思考回路《後編》 | なつ

思考回路《後編》

私とKは、海の店の前で2人で話していた。

"胸の高鳴り"という波が一気に押し寄せてきた。

Kとは嫌いで別れたんじゃない。

3年も付き合ってると、一緒にいてもちょっとした事でムカつく事が多くなっていたから、少し離れるべきだと思った。

私の場合、離れた人とまたくっつく事はない。

つまり、少し離れる=完全な別れ、である。


不思議と離れると、あんなにもう無理だと思っていた人の、いい部分だけが思い出され、"トキメキ"に変わる。

時間が経てば経つ程、美化されていって、今ではすっかりいい人の記憶しかない。


目の前に現れた"トキメキ"と、まともに目を合わす事も出来ず、ただダラダラと私生活の話をしていた。

以前と同じ仕事を続けている事。

私と別れてすぐ、Kは結婚して子供が一人いる事。

…それを聞いた時、海の店から"奥さん"が出て来た。

気付くと、雨はやんでいた。

海の店も砂浜も…人がいっぱいで、まわりはガヤガヤしている。

私の存在は視界には入ったはずだが、奥さんは特に気にする事もなく、買った物に何か付け忘れたのか、店の方へ戻った。


それに気付いたKは、私に少し向こうへと、目と仕草でうながした。


今思えば、この時すでに私の心には、"良からぬ再進展"を望む悪魔が、ひょっこり顔を出していたんだろう。


奥さんの死角になる松の木の下まで行き、少し間があった後、Kは私に「行く?」と聞いた。

黙ってコクリと頷き、Kと一緒にその場から…逃げるように早足で去った。



どこをどう進んだか、Kの家にいた。

それも、ベットの上。

K「今日、帰らんでいいん?」

私「うん。」

K「んじゃ~起きてから。」

海に行って疲れたのか、Kはもう半分寝かけている。

そうだ。
この人、こういう人だった…。

自分のペース。
完全にマイペース型。
悪く言えば自己チュー。


こんな時に…こんな状況の時に…落ち着き払って寝れる神経が分からない!


そう思いながらも、まだまだトキメキが勝ってる私の心。

そんなイラッとくるマイペースさえも、甘い懐かしさに変えていってくれた。

現実、"じゃぁ、起きてからでいいか…"ぐらいの気持ちは確かにあったけど、それよりも、またそばに居られる喜びみたいなのが、私を包み込んだ。



・・・ガチャ。

物音で引き戻される。

「お父さ…ん…」

見ると、小学校に入るか入らないかの女の子。

トイレかどうかは分からないけど、どうやら起きてしまったらしかった。

K「ん…ぁぁ…」

「もう少ししたら帰ってくるょ…。」
と、母親の帰りを聞く女の子に、手をひきながら部屋に戻るよう誘導した。

見たくなかった父親の顔。

そしてまた、何事も無かったかのように眠ろうとするK。


心がざわつく。

奪いたい!
と思った。


何から奪うかは…もちろん奥さん。…と子供。

どう見ても別れた時期、年齢からして、大きい子供。

すぐに奥さんの、"連れ子"だと思った。



奪いたい。

また自分のモノにしたい。

そう、思った。





ガチャ。


また子供…かと思ったら…



奥さんだった。





《完結編へ続く》