クラスメイトに目立ってしまい

 

恥ずかしい気持ちと

 

母に申し訳ない気持ちがまぜこぜになる。

 

せめて、体育教師から

 

「おかあさんもあぁ言っているのだから

 

多和田は上着を着なさい」

 

とひとこと言ってもらえたら

 

先生が言うのだからしょうがない、と

 

素直に従えたのだが

 

母との着る着ないのやりとりを

 

まるで無視するかのように

 

授業は進んでいた。

 

いま思い返してみても、違和感はある。

 

なぜわたしも頑なにこばんだかというと

 

寒いから長袖着ていいですか、という生徒に

 

体育教師からは

 

「いまは寒くても身体を動かすとあたたかくなるから

 

長袖は着るな」

 

という教育方針のようなものがあったのだ。

 

実際、授業が終わるころには身体が温まって

 

体育着でもいられるようにはなる。

 

いまは自分の事情に合わせて衣服で温度調節をする

 

という臨機応変な対応が進んでいることを

 

信じたい。

 

 

頑なに母の申し入れを断った以上

 

具合が悪くなるわけにはいかないと

 

気合を入れて、その日の学校を終えた。

 

翌日も平熱のまま学校に行くことができて

 

母の言うことを聞かずとも

 

元気でいられるのだと

 

変なメンツを保ったのである。