こんばんは。

 

毎月の給与が支払われる際、所得税等が源泉徴収されることは以前の「年末調整」ブログでも書きましたが、その他に会社等が報酬の支払をする場合にも源泉徴収が必要になります(所得税法204条)。

 

今回、取り上げたいのはホステス等に対する報酬に係る源泉について争われた事件です。

(最高裁平成22年3月2日判決・民集64巻2号420頁)

 

同法204条1項6号に、(バー等の経営者が)ホステス等の業務に関する報酬又は料金を支払う際には源泉徴収義務がある旨が書かれており、具体的な源泉徴収税額は「(報酬・料金の額-控除金額※)×10.21%」となっています(同法第05条、同法施行令322条)。

※控除金額…同一人に対し1回に支払われる金額について、5,000円にその支払金額の計算期間の日数を乗じ

         て計算した金額 (下線は筆者)

(例えば、報酬の額が125,000円で計算期間の日数が15日だと、その報酬を支払う際に5,105円((125,000円-5,000円×15日)×10.21%)を源泉徴収しなければなりません)

 

この裁判の争点は二つあったのですが、その一つが上記下線を引いた「計算期間の日数」の意味するところでした。

 

納税者はパブクラブを経営しており、毎月1日から15日まで及び毎月16日から月末までをそれぞれ1期間としてホステスの報酬を計算していました(この各期間のホステスの勤務日数は5日間とします)。

この場合、上記「控除金額」はどのように計算されるのでしょうか。

 

①納税者の主張→「計算期間の日数」は1日~15日(16日~月末)までの15日間を意味するので、5,000円×15日

            =75,000円を控除金額とした。

②課税庁の主張→「計算期間の日数」は実際の出勤日数を意味するので、5,000円×5日=25,000円を控除金額

            とした。

(②だと控除金額が少なくなるので、源泉徴収税額も多くなってしまいます)

 

この点について、最高裁判所は以下のように判示しました。

「一般に、『期間』とは、ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続性を持った概念であると解されているから、施行令322条にいう『当該支払金額の計算期間』も、当該支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性を持った概念であると解するのが自然であり、これと異なる解釈を採るべき根拠となる規定は見当たらない。」(前掲最高裁判決)

 

計算期間を「時的連続性を持った概念であると解するのが自然」と言っています。

「期間」というのは、出勤日数という「点」ではなく初日から末日までを指す「線」というイメージでしょうか。

条文のどこにも「出勤日数」とは書かれておらず、「計算期間の日数」という文言だけで「出勤日数」と解釈することは困難だとし、納税者の主張を認めました。

 

この裁判は当時とても話題になりましたが、その理由は地裁、高裁では納税者敗訴であったのに、最高裁で逆転勝訴になったからでしょう。

(つまり、地裁、高裁は「計算期間の日数=出勤日数」と捉えていたということです)

 

最高裁で判決が覆ったのは、判示事項の中にある、

「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく」

というところに表れています。

 

税法は納税者の財産を侵害する法律なので、条文に書かれた文言をそのまま解釈するのが原則だということを言っています。

これを「文理解釈」といいます。 

 

例えば、「この場所での凧揚げを禁止する」という条文があった場合、ドローンを飛ばすことは可能でしょうか。

凧とドローンは違いますから、文理解釈を適用するとドローンは問題ないということになります。

しかし、なぜ凧が禁止されているのかという「目的、趣旨」を考えると、ドローンも禁止だろうと解釈することもできます。

これを「目的論的解釈」又は「趣旨解釈」といいます。

 

 「文理解釈」を原則とする一方で、「ホステス報酬に係る源泉徴収制度において基礎控除方式が採られた趣旨は、できる限り源泉所得税額に係る還付の手数を省くことにあったことが、立法担当者の説明等からうかがわれる」とも判示しており、基礎控除方式(控除金額)の趣旨(「趣旨解釈」)にも触れて、納税者勝訴に導いたところがこの判決の醍醐味といえるでしょう。

つまり、「文理解釈」、「趣旨解釈」のどちらで解釈しても、「計算期間の日数」は「出勤日数」と捉えることができず、「その期間に含まれる全ての日数」としたのです。