「安全第一」という標語は、製造業、建設業、運送業など、多くの現場で掲げられています。「やっぱり安全が一番大事だよね!」ということでしょうが、何と比較して一番なのでしょうか?そして、この標語の起源はどこにあるのでしょうか?



「安全第一」の起源は、1900年代初頭のアメリカです。USスチールという世界有数の製鉄会社の社長ゲーリー氏が、労働環境が悪く生産性の低い現場の状況を変えようと提唱したといわれています。


当時の生産現場はUSスチールに限らず、「とにかくたくさん作ってたくさん売って儲けよう!」「生産第一」、「100個作ったら1個くらい失敗があってもそれは仕方ない。それよりも早くたくさん作ることが大事だ!」「品質第二」、「働く人の安全なんか気にしていられるか!生産現場に犠牲はつきものだ!」「安全第三」という考え方が主流でした。


しかし、ゲーリー氏は「安全が保障されない職場で品質の良いものを作れるはずがない。」「安全に作業できないような場所で生産性が上がるはずがない。」と考え、それまでの価値観をひっくり返し、「safety first」を唱えました。するとたちまち労働者は活き活きと働き始め、安全意識が高まっただけでなく、品質も生産性も向上したというのです。労働者の人権意識の高まりが企業の業績にもプラスの効果をもたらしたのです。


そしてこのムーブメントは大正時代に海を越えて日本に導入され、「安全第一」の名の下に、1世紀以上に亘り産業のあるべき姿を示し続けています。