わたしは1998年5月から

 

匂いがわかりません。

 

夕方にアジの開きがどこかの家で

 

焼ける香ばしい匂いも 

 

大嫌いだったバスのエンジンの

 

息苦しい臭いも

 

猫のフワフワなお腹の

 

幸せな甘い匂いも 

 

わかりません。

 

右副鼻腔に50㏉の

 

放射線治療を終えて

 

無菌室で

 

強い抗がん剤治療をして

 

白血球が回復するのを

 

待っている間に

 

スーッと

 

匂いがしなくなりました。

 

なぜか匂いがなくなる瞬間を

 

覚えています。

 

何の匂いと限定できない

 

部屋の空気のような匂いが

 

痛みもなく、息苦しさもなく

 

小さくなって消えていきました。

 

それは、とても静かでした。

 

 

身体の中で

 

たいへんなことが起こっているから

 

いまはわからない匂いも

 

元気になれば

 

元通りになるはず

 

白血球が戻ること

 

無事に無菌室を出ることに

 

集中したいから

 

匂わないことで動揺なんかしない

 

…と思っていたけど

 

 

25年経過しても

 

なぜか嗅覚は戻らず ショボーン

 

 

放射線治療や化学療法が

 

原因とも言えず不明のままです。

 

副鼻腔炎でも

 

嗅覚障害になる人もいるし

 

原因はひとつでは

 

なさそうですよね。

 

でも、何を嗅いでもわからないという

 

事実はあって

 

いろいろ綴っていきたいです。