横浜防災基地。
 ロビーで一人の保安官が盗聴器を見つけ出す装置を片手に歩き回っていた。
 「西村。そんな盗聴器なんてここにあるわけないよ」
 和田は肩をすくめた。
 「ほっといたら?」
 三神は腕を組んだ。
 よくTVのバラエテイ番組で盗聴器を追う番組があったりするがそれのマネだろう。
 「つきあっていたら日が暮れるわよ」
 「二人の女性保安官があきれる
 「田中さん。三島さん」
 振り向く三神。
 田中保安官は巡視船「さろま」と合体。
 三島は巡視船「つるぎ」と合体しているが二人とも保安官でありながら魔物ハンターで魔術師である。
 「三神。あのバカと相棒を組むときは気をつけなさいよ。あんまり役に立たないから」
 ささやく三島。
 「なんで?」
 ささやく三神。
 「邪神ハンターといっても落ちこぼれよ。なんの取り得もない。祖父は凄腕の邪神ハンター「宗谷」父親は海保の長官。親の七光でなったようなものだから」
 三島が言う。
 和田はコンセントを分解して盗聴器を取り出す。
 階段から駆け下りてくる沢本。
 「緊急出動だ」
 西村以外の保安官たちはロビーを飛び出し海に飛び込んで巡視船に変身した。
 東京湾を出て犬吠埼沖に行くと大型貨物船が停船している。
 沢本は目を細める。
 生命感知センサーに船員たちは倒れているのが見えた。
 「倉庫に侵入者がいる。気をつけろ」
 沢本は注意する。
 三神と和田は鎖をくるくる回して投げて手すりにひっかける。二人はミュータントに戻って手すりまで上昇して甲板に上がる。
 「レビテト」
 三島は呪文を唱えるとミュータントに持った。同じく戻った田中と沢本と一緒に船橋に入っていく。
 三神と和田は腕時計の船内地図を見ながら船倉へ飛び込んだ。沢本の指摘どうりに先客が物色していた。
 「ラウ・こーハン。逮捕する」
 三神と和田は片腕を機関砲に変形させる。
 コンテナから顔を上げる侵入者。
 「覆面しても気配でわかる」
 和田は声を低めた。
 笑いながら覆面を取る工作員。
 身構える二人。
 この男は北朝鮮の工作員である。この男自身も万景峰一〇号と合体する。万景峰一〇号は北朝鮮と新潟を時々行き来する貨客船だが実際は工作船に指示を出す工作母船だった。
 「戦艦大和事件のときは見に行っただけっていくが実際は俺たちを始末するつもりだったんだろ」
 和田は機関砲を撃つ。
 ラウは上体をそらす。
 「言っただろうあの時。つまらないってね」
 クスクス笑うラウ。
 歯切りする三神と和田。
 「いいこと教えてやる。この船には目的の””物”はなかった」
 すまし顔で言うラウ。
 「何ィ?」
 「ゼウス・グループの動きには気をつけろ。あいつらはあらゆる手を使って古代遺跡や古代遺物を探している。それも飛びきりの張古代のオーパッツさ」
 ラウはもったいぶるように言う。
 「なんでおまえはそういうことを教える」
 三神は声を低める。
 こいついったい何者だろう。ただの北の工作員じゃない気がする。
 「俺はただのスパイ。ただ地獄耳なだけ」
 ラウは懐から何か出すと背後の壁に投げた。せつな閃光とともに爆発。コンテナの影に隠れる二人。彼はその穴から飛び出した。
 コンテナの陰から飛び出しその穴から身を乗り出す三神と和田。
 そこには誰もいなかった。

 上野にある東京国立博物館
 大和とリリスは博物館に入った。
 二人は博物館に遊びに来たのではない。博物館から指名手配中の犯人が来たという通報を受けて来たのである。
 館内には平日とあって来館者は少ない。
 その指名手配犯は本館にいた。
 「雪風。ひさしぶりだな」
 大和は中年の男に声をかける。
 「Tフォースよ。逮捕する」
 短剣を抜くリリス。
 この短剣もただのショートソードではない。霊力を持った短剣である。
 「蒼紅の剣か。それは魔力をこめらている。鉄を泥のように斬ったとされる」
 雪風は展示物のケースを割って呪文を唱えた。展示物ケースからカタカタという音をたてて飛び出す刀。
