こんにちは。

早いもので、2018年ももう終わりですね。

 

年内最後は小規模宅地等の特例(以下、「本特例」といいます)をご説明します。

以前のブログでも触れてはいますが、これだけで本1冊が出版されているほど難解なので、概要をご理解頂ければと思います。

(「2つの事業承継税制」、「2つの小規模特例」ブログ参照、租税特別措置法第69条の4)

 

被相続人が不動産(宅地と建物)を所有していた場合、その利用状況は以下のものが考えられます。

(1)被相続人がその建物に居住している

(2)被相続人がその建物で事業をしている(被相続人が会社を経営している場合も含みます)

(3)被相続人がその建物を貸し付けている(マンション等)

 

一般的に不動産の評価額は課税財産全体のうちで大きなウェイトを占めます。

残された相続人が引き続きその建物に居住したり、事業を承継したりするものとした場合、その不動産は処分ができない(換金性がない)ので、預金等の金融資産がないと相続税が納付できない状況になってしまいます。

 

そこで、その処分の制約を受けることや相続人の生活保障の観点から、一定の要件を満たす宅地等(「等」は借地権です)については、その評価を下げて相続税を減税することにしています。

(適用が受けられる宅地等の面積に限度はありますが、(1)と(2)は宅地等の評価額が80%減、(3)は50%減となります)

 

本特例の適用要件のポイントは、被相続人の生前の利用状況(上記(1)~(3))を、その不動産を取得した相続人が引き続き継続するかどうかです。

被相続人がその建物に居住していたのであれば相続人も引き続き居住する必要がありますし、マンション貸付けを行っていたのであれば引き続き貸し付ける必要があります。

その不動産の利用を前提とする処分の困難性から認められている優遇規定なので、相続発生後すぐの売却は許されないということですね。

(ただし、配偶者が取得した場合には要件の緩和があります。相続税、贈与税の計算においては配偶者はとても優遇されています)

 

簡単に説明するとこれで以上なのですが、本特例を難しくしているのはそれぞれの家庭で生活状況が異なるからです。

例えば、被相続人が亡くなる直前に老人ホームに入っていてその建物に居住していなかった場合はどうなるのか(被相続人が居住していたと考えてもらえるのか)、相続人が単身赴任をしていて引き続き居住したくてもできない、など様々な事情が考えられます。

 

こういった個々の事情まで税法に規定するのは不可能なので、その条文の解釈や実務指針である「通達」と呼ばれるものを参考に対応して行きます。

都心に不動産を所有している場合など、80%減の適用の有無で税額に何千万、何億と差が出ることがあるので、税理士としても緊張感を持って考えるようにしています。

 

ちなみに、上記老人ホーム、単身赴任も一定の要件を満たす場合には適用があります。

健康上の問題や仕事の都合といったやむを得ない事情であれば認られる余地があるということですね。

 

本特例で「3年」が関係するものとしては、以下のようなものがあります。

上記(3)の貸付事業用に関係する注意点ですが、相続開始前「3年」以内に貸し付けたものは一定の場合を除き、この規定の適用は受けられません。

相続開始直前に急遽貸し付けることによる評価減を認めないためです。

また、前回の配偶者の税額軽減と同じで、その宅地等が申告期限までに分割されていない場合にも適用ができません。

しかし、申告期限から「3年」以内に分割がされれば適用を受けることができます。

 

相続税対策を行うときには、本特例の適用を受けられるように事前準備しておくことも重要です。

現在の生活状況をお聞きして、「このままでは適用が受けられませんので、~しましょう」といったアドバイスをすることもあります。

 

当然ですが、(本特例に限らず)適用できないのに適用してしまったら税務署から処分をされてしまいます。

しかし、適用できるのに適用していなかった場合でも親切に教えてはくれません。

申告納税制度といって、自らの責任において税額を確定させる必要があり、「知らなかった」は理由にはなりません。

 

税金の計算を考える上では、規定を知っているかどうかがとても重要だと感じています。

細かいことはその都度調べればいいわけで、存在自体を知らなければ調べることもしない(できない)からです。

私は、基本的に税法のことを全く知らない方向けにこのブログを書いていて、その規定の概要(存在意義)をまず知って頂きたいと考えています。

 

本特例を例にとると、「不動産を所有しているなら優遇規定があるらしい」ということだけでも覚えていたら、そこから色々と調べることができます。

このブログが少しでもその手助けになれば幸いです。

 

良いお年をお迎えください。

 

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm