回想
父との同居(決意表明)

入院が一ヶ月を迎える頃、父の意向が変わった。
姪っ子が任意後見をやや重荷に感じていることが父に伝わってしまったのだ。

もともとは婿入りした私が負わなければならない役目。
実は婿養子ではなく、名を受け継いだだけ。
一般に嫁をいちいち成人養子にしないのと同じように、私が妻の姓を名乗っただけなのである。

相続は実子だけとするが、老後のお世話は名を継いだ私たち夫婦が負うことをで子の間では了解していた。

一時は完全帰省して、この家に入ろうかとも考えたが、私も妻もその妹夫婦も東京近郊に暮らし、家もあり仕事だけでない地域での様々な生活と役割がある。
妻は定年後も帰らないと明言している。
この親に冷たいような言い方は、私を過剰に義父母孝行させないような配慮が伺え、心の奥のほうで妻には感謝している。

「おら、おめとこいく。」

父の出した結論でした。

「住み慣れた家を出て娘夫婦と同居する。」というのは、よく耳にするフレーズだが、まさに今、父が病室で独り決心したこと。