 「エペタムよ。気をつけて」
 リリスはその刀を短剣で弾いた。
 「そうみたいだな」
 大和の両腕がプロテクターのように盛り上がり硬質化する。
 エペタムとはアイヌの伝承に伝わる人食い刀である。刀の製造法を知っている者以外は扱いが不可能。無差別に襲うという刀だった。
 刃先から閃光を放ち稲妻の塊が飛び出す。
 大和はそれを片手でつかんだ。
 驚きの顔をするリリス。
 大和は力を入れる。稲妻の球は風船のように破裂して消える。
 刀がそのまま突っ込んでくる。
 リリスは飛び退き、大和はその刀をつかんだ。彼はそれを力任せに折った。
 雪風と大和が同時に動いた。あっちこっちに出現してパッパッと出現して大和は雪風の拳や蹴りをかわして殴った。
 「ぐはっ!!」
 地面にたたきつけられる雪風。たたきつけられ地面にヒビが入った。
 「このミュータントすごいわ」
 リリスは口をあんぐり開けた。
 大和事件の時に自衛隊や戦闘機、海保の巡視船を相手に戦って蹴散らしたパワーは桁違いだ。
 雪風は口からしたたる緑色の液体をぬぐうと懐から野球ボールを投げた。着弾したとたんに大量の煙が飛び出した。
 大和は濃い煙からぬうっと飛び出す拳と蹴りを大和はかわし、リリスはナイフをかわす。
 雪風は博物館を飛び出した。
 上空をホバーリングするヘリコプター
 博物館を飛び出す大和とリリス。
 雪風はハシゴにつかまって上昇していく。
 大和は助走をつけてジャンプ。ハシゴをつかんだ。
 「レビテト」
 リリスは呪文を唱えた。彼女は宙を浮く。
 ヘリのドアからのぞく羊顔のミュータント。
 誰だか知っている。ウエイトリー・ウイルパーだ。
リリスは呪文を唱えた。力ある言葉に応えて野球ボール位の火の玉がヘリコプターの手前で弾かれる。
 舌打ちするリリス。
 結界が張ってある。実際のミサイルや弾でないとこのヘリコプターは撃ち落せない。
 雪風と大和はもつれ合い殴り蹴る。
 大和は背中から鎖をハシゴに巻きつける。
 雪風は片腕を機関砲に変形させ連射。
 大和の体を弾が貫く。
 大和の片腕がバルカン砲に変形。そこから放たれる弾は青白い光線だった。
 雪風はすんでの所でかわして大和の背後に回りこみ機関砲を連射。
 大和はよろけ手と鎖を放した。
 雪風は笑いながらヘリコプターの機内へ入った。
 落ちていく大和。
 リリスは急降下して大和の腕をつかんだ。
 「う・・・痛てえ・・・」
 顔をしかめる大和。
 言葉を失うリリス。
 あんなに撃たれたら普通は死んでいる。さすが戦艦だからといえばそうだがすごいわ。
 リリスは彼と一緒に上野公園へ着地した。
 
 石川町駅から出てくる阿部。
 「阿部さん。こんにちは」
 ランドセル姿の芥川は手を振って駆け寄ってくる。
 「翔太君。家は帰らなくていいの?」
 阿部は聞いた。
 「家に帰ってもお父さんお母さんはいつも忙しいからいない」
 さみしそうに言う芥川。
 「そうよね」
 言いよどむ阿部。
 そうよね。いつもいないじゃさみしいよね。
 「横浜中華街行かない?」
 阿部が提案する。手にはちゃんとガイドブックを持っている。ここからだと中華街は近いのだ。
 二人はきらびやかな門をくぐった。
 二人のあとをつける二人の男。黒いサングラスをしている。
 「この豚まんおいしそう・・・」
 店頭に並ぶ豚まんをながめる阿部。せつなフッと映像がよぎった。
 見知らぬ男二人があとをつけている。この2人は誰かに頼まれて来ている。探偵とかではなくて殺し屋である。
 「芥川君。行きましょ」
 阿部は芥川の腕をつかんでその場を離れる。
 「豚まんは?」
 わけがわからない芥川。
 阿部の脳にパッパッとどこに隠れて見つからないか逃走ルートが入ってくる。
 これの力は子供の時から持っていた力だ。
 阿部は店内を抜けていくつかの路地を抜けて中華街を出て駅に入った。
 「あらどこいくの?」
 いきなり阿部と芥川の腕をつかむ三人の米国人。いずれもモデル並にスタイルがよく美人。しかも同じ顔の三つ子だ。
