午前中、私用があり出かけていた。


ある事を思い出した。


個人的に資産運用等を相談されていた社長のビル


2,3年前から社長は悩んでいた。


都会の中で古びたビル


ほとんど使用していない


ただ、おばあちゃんがやってる小さな本屋さんがあるだけ


都会の駅前の一等地にあるビル


無駄にするのはもったいない


あたしなりの計画を出してみた


社長は悩んでいた


『昔ながらの付き合いとかあるからね・・・』


それだけの理由で一等地のビルを放っておくのはもったいない


そんな話しを何年も悩み


社長もビルの件を任せたいと計画通りにすすめていた。


そういえばビルの解体が始まっている


ついでに様子を見に行ってみようと思い


ビルの近くまで行った。


道路を挟んだ所に壊されていくビルを、ずっと見ている人がいる。


近くまで行くと本屋さんのおばあちゃんだ。


あたしを知られるのがイヤだった。


何度かそこへは行ったが必ずおばあちゃんに引きとめられ


時間がないというのに年寄り長話に付き合うのがウンザリだった。


逃げるように帰ろうとすると呼び止められ


カリントウやら賞味期限の切れたまんじゅう等くれた。


正直、迷惑していた


おばあちゃんに気が付かれないようビルを見ていた。


見て見ぬ振りをして、その場を去った。


他に用を済ませ駅に向かう途中


まだおばあちゃんがいた。



何だかおばあちゃんの姿が淋しそうにみえ


何とも言えない顔でずっとビルだけを見ている


あたしには気がつかない


おばあちゃんの想い出が壊されていくんだ


そんな姿を見ていたら、たまらない気持ちになり


意味も分からず走ってコンビにで、お茶とあんまんを買って


おばあちゃんに声をかけた。


おばあちゃんと変な所に座り込みあんまんを食べながら


ビルが無残に壊されていくのを二人で見てた。


『こんなハイカラなもの食べたことないよ』


明るく笑った。


おしゃべり好きなおばちゃんはそれだけしか話さなかった。


二人でずっとビルを見ていた。


『あんた忙しい人なんだから行きなさい』そう言われ


立ち上がった。


おばちゃんは『良いこともあるんだね。さっきのまんじゅう美味しかったよ』


って何度も何度もあたしに頭を下げていた。


あたしのせいでもあるのに


『ありがとう』って言わないで


何も、おばあちゃんに言ってあげられなかった。


ごめんね。


おばあちゃん。


沢山の想い出壊しちゃって・・・


本当にごめんね。。。