“クラシック”なゴシップをどうぞ。 | 猫なでにき

“クラシック”なゴシップをどうぞ。

時折、クラシックを聴きたくなる時があるが、私の場合は19世紀終わりから20世紀初頭にかけての、近代クラシックが好みだ。
ことに、ガブリエル・フォーレの音楽を聴いていると脳幹まで染み通るような心地よさがある。宗教音楽が基盤にあるフォーレの音楽は、静かな湖面のような、ひたすら優しいイメージだ。

フォーレと同じ時代、常に比較される音楽家が、ドビュッシーである。
ドビュッシーはフォーレよりも17才若いのだが、この二人、音楽性はともかく共通項がある。音楽家とはアーティストだ。アーティストとは、自由を好むもの……なのかどうかは知らないが、とにかくこの二人は女性関係のゴシップが多いのだ。

その極めつけは、二人して同じ女性と関係を持ってしまったこと。
正確には時期のズレがあるものの、その女性エンマ・バルダックは、二人のハートを射止めたらしい。

フォーレは、若い頃から女出入りが多く、死ぬまでに複数の愛人を持っていたことで有名なのだが、当時銀行家夫人であったエンマとも愛人関係になった。この時、フォーレは40代後半、妻子持ち。なかなか元気なおじさんである。このエンマには娘がいて、フォーレはこの子の誕生日ごとに曲を贈っており、のちに組曲『Dolly』としてまとめている。
このことから、この娘はフォーレとの間の子ではないかと囁かれている。


その組曲『Dolly』から、一曲目の「Berceuse(子守歌)」



なんともいえない、愛情あふれる音ではないか。


しかし、その後この二人の関係も終わりを告げ数年後、上の息子の音楽教師としてドビュッシーがやってきた。エンマとドビュッシーはたちまち恋に落ちてしまう。
どうもこのエンマという人も、「音楽家」に弱いタチだったのかもしれない。

当時ドビュッシーにはリリーという妻がいたが、この交際が発覚すると拳銃自殺未遂を起こし、一代スキャンダルになったらしい。しかし元々リリーと結婚する時も、元の恋人を捨てリリーに走ったため、元の恋人が拳銃自殺未遂をするという顛末もあったわけで。
よくよく、女性関係をキレイに終わらせられない人なのである。

そしてリリーと離婚後、晴れてエンマと一緒に暮らすようになり、女の子が生まれるとドビュッシーもまた、この子の為に組曲を作曲する。有名な『子供の領分』である。


その『子供の領分』から、軽快なこの曲、「Golliwogg's Cake-Walk(ゴリウォグのケークウォーク)」



このゴリウォグとは、当時人気を博していた絵本のキャラクターで、ゴーリーとも呼ばれ、今でも「テディ・ベアの友達」として知られている、黒人の人形の男の子だ。
娘のお気に入りにこの絵本があり、それをモチーフに作ったということだ。


それにしてもドビュッシーは、エンマが元はフォーレの愛人であることは承知していただろうし、彼がもう一人の娘の為に組曲を作ったこともわかっていただろう。対抗意識なのだろうか。

そもそも、フォーレはドビュッシーの師ともいえる存在で、初期の楽曲には和音使いに濃い影響が見て取れるほどだ。しかし、次第に新しい音楽性を追い求め、それらに全く無関心なフォーレの姿勢を公然と批判したりしている。
しかし、人間としてはフォーレを慕っていたとも言われており、音楽性の違いや批判は、信頼を損なうこととは違うと考えていたようでもある。現に親しい内容の書簡も残っているそうである。

他にも、二人とも「ペアレスとメリザンド」(メーテルリンクの戯曲)を作曲していたり、「ベルガマスク」(ヴェルレーヌの詩をモチーフとしている)をやっていたりと、常に対抗しているようにも見えるが、実はお互いに深い理解があったのかもしれない。そうか、女癖の悪さにもお互い理解があったのか……。


最後に、フォーレの美しい旋律の中でも、特に人気の高いこの曲を。
組曲『ペレアスとメリザンド』から「Sicilienne(シシリエンヌ)」




ん~、名曲の源は、やっぱ女性を求めるエネルギーなんでしょかね…。




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