 誰だかわかった。
 豪華客船「飛鳥Ⅱ」クリスタルシンフォニーとセレニテイである。本名はキャロラインとイザベラとイレーヌである。三人とも魔術師であるがTフォースの隊員ではない。魔術師の殺し屋である。
 「なんですか?」
 阿部は腕を振り払い、芥川を引き寄せる。
 「ねえ。あのジャーナリスから金メダルがなかったかしら?」
 キャロラインこと「飛鳥Ⅱ」はささいた。
 「知りません」
 きっぱり言う阿部。
 「それじゃああのロマンスカーとパノラマカー知らない」
 イザベラはニヤニヤ笑う。
 「知らない」
 きっぱり言う芥川。
 何を仕様としているか知っている。この三人は誰かに雇われている殺し屋だ。
 「あの観光船は?」
 イレーヌが聞いた。
 二人は首を振った。
 「隠すとよくないわよ。あなたがあの巡視船や戦艦大和といることは知っている。特にあなたは戦艦大和と心を通わせることが可能なのは知っているのよ。テレビの中継で見ていたからね」
 キャロラインは笑みを浮かべた。
 「戦艦大和はどこにいる?」
 強い口調のイザベラ。
 「あの巡視船は?海保なんて私たちの敵じゃないもの」
 イレーヌはケラケラ笑い出す。
 「なんで戦艦大和にこだわるんですか?」
 「あの戦艦は大戦中に改造されて米軍のミュータントを蹴散らした。それだけでなく復活して自衛隊、海保、戦闘機のミュータントまで蹴散らした。うまく利用する価値はあるのよ。それにあの巡視船の祖父はね邪神と対等に戦った邪神ハンターだった。その力は当時凄腕の邪神ハンターであるクロウタイタスをはるかに凌駕するものだった。だから孫であるあの巡視船にもその力はある」
 キャロラインは説明する。
 「そんなにパワーがほしいんですか?」
 芥川が口をはさむ。
 「パワーなんてどうでもいいの。コアをえぐるだけ。コアは高値で売れるのよ」
 キャロラインはクスクス笑う。
 「隠すと海とキッスすることになる」
 イレーヌはニヤニヤ笑う。
 「その前におまえたちが地面にキッスすることになるだろう」
 「海上保安庁である。飛鳥Ⅱ、クリスタルシンフォニー、セレニテイ。一緒に来てもらおうか」
 背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
 出入口に大和と三神が立っていた。
 振り向く三姉妹。
 周囲にいた乗客たちはそそくさと逃げていった。
 サイレンが響いてパトカーと一緒に国連車両もやってくる。国連憲章マークをつけたTフォースの軍用車両だ。車内から和田やリリスが飛び出す。隊員たちが銃を構える。ただの銃ではなく魔弾銃である。
 「あいかわらずロクなことをやっていないわね」
 リリスは短剣を抜いた。
 「邪魔が入ったわね」
 舌打ちするとキャロラインは阿部と芥川を離した。
 「覚えてなさいよ」
 キャロラインはそう言うとイレーヌやイザベラと一緒にどこかへテレポートしていく。
 「けがはないか?」
 駆けつける三神。
 抱きつく阿部。
 「大和」
 芥川は大和に飛びついた。
 ため息つく和田。
 大和は笑みを浮かべて芥川を抱え上げた。
 「なんで僕たちが襲われていることがわかったの?」
 芥川がふと気がついた。
 自分はまだ防犯ブザーは鳴らしていない。
 「クリスタルのキーホルダーが教えたんだ」
 大和がフッと笑う。
 納得する芥川。
 たぶんファンタムだろう。
 「とりあえず基地へ戻ろう」
 三神は言った。

 百里基地に隣接している基地。
 司令室に入る三神たち。
 しかし杉本と長島の姿はない。まだ仕事が終わっていないのだ。
 「阿部さんと芥川君を襲ってきたのはクリスタル三姉妹。キャロライン、イザベラ、イレーヌの三人。この三人はキュプリアン家の娘だ。この家系は代々魔術師の名門で親戚や親は政治家や会社の社長でゼウスグループの役員とも親交があることがわかっている」
 志村は結果報告をするサラリーマンのような口調で説明する。
