こんばんは。
いよいよ10月から消費税率が10%に上がるということで、連日、新聞やテレビ等で報道がされています。
5%→8%に上がったのが平成26年(2014年)4月1日でしたが、今回の増税は前回に比べてはるかに難解です。
消費者目線で考えると、それは以下の2点によるものでしょう。
①軽減税率の対象になるものは何か
②キャッシュレス決済によるポイント還元とは何か
結局、私たちの負担は実質何%になるのでしょうか。
1.軽減税率制度について
10%への税率引き上げに伴う低所得者への配慮の観点から軽減税率制度(8%)が導入されますが、その対象となるのは次の2つです。
(1)酒類・外食を除く飲食料品
(2)定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞
このうち問題になるのは(1)の「飲食料品」の取扱いです。
(1)飲食料品
軽減税率の対象となる「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品(酒類を除きます)をいい、一定の要件を満たす一体資産を含みます。外食やケータリング等は軽減税率の対象品目には含まれません。
※食品表示法に規定する「食品」とは、全ての飲食物をいい、人の飲用又は食用に供されるものです。また「食
品」には、「医薬品」、「医薬部外品」及び「再生医療等製品」が含まれず、食品衛生法に規定する「添加物」が
含まれます。
「飲食料品」のポイントは、
①人の飲用又は食用に供されるものであること
人の飲用又は食用以外の用途に供するものとして取引される場合には、たとえ飲食が可能であっても10%に
なります。
例)同じ「水」でも、ミネラルウォーターは8%ですが水道水は10%になります。
②軽減税率が適用される取引か否かは、事業者(売手)がその取引時点において、「食品」として(人の飲用又は
食用に供されるものとして)取引するか否かにより判定
例)食用として販売した重曹を購入者が清掃用に用いた→売手が「食用」として取引しているため8%
清掃用として販売した重曹を購入者が食用に用いた→売手が「食用以外」として取引しているため10%
③酒税法に規定する酒類、医薬品、医薬部外品、再生医療等製品は、「飲食料品」から除かれる
酒税法において酒類とは、アルコール分1度以上の飲料をいいます。
→ノンアルコールビール、アルコール分1度未満の甘酒は8%になります。
栄養ドリンクのうち、「医薬品」や「医薬部外品」に該当しないものは8%になります。
④「一体資産」とは、例えば、おもちゃ付きのお菓子のように、次のイ及びロのいずれにも該当するものをいいま
す。
イ 食品(お菓子)と食品以外(おもちゃ)の資産があらかじめ一の資産を形成し、又は構成しているもの
ロ 一の資産の価格のみが提示されているもの(おもちゃとお菓子の価格が別々になっていない)
この「一体資産」は、原則として軽減税率の対象とはなりませんが、次のいずれの要件も満たす場合は、飲食
料品扱いになりその全体が軽減税率の対象となります。
イ その一体資産の税抜価額が1万円以下であること
ロ 食品の価額の占める割合が3分の2以上であること(食品の比重が大きい)
なお、個々の商品の価格が明らかな場合には、個々の商品ごとに適用税率を判定します。
(2)外食
軽減税率制度を複雑にしているのは、この「外食」の定義が分かりづらいからでしょう。
「外食」とは飲食店業等の事業を営む者が行う食事の提供をいい、次の①、②の要件をいずれも満たすものをいいます。
①テーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備(以下「飲食設備」といいます)のある場所におい
て(場所要件)
②飲食料品を飲食させる役務の提供(サービス要件)
レストラン、フードコートでの飲食は両要件を満たすため10%ですが、持ち帰り(テイクアウト)は単なる飲食料品の販売で飲食させる役務の提供には当たらない(上記②に当たらない)ため8%となります。
「公園のベンチでの飲食」はどうなるでしょうか。
①飲食料品を提供する事業者と公園の設置者等の間でベンチの利用について合意等なく、誰でもベンチを利用
できる場合は8%(←持ち帰りと同じ扱いのため)
②飲食料品を提供する事業者と公園の設置者等の合意等により、顧客にベンチを利用させている場合は10%
(←飲食料品を提供する事業者にとって、そのベンチは飲食設備に該当するため)
「外食」に該当するか、「持ち帰り」に該当するかは、事業者(売手)が飲食料品を提供する時点(取引を行う時点)で、顧客に意思確認を行うなどの方法によって判定するとされています。
この「顧客への意思確認は、各事業者が販売している商品や事業形態に応じた、適宜の方法によって行う」とされており、国税庁のQ&Aでも色々なパターンが紹介されていますが、現場の混乱を招くかもしれない懸念事項の一つといえます。
※顧客への配慮から外食(店内飲食)でも持ち帰りでも税込価格を統一すると発表したお店もあります。
これは店内飲食の本体価格を値下げすることとなるので、本来消費者が負担すべき消費税2%分をそのお店
が負担することを意味します。
2.キャッシュレス決済・ポイント還元事業
「キャッシュレス・消費者還元事業は、2019年10月1日の消費税率引上げに伴い、需要平準化対策として、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上の観点も含め、消費税率引上げ後の9カ月間に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する事業です。」(経済産業省 キャッシュレス・消費者還元事業HP)
我が国のキャッシュレス決済の比率を高めるとともに、今回の増税による消費の落ち込みを防ぐため、2019年10月~2020年6月までの9ヶ月間に限りキャッシュレス決済をした人に対してポイント還元を行います。
(軽減税率制度とポイント還元事業は同時期に開始されますが、前者は国税庁、後者は経済産業省(一般社団法人キャッシュレス推進協議会)が管轄しています)
(1)キャッシュレスの手段
①電子マネー/プリペイドカード
②クレジットカード
③デビットカード
④スマートフォン(バーコードやQRコード)
など電子的に繰り返し利用できる決済手段です。
最近では〇〇ペイなどのスマートフォン決済が増えていますが、交通系電子マネーでも還元を受けることができます。
(2)還元率
①中小・小規模店舗→5%
②フランチャイズチェーン店、ガソリンスタンド→2%
※大規模店舗(百貨店等)は還元されません。
(3)対象店舗
ホームページに対象店舗一覧がアップされています(キャッシュレス・消費者還元事業HPの「登録加盟店一覧はこちら」)
また、対象店舗には「ロゴマーク」の表示がされるようです。
ただ、経済産業省の発表によると、中小店舗約200万店のうちこの還元事業の参加を申請した店舗は約58万店(9月5日現在)とのことで、10月1日のスタートと同時にポイント還元を受けられるお店はそう多くはないかもしれません。
(10月1日以降も申請は可能なので、これから増える可能性はあります)
3.実質負担率
軽減税率制度とポイント還元事業を踏まえると、実質負担率は次のようになります。
通常 軽減対象 ポイント還元 実質負担率
中小・小規模店舗 10% 8% -5% 3% or 5%
大手コンビニ等 〃 〃 -2% 6% or 8%
大手スーパー、百貨店 〃 〃 なし 8% or 10%
確認ですが、あくまで軽減税率の対象となるのは「飲食料品」のみです。ティッシュペーパー、洗剤などの生活必需品は中小店舗であっても消費税率は10%になりますが、キャッシュレス決済をした場合には5%の還元が受けられます(実質5%)
対象店舗であれば、10月になってから購入した方が得の場合もあるということですね。
2020年6月までは実質負担率は上記の5種類が考えられ、大規模店舗以外でキャッシュレス決済を行えば現在と変わらないか負担減にはなります。
ただ、還元を受けられる対象店舗の確認は忘れないようにしましょう。