幼稚園・保育園のバスや自家用車で送り迎えしているうちは、子どもの活動範囲は親の管理範囲にすっぽり収まっているので、親がしっかり管理していれば子どもの犯罪被害は概ね防げます。


しかし、小学校へ通うようになると、親の目の届かない範囲が徐々に増えていき、自転車という移動手段を獲得すると子どもの活動領域は飛躍的に拡大し、子どもは親の知らない世界へ歩みだします。


そんな中、親が先ず思いつくのは、管理の強化です。GPS機能を持つ端末を身に付けさせるハード対策であったり、「何時までに帰って来なさい」などのルールを定め、子どもを自分の管理下に留めようと努めます。


さらに、「〜してはいけない」という「禁止教育」で子どもの行動を制限しようとします。「知らない人と話してはいけない」「モノをもらってはいけない」「ついて行ってはいけない」「車に乗ってはいけない」などです。


これらの管理や制限は有効でないとは言いませんが、もっと大切なのは、「子どもが自分の身を守る力」を身に付けさせることです。この力は以下の3つの要素から成ります。


・危険感受性

・行動の選択肢

・人権意識


危険感受性は、何が危ないかを感じる能力です。子どもは、この能力が未熟で不幸な罠に気づかないことが多いのです。(この能力を高める方法については、改めて解説します。)


行動の選択肢は、危険な状況に陥った時に何ができるかを知って身に付けておくことです。前述の「禁止教育」は、何ができるかを伝えていません。防犯ブザーの使い方、簡単な護身術、知らない人との距離の取り方、叫び声のあげ方、大人たちへの相談の仕方など、知識だけでなく、実際に体を動かして訓練して身に付けさせることが大切です。


そして、最も大切なのは「人権意識」です。自分は大切な存在であると感じる心です。他者からの暴力、差別、抑圧、いじめなどに抗う力の源になるのが人権意識です。これを育むには、とにかく子どもを抱きしめてやることです。誰かに愛され、受け容れられていることを実感することで、子どもの心は大きく膨らみます。そして自分が大切な存在であることに気づくのです。