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なーすほるんけーふぁーです

クリスマス週間

自作ファンタジーライトノベル

『クリスマスぬいぐるみ物語』をお送りしています。

第二話『はやぶさ2と少年』

をご覧ください。

※この物語はフィクションです。



前回のあらすじ。


 武藤雪樹斗(むとうゆきと)は、ぬいぐるみとなり、魔法人形少女フリーデリーケの手伝いとして人々に『勇気』と『希望』と『愛』を取り戻す仕事をすることになった……


「最初の仕事は、この絵本に書いてあるな……なになに?

 目の病気の子供の勇気を取り戻すことか」


フリーデリーケから貰った魔法絵本の中には、部屋で寝ている少年の絵が書いてあった。


そして虹色のクレヨンのトンネルを抜けると、自分は少年の部屋に舞い降りた。


「誰?」


気配に気がついたらしい


「君の名は『星海星隼』くん。年齢は14歳。 目が見えなくなる病気にかかっている。

 目の手術をすれば治るかも知れないけれど、手術する勇気がない」


「お医者さん?」


「僕はサンタクロースさ。

北欧の国からきみの勇気を取り戻しにきたんだ」


 少年はこちらをみているようで、見えてないみたいだった。


「うん、そうなんだ……まだ輪郭とか明かりが見えるんだけどだんだん見えなくなってきてるんだ」

 少年は力無く答えた。



 そうなのか、初めての大手術じゃ大人でも怖いだろうな……


 自分は子供の頃、階段から落ちて足を脱臼した事がある。

 かなり珍しいタイプの脱臼で、医者の資料に、俺の写真が足だけ載ってるくらいだ。


 その時の手術は子ども心にも怖かったのを覚えている。


 再び俺は絵本に目を通した。

 少年の病状は思わしくなく、手術をいつにするかは本人の意志次第らしい。


 僕は部屋を見回した。



 すると部屋には星座や天体観測に必要な🔭望遠鏡や写真が山ほどあった。


 そのうちの一つ、ポラロイドカメラの横にあった写真を、ぬいぐるみの手に取った。

「人工衛星はやぶさ2010年6月」


 すると少年の声が弾んだ。

「それは僕のお爺ちゃんがオーストラリアに旅行中に撮ってきてくれた、人工衛星はやぶさの写真なんだ」


 「すごいんだよ地球から60億キロも旅してイトカワの石を取ってきた、日本🇯🇵のすごい人工衛星なんだ!

 だけど帰ってくる時は前ボロボロで、大気圏に突入して燃え尽きちゃったんだって」

※小惑星探査機はやぶさは長き旅に渡る損傷が激しいため、大気圏突入ミッションを行い燃え尽きました。


「でも今のはやぶさ2はすごいんだ、リュウグウまで行って、問題なく12月6日に戻ってくるんだって!」


「見たかったな……はやぶさ2……」

悔しそうにする少年がシーツを握る手に力こもる。


「星隼くん、手術をしよう」


「怖いよ。難しい手術だって。

失敗したらそのまま死んじゃうんじゃないかって思うんだ。 前のはやぶさみたいに燃え尽きちゃうんじゃないかって」


「じゃあ僕がはやぶさ2の写真をポラロイドカメラに撮って来てあげる。君はそれをお守りに手術を受けるんだ」


 見事に帰還する人工衛星はやぶさ2にあやかって、必ず帰ってこられるように弦担ぎというわけだ。


「本当?」

「本当に本当。サンタに任せなさい」


「……わかったよ、約束だよ」

「ゆびきりげんまん!

じゃあ今日はお休み。明後日をたのしみに」


「おやすみなさい、サンタさん」


 少年はむにゃむにゃいっていたが、しばらくすると寝息を立て始めた。


 さて、これからは有言実行、雪樹斗サンタのお仕事開始だ。


 制限時間は3日後の12月6日の夜だ。

 自分はそっと少年のおじいちゃんのお古のポラロイドカメラを抱き抱えると、魔法絵本を開き、筆を取った。


つづく

第3話『いざオーストラリアへ!』をお楽しみに