安堵しながら、心臓がばくばくと音を立てていることに気づき、深く深呼吸をした。






沖縄は、あたたかく、湿っていて、少しだけ悲しさもあった。



もうすぐ東京に着く。




旅は終わったのだ。