氷の島の女神Björk | 猫なでにき

氷の島の女神Björk

少し前の話になるが、アテネオリンピックの開会式に、ひとりの女神が舞い降りた。いや、それは海から地上に浮かびでたといった方がしっくりくる光景かもしれない。

彼女が歌い始めると、ブルーのドレスの裾が波打ち、広がり始める。やがてそれは、歌声と共に会場全体を包み込んでしまう。
目もくらむ幻想的な光景の中心で歌うのは、Björk(ビヨーク)。氷の国、アイスランドのアーティストだ。この時、歌われた曲は「Oceania」という。



12歳で本格的に音楽活動を始めて以来、その特異な個性とあふれ出す才能とで、常に注目されてきたBjörk。

私が彼女の音楽を初めて聴いたのは、1995年のアルバム『Post』だった。
それは形容しがたい体験だった。歌唱力や、曲の美しさや心地よさや、普通、音楽を聴く時に考えるそういうことを凌駕して、“声”が直接心臓に入ってくるようなイメージ。それが、Björkとの出会いだったのだ。

変な言い方かもしれないが、プリミティブな何かが、声を通して自分の内部に侵入してくるような感覚だ。そんな音楽を、私はそれまで聴いたことがなかった気がする。

1997年のアルバム『Homogenic』では、その圧倒的な世界をさらに広げてくれた。
その中から「Jóga」。



この、3分20秒という決して長くない曲の中に感じるエネルギーはなんだろう。

彼女の特異性は、その容姿にもある。
一見、西洋人か東洋人かもわからない。年齢さえも……幼女のごとくあどけない顔になるかと思えば、魔女のように鋭い眼差しを向ける。

一流のパフォーマーでもあるBjörkは、2000年には、主演した映画「Dancer in the Dark」での演技が評価され、カンヌ国際映画祭で最優秀女優賞受賞という、快挙も成し遂げてしまう。

セルマ


そんな彼女の突出した個性、そしてエキセントリックな言動や行動は、マスコミの攻撃対象になることもしばしばだ。熱狂的に愛するあまり、彼女の命を狙ったファンもいた(その彼は自ら命を絶った)

それも仕方ないことなのかもしれない。神から多くのギフトを与えられた者は、往々にして凡人の心に嵐を巻き起こす。ある者は激しく拒否反応を示し、ある者は賛美し熱狂する。それは時代のカリスマの役割でもあるのだから。

今日も、あの歌声を通して私の中に入ってしまったBjörkのカケラは、私の中で輝きながら歌い続けている。






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