 「またゼウスグループかよ」
 さじを投げた医者のように言う和田。
 「関係があるんだ」
 いきなり割り込んでくる声。
 アメリカ沿岸警備隊の隊員が入ってくる。
 阿部や芥川にはその隊員が巡視船と合体するミュータントであるのはわかった。
 「彼は沿岸警備隊のウイロ少尉だ」
 桑名が紹介する。
 「相模湾で襲われていた貨物船や東京の博物館を襲った連中はカルト教団「星の智慧派」盗んだのはソロモンの指輪と魔術書ネクロノミコン。しかしソロモンの指輪はレプリカで本物ではなかった」
 ウイロ少尉は説明した。
 「なんで東京の博物館と普通の貨物船がそんなものを持っていたんですか?」
 疑問をぶつける三神。
 ネクロノミコンは世界に三つしかないといわれる書物で狂えるアラブ人アブドウル・アルハザードが晩年に書いたと言われる書物で旧支配者や魔術や魔物のことを書き記した。それを書いた本人はダマスカスの街角で見えない魔物に切り裂かれて死んだいる。
 そしてソロモンの指輪は聖書に登場する古代イスラエルの王ソロモンが所有する指輪である。強大な魔力で悪魔や魔物、アラジンのランプに出てくる魔人でさえも操り封印する力を持っていたとされる。
 自分でもそんなものが実在するとは思わなかった。あれは映画や小説だけの世界だと思っていた。
 「アジトはあるんだろ?」
 大和が口をはさむ。
 「アジトはインスマスと夜刀浦、赤羽牟と思われる。だいたいの予想は夜刀浦から出てきたと思われる」
 桑名はスクリーンに日本地図を出すと房総半島を指揮棒で指した。
 「そういえばあの三姉妹がいっていた金メダルの行方を聞いてきたわ」
 阿部がふと思い出す。
 「あのジャーナリスが持っていた金メダルが重要なのか?」
 三神は首をかしげた。
 あの変な文字がびっしり書かれている変なメダルだった。
 「それについてなんだけど資料が解読できたんだ」
 いきなりわりこんでくる景山。
 「昔話に「ももたろう」ってあるだろう。それには鬼が島が登場する。鬼が島にはいくつか異説があってねさだかではないんだがある説があってね。あれは太平洋に沈んでいるルルイエの一部ではないかと思っている」
 景山はせきを切ったように口を開く。
 「だってあれは昔話でしょ」
 リリスが口をはさむ。
 「これはあくまでもデスパシエール博士の仮説だ。私は彼の友人だった。パノラマカーとして走りながら彼と一緒に古文書や魔術書を研究した。世界の神話や伝説、遺跡はただの伝説じゃないってことだよ。ピラミッドは本当はクフ王の墓ではなくなんかの兵器でないかという仮説ああるんだ」
 「そんなバカな・・・」
 「あくまで彼の仮説だよ」
 肯定も否定もしない景山。
 「彼はどうなった?」
 和田が口をはさむ。
 「あのジャーナリスが死んだ日と同じ月に殺された。殺されて私のところにもあの遺物が来たんだ」
 景山は言う。
 黙ってしまう大和たち。
 「金メダルはおそらく鬼界島を浮上させる鍵なんだろう。鬼界島はルルイエの一部でね。昔話はまんざらだたの言い伝えではなかったんだ」
 景山ははっきり言う。
 「ではあの二人と合流したら夜刀浦に踏み込もう」
 桑名は言った「。

 その夜。
 長島と杉本がロビーに入ってきた。
 「仕事が終わったんだ」
 目を輝かせる芥川。
 「仕事が終わるまで待ってくれるとは思わなかった」
 杉本が言う。
 「でも選ばれたなんて今でも信じられないかな」
 長島は心配そうな顔で言う。
 ロビーに入ってくる阿部、三神、大和、和田の四人。
 「どこに行くか聞いている?」
 和田が地図を出す。
 「夜刀浦なってあるの?鉄道路線図にない」
 はっきり言う杉本。
 そんなもの聞いたことがない。
 「仲間のフェリーに聞いてもそんな島なんて聞かないよ」
 反論する長島。
 「それが存在するらしい。俺も初耳なんだ。海保も知らないらしい」
 三神は首を振る。
