バトル・オブ・ブラジル
映画監督テリー・ギリアムの最高傑作といえば、多くのファンが『未来世紀ブラジル(原題:Brazil)』の名前を出すだろう。もちろん私もその一人だ。
ギリアムならではの世界観、風刺力、造形の妙、色彩感覚…どれを取っても、文句なしに「ギリアムの映画」で、彼以外ではなしえない作品だった。
現在DVDで鑑賞できるのはいわゆる“オリジナル版”だが、そこへ落ち着くまでには、ギリアムと映画会社側との間に泥沼の死闘があったことは、ご存じの方も多いだろう。
映画会社側は、“当初の予算通り、シナリオ通り、約束の期間内” に出来上がってきたこの作品に、まず「予定より15分も長い」とクレームを付け、それに対して11分をカットして編集しなおしたギリアムに向かって今度は「最後はハッピーエンドでないと大衆は納得しない」として、ハッピーエンド版に編集して公開してしまうのである。そして戦争は勃発した。

その顛末をつぶさにルポルタージュしたのがこの本「バトル・オブ・ブラジル」なのだ。
作者のジャック・マシューズは、ことの起こりから終焉まで、ほぼ関係者といえる位置でこのバトルにかかわっていたジャーナリストで、そんな彼だけに非常に臨場感のあるルポになっており、かつ、下手な小説よりも“面白い読み物”に仕上がっている。
いや、実際テリー・ギリアムとその相手である映画会社側にとっては、ものすごく大変な事態だったろうとわかるのだが、それ以上に読んでるとなんだか冒険譚を読んでいるような気すらする。ギリアムはこれをどうやって切り抜けるのだろうか、ギリアムにこうやり返されて、会社側はどうでるのか……不謹慎だが、ちょっとワクワクしたりニヤついたりしてしまうのだ。
もちろん、それは既に“結果”を知っているからこその楽しみ方なのかもしれないが、実際にそれだけこの本が面白かったのである。
現在絶版となっているため、今から読みたい人は図書館か古書店をあたるしかないのが残念だが、『ブラジル』好きならば是非一度は読んでおいて損はない。
本文中には、ブラジル他、ギリアムの映画のスチール写真や、ブラジルの絵コンテ、オリジナルイラストなどふんだんに盛り込まれているのも、ファンには嬉しい限り。
映画『未来世紀ブラジル』から、主題歌の『Brazil』を。
そして、ギリアムファンならばご存じの通り、ギリアムの“戦い”はその後も相手を変えつつ継続されていく。ある時は映画会社、ある時は保険会社。最近では主演男優が死んでしまうといった不運まで……。つくづく、トラブルと縁の切れない人なのだ。
思えば、私がテリー・ギリアムの映画を初めて観たのは『バンデットQ(原題:Time Bandits)』だった。封切館で観たのとほぼ同時期に、友人の家で輸入版のビデオを観て、映画館で観たものが日本側でカットされたものだと知ったのだった。
アメリカを遠く離れたこんな極東の地で、たかが同時上映のアニメ映画の尺の為に、勝手に内容がカットされてるなんて、当時ギリアムは知っていただろうか?
(そもそもアニメと二本立てでのロードショーだなんて……)
知っていれば、日本でもギリアムバトルが繰り広げられただろうか。それはそれで…と、楽しんだりしてはまた不謹慎か。
ちなみに、本のタイトル「バトル・オブ・ブラジル」は、映画の内容とちょっとひっかけてある。
最初に主人公のサムが巻き込まれることになるトラブルが、「テロリストの名前の打ち間違い」……“タトル”を“バトル”と間違えたことによる誤認逮捕だったのである。

ギリアムならではの世界観、風刺力、造形の妙、色彩感覚…どれを取っても、文句なしに「ギリアムの映画」で、彼以外ではなしえない作品だった。
現在DVDで鑑賞できるのはいわゆる“オリジナル版”だが、そこへ落ち着くまでには、ギリアムと映画会社側との間に泥沼の死闘があったことは、ご存じの方も多いだろう。
映画会社側は、“当初の予算通り、シナリオ通り、約束の期間内” に出来上がってきたこの作品に、まず「予定より15分も長い」とクレームを付け、それに対して11分をカットして編集しなおしたギリアムに向かって今度は「最後はハッピーエンドでないと大衆は納得しない」として、ハッピーエンド版に編集して公開してしまうのである。そして戦争は勃発した。

その顛末をつぶさにルポルタージュしたのがこの本「バトル・オブ・ブラジル」なのだ。
何とも皮肉な話ではあるまいか!——官僚制度に対する強い不信をバネに、個人の自由の神話をめぐる風刺的ファンタジーを作ったと思ったら、その映画の制作過程で、まさに官僚制の悪夢に巻き込まれ、個人の自由が踏みにじられる瀬戸際に立たされたのだから。(本文より)
作者のジャック・マシューズは、ことの起こりから終焉まで、ほぼ関係者といえる位置でこのバトルにかかわっていたジャーナリストで、そんな彼だけに非常に臨場感のあるルポになっており、かつ、下手な小説よりも“面白い読み物”に仕上がっている。
いや、実際テリー・ギリアムとその相手である映画会社側にとっては、ものすごく大変な事態だったろうとわかるのだが、それ以上に読んでるとなんだか冒険譚を読んでいるような気すらする。ギリアムはこれをどうやって切り抜けるのだろうか、ギリアムにこうやり返されて、会社側はどうでるのか……不謹慎だが、ちょっとワクワクしたりニヤついたりしてしまうのだ。
もちろん、それは既に“結果”を知っているからこその楽しみ方なのかもしれないが、実際にそれだけこの本が面白かったのである。
現在絶版となっているため、今から読みたい人は図書館か古書店をあたるしかないのが残念だが、『ブラジル』好きならば是非一度は読んでおいて損はない。
本文中には、ブラジル他、ギリアムの映画のスチール写真や、ブラジルの絵コンテ、オリジナルイラストなどふんだんに盛り込まれているのも、ファンには嬉しい限り。
映画『未来世紀ブラジル』から、主題歌の『Brazil』を。
そして、ギリアムファンならばご存じの通り、ギリアムの“戦い”はその後も相手を変えつつ継続されていく。ある時は映画会社、ある時は保険会社。最近では主演男優が死んでしまうといった不運まで……。つくづく、トラブルと縁の切れない人なのだ。
思えば、私がテリー・ギリアムの映画を初めて観たのは『バンデットQ(原題:Time Bandits)』だった。封切館で観たのとほぼ同時期に、友人の家で輸入版のビデオを観て、映画館で観たものが日本側でカットされたものだと知ったのだった。
アメリカを遠く離れたこんな極東の地で、たかが同時上映のアニメ映画の尺の為に、勝手に内容がカットされてるなんて、当時ギリアムは知っていただろうか?
(そもそもアニメと二本立てでのロードショーだなんて……)
知っていれば、日本でもギリアムバトルが繰り広げられただろうか。それはそれで…と、楽しんだりしてはまた不謹慎か。
ちなみに、本のタイトル「バトル・オブ・ブラジル」は、映画の内容とちょっとひっかけてある。
最初に主人公のサムが巻き込まれることになるトラブルが、「テロリストの名前の打ち間違い」……“タトル”を“バトル”と間違えたことによる誤認逮捕だったのである。
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