こんにちは。

 

先日、次のような質問を受けました。

 

Q.籍を入れていないパートナー(事実婚)がいるのですが、税務上受けられる規定はありますか。

A.税務での配偶者に関する規定は民法上の婚姻関係にある者に限られていますので、事実婚での優遇規定は

  ありません。

 

今年度(令和2年度)の税制改正で寡婦(夫)控除が改正されました。

 

寡婦(夫)控除とは、簡単に言うと「配偶者と死別や離婚をした人で扶養親族がいるなど一定の要件を満たす場合の所得控除」です。

(所得税法2条1項30号、31号、81条)。

 

今回行われた改正は次のとおりです。

①死別や離婚に限らず、未婚のひとり親も適用対象とする。

②寡婦にも所得制限(500万円以下)を設ける。

 

男女間で所得制限が違うのは現代社会に馴染まないので②の改正は当然として、①の適用対象の拡充については厚生労働省の税制改正要望書に次のように書かれています。

 

「婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親は、子育て・家事と就業を一人で担わなければならず、経済的に厳しい状況に置かれている。これは、婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親であっても、死別、離婚、夫(妻)の生死が不明の場合であっても変わらない。

しかしながら、婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親と、死別、離婚、夫(妻)の生死が不明の場合で、寡婦(寡夫)控除の適用に異なる点があることについて、税制改正をすべきであるという指摘がある。

こうした議論を踏まえ、平成31年度税制改正大綱(平成30年12月14日自由民主党、公明党)では、『子どもの貧困に対応するため、婚姻によらないで生まれた子を持つひとり親に対する更なる税制上の対応の要否等について平成32年度税制改正において検討し、結論を得る。』とされており、今後検討し、結論を得ることが必要である。」

 

昨年度(平成31年度)から改正の話が出ていて今年度に結論が出されたということですが、ひとり親は「経済的に厳しい」ので、未婚と離婚や死別で差異を設けるのは適当ではないということです。

 

未婚のひとり親が増えているという(現代の)社会的構造の変化に対応した改正と言えるでしょう。

 

しかし、未婚であっても「事実婚の場合は除く」とされています。

事実婚とは、住民票の続柄に「未届の妻」又は「未届の夫」と記載されている状態を指します。

 

寡婦控除はあくまで「経済的に苦しいひとり親」を助ける規定なので、婚姻していなくともパートナーがいるならその対象から除かれるということですね。

 

過去に、事実婚をして離婚しても寡婦控除は受けられないという点について争われた事案があります。

(平成19年2月26日裁決(裁決事例集第73集226頁))

 

以下、裁決の要旨です。

「請求人は、戸籍法上婚姻はしていないが事実婚をして離婚しており、所得税法第2条が規定する寡婦の定義には戸籍法のことは書かれておらず、また、母子法、生活保護法には事実婚を認める規定もあるから、寡婦控除は認められるべきである旨主張する。

しかしながら、所得税法(平成16年法律第14号による改正前のもの。以下同じ。)第2条第1項第31号によれば、「夫と死別し若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」、あるいは「夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者」に該当することが「寡婦」たる要件の一つとされているところ、ここでいう「夫」の意義については、所得税法及び租税特別措置法(平成16年法律第14号による改正前のもの。)において格別の定義規定が設けられていないことからすれば、身分法の基本法たる民法が定める婚姻関係(以下「法律婚」という。)にある男子を意味するものと解するのが相当である。」(下線は筆者)

 

また、内縁の夫に配偶者控除の適用はないとした裁決もあります。

(平成21年4月3日裁決(裁決事例集第77集150頁))

 

上記のとおり、現在の税制は法律婚を前提としており事実婚で受けられる規定はありません。

 

しかし、選択的夫婦別姓の話題が国会でも取り上げられているように、結婚に対する意識の変化等がある昨今、今後これを踏まえた税制の整理、検討があってもよいのではないでしょうか。