第5話 向こう側の世界


ボクは大海を彷徨い続けた。

ボクの疑問の答えはちっとも見つからないし

考えるのも疲れてしまった。

 

もう答えなんて無いのかもしれない。 

このままなんとなく虚しいまま

老いて行くのかもしれないなと思い始めた。 


 しかし、随分と遠い所まで来たなぁ。 

ずっとこの世界は水があるんだと思っていたけど、 

どうやらもう少し上には水が無い世界があるらしい。 


スイスイ泳ぐヤツが言ってたな。仲間が水の外の世界に飛び出して帰って来なかったって。 

あの水の向こう側には一体何があるのだろう?

明るくなったり暗くなったりする

水の向こう側には 

ボクの心の穴ぼこを埋める何かがあるのだろうか…。 


そんなことを思いながら 

ボクはじっと向こう側を見つめていた。 


知らない所は怖いな…。 

でもどうしても

ボクはその向こう側の世界が知りたくなった。 

暗くなった今がチャンスかも。 

ボクは恐る恐る、そ〜っとその境目から顔を出した。 


 「うわぁ〜!キレイだぁ〜!」 


ボクは一瞬でその美しさに目を奪われた。


キラキラの無数の輝きと

黄色くてまあるい明かりがボクを照らしていた。


見たことの無いその世界は 

ボクの心までも優しく癒してくれている気がした。


うっとりとその美しい世界にしばらく見とれていたが

やがて藍色の空が赤く染まってきて

キラキラ達は見えなくなり、まあるい黄色い明かりもどこかへ行ってしまった。


ああ…お願い、行かないで! 

ボクを置いて行かないで…。


やがて焼けるような強い光が差してきて見ていられなくなった。

長いこと顔を出してたせいで、息が苦しくなって水の中に戻った。


ああ…もう一度、

あのキラキラと黄色い明かりに照らされたい。 


暗くなったらまた

会えるのだろうか…。 


ボクはまたじっと水の中で

向こう側の世界が暗くなるのを待っていた。



 つづく




またあしたねー(byヒトデくん)