 海上保安庁の上層部が夜刀浦の存在を知っているという。それに勝浦が近いというのに山々に囲まれ唯一の出入口は港だけ。JRや私鉄、道路もない。港の近くに悪魔の入り江があり海流の関係で世界中の水死体が流れ着くという。悪魔の入り江はインスマスの悪魔の暗礁と同じようなおぞましい半漁人「深きものども」が住む場所があるらしい。
 黙ったままの大和。
 自分が雪風のきまぐれで蘇ってからいろんなことが動き始めた気がする。これで終わりではなくてこれからも起こってくるような気がする。そんな気がするのだ。
 「昔話のももたろうをしっているだろ。あれは単なる昔話でなくて鬼が島は存在していたという話だ」
 和田がもったいぶるように言う。
 「バカなあれはただの日本昔話だ」
 首を振る杉本と長島。
 「鬼界島は鬼が島だった。そして太古の昔に永遠の深い眠りについた邪神クトウルーが眠るというルルイエの一部だった」
 核心にせまる和田。
 「じゃあ、ももたろうは鬼ではなく邪神を退治しに行ったの?」
 信じられない顔の二人。
 「そういうことになるね。浦島太郎は竜宮城ではなく”亀裂”に入り込み別の世界へ行ったといえるんだ。まんざら言い伝えではないかもしれない」
 推測する三神。
 流れでみるとそうなるのだ。浦島太郎は偶然”亀裂”に入り込み元の世界に戻ってきた。そしたら数百年経っていたという話だろう。
 「これがTフォースの戦闘服だ」
 桑名が人数分の戦闘服を持ってくる。
 「それぞれの特性に合わせて作ってある」 
 シドが口をはさむ。
 阿部たちは近くの更衣室へ行って着替えてロビーに出てきた。
 阿部と芥川のは普通に国連軍兵士が切るような普通の服で三神たちのは戦闘スーツに近い。ピッタリフィットしてなおかつ動きやすくできている。
 「夜刀浦のアジトに雪風とウイルパーがいることがわかっている。そこへ向かえ。志村のチームや戦闘機チーム、海保のチームも援護に向かうことになっている」
 桑名は説明する。
 「これがユニヴァーサル号だ。常温核融合エンジンで宇宙船なんだ」
 シドは自慢げに格納庫にあるエイかサメを思わせる形状の宇宙船を指さした。
 「映画に出てくるUFOにそっくり」
 長島がボソッと言う。
 フォルムがまるっきり似ている。
 「NASAやJAXAの技術が使われているんだ。むろんそのノウハウはエイリアンからもたらされている」
 シドは咳払いしながら言う。
 「彼らの技術は身近なものにも使われている。世間の人々は知らないだけだ」
 桑名がしゃらっと言う。
 シーンとなる大和たち。
 彼らはユニヴァーサル号に乗り込む。
 コクピットは新幹線の運転台のようにコンパクトにまとまっている。あるのはモニターと操縦桿だけだ。
 イスに座ると彼らはシートベルトを締めた。
 三神は操縦桿を握ると船内にいる乗員をセンサーが認識したのか船体が浮き上がった。
 格納庫の扉が開き三神は軽く押した。するとフワッと浮かび格納庫を飛び出した。
 「すげえ・・・」
 三神は興奮しながら叫ぶ。
 あっという間に茨木市内上空を飛び去る。
 絶句する大和たち。
 三神は軽く操縦桿を引いた。すると少し減速した。
 この宇宙船すごい。少しの動きで追随する。ものすごい性能だ。
 ユニヴァーサル号は夜刀浦へ向かった。
 
 夜刀浦。
 千葉県の海底郡にある地方都市である。強大な祟り神である人頭蛇体の夜刀神を土地神として祭っていたことからこの名前がついたとされるが地図にはない街である。戦時中は飯綱製薬の巨大な軍事施設が建てられ、怪しげな実験が繰り広げられ海辺では家老一族の具邇家による巨大な缶詰工場が稼動。大学と図書館があった。
何度も大きな津波に襲われる海辺は海流の関係で世界中から水死体が流れ着く。しかし大戦末期米軍の空襲で徹底的に破壊されその跡にやってきた進駐軍とTフォースによって所蔵していた書物や道具を接収した。今ではさびれた町があるだけである。そしてもう一つの顔は深きものどものコロニーの入口がどこかにあるといわれている。
 ユニヴァーサル号は八斗浦地区と呼ばれる広場に着陸した。