火葬場に着いてしまった。

 

シンゴの親友は駐車場で待っていた。

 

目を合わせつつも会話はしない。

 

これからシンゴが焼かれてしまう。

そんな時に何を話すことがあるんだ。

 

きっと同じことを思っていただろう。

 

棺がガラガラと運ばれていく。

 

「それでは最後のお別れです」

 

背筋がゾクッとした。

 

手も。足も。震えていた。

 

口が乾く。

 

上手く息ができない。

 

喪主の私は一番にお焼香をする。

 

シンゴを見る。

 

まるで他人事のように

何も。

何も考えられなかった。

 

一人一人、お焼香をして、

シンゴの顔を見て話しかけていた。

 

泣いてるおじさんおばさん。

 

シンゴと遊んでいた姪っ子甥っ子。

 

義父母。

 

みんなが泣きながら、

シンゴとお別れをしていた。

 

それが終わると炉の前へ移動する。

 

この中に入ってしまったら

もうシンゴとは会えないんだ。

 

本当に最後なんだ。

 

「ちょっと待ってください」

「もう一度だけ、お別れさせてください。」

 

炉の前で係の人にお願いした。

 

「・・・喪主様がそう

言われるのでしたら特別に。」

 

棺の蓋が少しずらされる。

 

これが本当に最後。

 

私は奥の方にいた親友の腕を掴んで

シンゴの棺の隣に立ち、

子供と一緒にお別れをしようとした。

 

ーでも

ーもう、ダメだった。

 

今まで張り詰めていたものが

全部どこかへ行った。

 

「シンゴ!!最後なんて嫌だ!!

 

なんで!?なんでいっちゃうの!?

 

最後なんて嫌だよーーー!!!」

 

棺に張り付いて号泣した。

 

炉の前で泣き叫ぶ私。

周りから見たら完全に

悲劇のヒロインだろう。

 

でも、もう周りの目なんて気にしない。

だってシンゴとの最後。

 

「もうそろそろお時間なので・・・」

 

と係りの人に言われても

私は棺から離れない。

 

「嫌だ…・嫌だ!!」

 

「嫁ちゃん、もう・・・」

義母に言われても離れない。

 

「シンゴ、嫌だ、

・・・最後なんていやだ!」

 

親友と義理弟に腕をつかまれ

棺から離される。

 

ガラガラと炉に入っていくシンゴ。

 

シンゴがいってしまう。

 

焼かれてしまう。

 

私の大好きなシンゴが。

 

いなくなるの・・・?

 

炉の扉が閉まる。

 

「シンゴのバカ―――!!!」

 

大声で泣き叫びながら

最後にシンゴに贈った言葉だった。

 

ゴ――――・・・・・・

 

燃えている音がする。

 

私はもう立ってられず、

床に膝をついてうなだれていた。

 

「・・・・もうこれで終わりなの?」

 

私とシンゴは

 

終わってしまったの?

 

「・・・・わからん」

 

親友が答えた。

 

シンゴが骨になるまで別室で待機する。

 

私はそこから動けない。

 

みんなが集まる部屋になんて行きたくない。

 

ずっと膝をついて動かない私を見て

親友が外に連れ出してくれた。

 

少し曇ってきていた。

 

「・・・・骨拾うの嫌だな・・・」

 

ボソッと言う。

 

「お前がシンゴと結婚したんだから

お前がちゃんと、骨を拾ってやれよ」

 

と親友に言われる。

 

「いや、拾うけどさ・・・・。」

「シンゴはバカだね・・・・。」

 

「アイツは大馬鹿だな・・・。」

 

私が正気を取り戻すと、親友は帰って行った。

 

シンゴが焼き終わるまで数時間。

 

みんなが部屋で談笑してるとき、

私は一人、ソファーでうなだれていた。

 

よくみんな笑ってお茶なんか飲めるなぁ。

今そんなこと絶対できないよ。

 

もう、私に誰も話しかけないで。

1人にして。

 

そんなオーラ満載でうなだれていた。

実両親や子供すら寄って来れないほど

私はヤバかったんだと思う。

 

シンゴが骨になった。

 

骨を拾うのはあまり抵抗はなかった。

 

なんだかあっけなくて。

 

この骨、シンゴなの?本当に?

 

というくらいあっけなくて。

 

全て骨壺に納めて骨箱を持つ。

 

温かい。

 

さっきまで燃えてたもんね。

 

これが最後のシンゴの温もりなのか。

 

私が手で持てるくらい

ちっちゃくなっちゃったね…シンゴ。

 

小さくなったシンゴを抱えて

家路へと帰って行った。

 

 

汗死別した人と共感したい汗

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